人気アニメ「けものフレンズ」と動物園のコラボが好調

2017年3月下旬まで放送されたアニメ「けものフレンズ」が人気である。
放送終了を嘆くファン=いわゆる難民が、動画投稿サイトなどでの二次創作により盛り上がるのはお決まりのパターンだが、主題歌ユニット「どうぶつビスケッツ×PPP」がテレビ朝日系音楽番組『ミュージックステーション』に出演した際にはネットユーザーが大いに盛り上がり、さらには複数の動物園とのコラボによるグッズ展開を図るなど勢いは今なお盛ん、ついには警察までコラボ対象としてしまったのだから恐れ入る。

 

 

矢野経済研究所では平日7:00〜放送されているニュース番組「モーニングCROSS」(TOKYO MX 9ch)にニュース分析データを提供しているが、そのリサーチDBを確認すると、4月10日に以下のニュースソースをキャッチしていたことがわかった。

 

けものフレンズ×東武動物公園 とうぶフレンズに会いに行くのだ!(リリースPDFへリンク)

 

この企画がヒットし、またたくまに他動物園へも展開が広がり、グッズ販売も好調ということなので、引き続き「けものフレンズ」ムーブメントの広がりをフォローしてみよう・・・というコンセプトでは、ありがちなトレンドウォッチになってしまうため、本記事ではコラボレーション先となる動物園に着目し、Xビジネスのポイントをリサーチしてみたい(XビジネスのXにはクロス=掛け合わせるという意味も込められている)。

近年の動物園ビジネスをマクロ的に見ると、娯楽の多様化や少子化を背景として苦戦している傾向である。
動物への注目=純然たる人気商売になるため、消費者の興味関心がダイレクトに集客に影響する一方、立地、設備、生体管理、飼育ノウハウなどは短期的な見直しが難しい。
そこで重要になってくるのが、タイアップなど企画による集客であるが、これらプロモーション活動の影響や成果は、個々の動物園が発信するニュースなどでの点景としてしか見えてこないため、業界の全体像がいまひとつつかみにくい。

Xビジネス調査チームでは、日本動物園水族館協会の正会員である全動物園(2017年5月時点で91施設)を対象として、その評判の盛り上がりを把握するために、インターネット上での検索、クチコミ上のキーワード流通量を調査のうえ、1年間の合計値によるランキング化を行った。

「動物園」注目度ランキング TOP20

順位 都道府県 名称 キーワード流通量
1 東京 上野動物園 114,407
2 和歌山 アドベンチャーワールド 93,457
3 北海道 旭山動物園 77,078
4 静岡 富士サファリパーク 39,698
5 神奈川 ズーラシア 37,251
6 兵庫 王子動物園 26,065
7 兵庫 姫路セントラルパーク 25,683
8 北海道 円山動物園 24,139
9 兵庫 神戸どうぶつ王国 22,933
10 栃木 那須どうぶつ王国 19,503
11 大阪 みさき公園 18,853
12 千葉 市川市動植物園 13,890
13 神奈川 野毛山動物園 12,947
14 千葉 千葉市動物公園 12,190
15 長崎 長崎バイオパーク 11,936
16 東京 羽村市動物公園 11,837
17 静岡 日本平動物園 10,486
18 愛媛 とべ動物園 9,806
19 秋田 大森山動物園 9,091
20 熊本 熊本市動植物園 8,197

調査内容:全国「動物園」名称のオンライン流通量(メディア露出数、検索数、クチコミ数)を集計
調査期間:2016年5月1日〜2017年4月30日(1年間)
流通量合計:724,807(回)
調査協力:株式会社Web経済研究所

 

1位は大方の予想通り、入園者数日本一を誇る上野動物園となった。トップ5まではCMなどでおなじみの顔ぶれといった印象である。
同一県で複数ランクインしているのは兵庫が3施設、北海道、東京、神奈川、千葉、静岡がそれぞれ2施設となった。

 

「動物園」注目度TOP5 キーワード流通量 月別推移グラフ

 

さらに月別データを偏差値化、上方に特異と判断できるスコア=75以上をキーワード流通量の急上昇とみなし、当該月にユーザーが発信したクチコミ内容を調査、注目の要因を抽出した。

「動物園」キーワード流通量 急上昇月 要因調査

ズーラシア(総合ランキング5位)/2016年5月

平均ワード流通量 3,104/月
標準偏差 1,365.7
該当月の偏差値 78.6
主な話題:タイトルの思い違いや言い間違えを面白がる、ネット系雑談

王子動物園(総合ランキング6位)/2017年4月

平均ワード流通量 3,104/月
標準偏差 1,365.7
該当月の偏差値 78.6
主な話題:お花見に連動したシーズン企画

 

円山動物園(総合ランキング8位)/2016年7月

平均ワード流通量 2,012/月
標準偏差 654.9
該当月の偏差値 78.7
主な話題:動物のオモシロ写真

 

市川市動植物園(総合ランキング12位)/2016年11月

平均ワード流通量 1,158/月
標準偏差 634.4
該当月の偏差値 76.2
主な話題:動物のオモシロ動画

 

長崎バイオパーク(総合ランキング15位)/2016年12月

平均ワード流通量 995/月
標準偏差 684.4
該当月の偏差値 75.9
主な話題:冬用設備にあたたまる動物のホッコリ動画

 

羽村市動物公園(総合ランキング16位)/2017年4月

平均ワード流通量 986/月
標準偏差 1,414.9
該当月の偏差値 75.1
主な話題:動物のオモシロ動画

 

大森山動物園(総合ランキング19位)/2016年5月

平均ワード流通量 758/月
標準偏差 579.5
該当月の偏差値 75.5
主な話題:動物のオモシロ写真

 

熊本市動植物園(総合ランキング20位)/2016年5月

平均ワード流通量 683/月
標準偏差 1,053.3
該当月の偏差値 81.8
主な話題:復興イベントの紹介

 

動物園であるため動物の画像が多くなるのは当然として、集客プロモーションの観点では偶発性に頼らずにブームの起点を作る必要があることを考えると、王子動物園や長崎バイオパークのようなシーズン特性と動物や設備・環境を組み合わせる企画は「狙い撃ち」ができそうである。

ちなみに、冒頭で触れた東武動物公園は、24位となり総合ランクインは果たせなかったものの、急上昇月の偏差値は全スコア中トップとなる83.2を叩き出している。
それもそのはず、過去11ヶ月のキーワード流通量が合計226(平均21/月)なのに対し、2017年4月は単月で7,341をマークしているのだ。

参考:東武動物公園(総合ランキング24位)/2017年4月

平均ワード流通量 631/月
標準偏差 2,023.3
該当月の偏差値 83.2

 

恐るべきはアニメコラボの、破壊的と比喩できるほどの吸引力だが、動物園ビジネスとして重要なのは集客の継続と底上げである。
列挙した急上昇月の事例の中には、一時的な注目で終わってしまっているケースもあるため、運営者側はコラボ終了を見越してユーザーを引き止める工夫を練り続けることに留意する必要がある。

Xビジネス調査チームにはインターネット上のビッグデータを立体的に可視化するシステムがあり、詳細なデータ分析を行うことにより、さらに精緻に成功事例をあぶり出し、要因特定から提言・提案を行うことも可能であるが、これらについては非常にコンテンツボリュームが多くなるため、カスタマイズ対応か、機会があれば開催を企画しているセミナーなどで発表することとしたい。

ご興味のある方はコメント(会員登録が必要)、またはお問い合わせからご意見などをお寄せいただければ幸いである。