コスプレ衣装市場の定義

アニメ・漫画・ゲーム・映画・ドラマ等のキャラクターの衣装や、特定の職業もしくは学生の制服を模した既製服(オーダーメイド服含む)を対象とする。それに付随するアクセサリー(小道具やウィッグ等)、仮装用の衣装も含める。但し、コスプレを主目的として作られた衣装のみを対象とし、通常着用する服をコスプレに転用しているものは市場規模に含めない。よって、制服や、婦人服・紳士服・子供服等として販売されている服、あるいは単にキャラクターの図柄等がプリントされた服は対象外としている。
また、自作衣装の材料費もここでは除外している。
 

コスプレ衣装市場の客層

2016年9月に矢野経済研究所が実施した消費者アンケートより、「コスプレオタク」を自認する消費者は日本国内に約50万人と推計。年代は19歳以下:12.3%、20代:33.3%、30代:14.0%、40代:12.3%、50代:10.5%、60代:17.5%と、20代が市場を牽引。男女比は57.9%:42.1%であった。また今年度より新たに調査項目として加えたオタク歴に関しては、1年未満が45.6%とピークであり年数が経つに連れて徐々に少なくなる。5~10年後ぐらいで「卒業」する者が多く、平均は3.5年とライトな層が多い。
 

コスプレ衣装市場の客単価

「コスプレオタク」を自認する層が「コスプレ」にかける金額は平均で年間18,526円。上述の通り、ライト層が大多数を占める市場だと推定される。業界関係者やユーザー等のヒアリングから、当市場ではネット通販が主要なチャネルとなっており、主な価格帯は2,000円程度である。ドンキホーテ等の実店舗においては様々な価格帯の商品が存在しているが、ライト層に受け入れられる価格帯は4,000円程度となっている模様である。
全体像としては、ライト層と、1万円~10万円程度の高価な衣装を購入、または1着10万円以上をかけてオーダーメイドをするヘビーユーザー層に大別されるものと推定される。
 

コスプレ衣装市場の構造

かつてコスプレイヤー自身の手作りが大半であったが、1995年に設立された㈱コスパ等、既成の衣装の提供やオーダーメイドによる衣装製作を行う事業者も1990年代半ば頃から現れ始めている。
コスプレ衣装業界は、大型のコスプレ関連イベントが多い8月、12月が繁忙期であったが、ここ数年においては、10月のハロウィンが一大イベントとなり市場も大きく動く。この他、春休み、ゴールデンウィークといった時期もコスプレイベントが多く開催されることから需要が拡大する傾向にある。パーティーや宴会に使用される衣装については、クリスマス、忘年会等の時期が書き入れ時となっている。
買い場については、1980年~1990年代は東急ハンズやロフト等の雑貨店でパーティーグッズ等を中心に消費者に買われた。2000年代に入ると、ドンキホーテがその事業規模を拡大させるとともに、パーティーグッズ、コスプレ衣装などの扱いを増やしてゆき、買い場として定着していった。2016年現在においても、ライト層向けの衣装については、ドンキホーテが有力店舗であるが、ここ数年は、ネット通販が主要なチャネルとなっている。アマゾンを始め、楽天市場、ヤフーショッピング、ポンパレなど現代の代表的な買い場となっている模様である。
価格帯は、①宴会やパーティーの衣装で使う層やコスプレのビギナーやライト層をターゲットとした数千円程度の量産品、②小ロットで生産され、縫製をより丁寧に行っている1万円~10万円弱ぐらいの衣装(多くは受注生産)、③10万円前後もしくは10万円を越えるオーダーメイド品に大別される。ハロウィン需要の高まりとともに、①が盛り上がりをみせている。
ライト層をターゲットとしたコスプレ衣装に関しては、ほとんどが中国産である。中国の工場にて生産された衣装を輸入し、販売を行う中小企業が多い。販売チャネルについても、実店舗よりネット通販が主戦場となっていることから、中国から輸入→ネット通販で販売を行うといった構図となっている。そうしたことから一部ネット通販では“ノーブランド品”として出回っている。
品質に拘った受注生産、オーダーメイド衣装については、日本国内で生産されるケースが多い。アニメ・漫画・ゲーム等架空のキャラクターが着用している衣服を模した衣装は、コスプレ衣装市場全体の半分近くを占めるとみられるが、そのうち版権を取得している商品は数%程度と推測される。版権を取得している事業者のみに注目すると、㈱コスパ、㈱バンダイ、㈱アニメイトが大きなシェアを占めるとみられる。
架空のキャラクターが着用している服を模した衣装については、自作して個人で楽しむ場合を除き、版権所有者の許諾が必要だが、コスプレ衣装メーカーの大半は個人事業者や同人サークルに近いこともあり、既製品(オーダーメイド品含む)として流通している商品の大半は無版権となっている模様である。また、インターネットオークション等を通じて衣装の販売を行い、「『個人』が『趣味』で作った衣装をオークションに出している」という体裁を取っている無版権事業者が多いこともあり、二次創作をテーマとした同人誌と同様、個人の趣味と商売の境界を明確にすることは極めて困難なことから、現時点では規制がほぼ不可能となっている。
購入者側も「版権取得の有無」よりも「作りの精巧さ」や「価格」を基準に商品(オーダーメイド品含む)を購入することが多く、「版権」という意識が希薄なことが多い。販売者側も個人事業者レベルだと「法律に反している」ことに無自覚なケースが少なくないとみられる。
購入者や製作・販売者の意識が希薄であり、版権保有者がクレームを申し立てるケースも極めて少ない。無版権事業者全てを探し出すのは極めて困難なことや、衣装を一見しただけでは手作りか既製品か判別しにくいこと、同人誌と同様ファン活動の一環として黙認されていること等がその理由と考えられる。
現時点では「版権」に関する問題がほとんど表面化していないが、今後更に市場が拡大すると「版権の有無」が問題化され、ユーザー・製作者双方が萎縮して市場が縮小してゆく可能性や、「コスプレ」という趣味そのものを楽しめなくなる恐れがある。
そのためコスプレ市場も、今後著しく拡大すれば、「当日版権」に類するシステムの導入等、何らかの対策を講じる必要性が生じる可能性がある。「当日版権」とは、ガレージキットの即売会において、あるキャラクターを模した立体物の製作・販売を希望するアマチュアが、該当作品の著作権保有者から即売会期間中及びその会場内のみでの展示・販売の許諾を受けられるというものである(但し、既製品の複製は対象外となっている)。
 

コスプレ衣装市場のトレンド、トピックス

●ドウシシャが「KORENARA」ブランドで参入

生活雑貨用品や衣料品などの卸売りを手掛ける東証1部上場のドウシシャが、「KORENARA」ブランドでコスプレ衣装市場に参入を果たした。当市場については、大手企業が参入しにくいニッチマーケットと位置付けている。最先端の技術を要する市場ではなく、成熟されている市場であるものの、価格やデザイン、機能面において改善の余地がある市場だと捉え、ニッチ市場であるため売上高100億円に到達すれば市場シェアトップを獲得することが出来ると考えている。こうしたニッチ市場を多く保有することでリスク分散したポートフォリオ経営を行う“100億円30事業部構想”を掲げている。

●2015年は“ゾンビ”が流行

衣装はナースや警察官等に扮した衣装を着用しながら、顔にはゾンビの血のりを施すレイヤーが2015年は目立った。昨年はゾンビメイクが流行したが、2016年も引き続き流行するのか、注目される。
また、ファッション業界においても“ペアルック”が流行しているが、コスプレ衣装市場においても同様の傾向が見られた。若い女性のペアや集団でお揃いの衣装を身にまとう姿が多く見られた。

●年々参加国が増えている「世界コスプレサミット」

2003年より、愛知でコスプレの世界大会「世界コスプレサミット」(テレビ愛知㈱主催)が毎年夏に開催されている。2016年7~8月に行われた「世界コスプレサミット2016」は、今回も参加国が増加し、30ヶ国と過去最高を更新。同大会は、MANGAの聖地である日本で開催されるコスプレ世界一決定戦である。衣装の完成度だけではなく、演技・演出等も含めてトータルで採点される。尚、2016年の優勝国はインドネシア代表であった。

●2016年夏コミケの更衣室登録数が前年対比で下回る

これまで順調に数を増やしてきたコミケの更衣室登録数であるが、2016年夏開催のコミケ90では21,558人と前年夏開催のコミケ88と比較すると、1,105人減少(前年同月比4.9%減)した。男性は238人減(同3.6%減)、女性は867人減(同6.0%減)であった。一方、冬に関しては2015年までは順調に拡大している(2016年9月現在)。2016年冬に関しては、夏が減少となったことからその動向が注目される。

●企業のマーケティング手段としてコスプレイヤーを活用する動きも

2016年7月、㈱エターナルリンクはコスプレのポータルサイト「COS-CREW」を開設した。同社はインターネット広告事業やSEO対策事業などがメインの企業であるが、コスプレイヤーのマーケティングを行う合同会社サブカルと提携して本事業を展開する。“日本のサブカルチャーを世界に発信する”ことで、同社の「日本から世界へ」のコンセプトを体現する、としており、まだ日本国内が主流となっているコスプレを世界規模で広めることを目的としている。まさにクールジャパンコンテンツとしてコスプレを世界に広めようとしている。さらに、同年9月にはコスプレイヤーと企業をマッチングする「コスワーク」事業の拡大を行った。コスプレイヤーの中には数万人規模でファンが付いている者も存在していることから、その発信力を活用したいと願う企業とをマッチングするものである。企業サイドとして従来は、コスプレイヤーにコンタクトを希望しても、コスプレイヤーが事務所等の組織には属していないことから、コンタクトすること自体が不可能であった。そうした課題を解決してゆくため「コスワーク」を活用する。コスプレイヤーとしての仕事の増加と、企業側の広告宣伝効果上昇を狙う。実績としては、2016年9月に幕張で行われた「東京ゲームショウ2016」においては、8ブースから仕事の依頼が発生しコスプレイヤーを派遣している。
 

コスプレ衣装市場規模

コア層は自作する傾向が(自作衣装の制作費は本市場の対象外としている)強く、ライト層は百均などの店舗やインターネット通販上にて販売されている安価(数百円程度)な衣装を買い求める傾向が強いものと業界関係者や消費者調査等の結果から推察される。
ここ数年で日本国内においてもハロウィンのイベント化が定着したこと等によって、コスプレ人口が増加するものの、その大半はライト層と推察されることから全体の市場規模は拡大しているものの、その拡大幅は緩やかなものと矢野経済研究所では分析している。
以上より、矢野経済研究所の推計による2015年度の市場規模は、前年度比1.2%増の435億円と算出された。2016年度に関しては特に、ハロウィン用のコスプレ衣装のネット通販の拡大や百円ショップの台頭によって低単価商品が買われる傾向にあることから、市場規模は同1.1%減の430億円と予測する。
 
 
 
本稿の詳細データについては、下記調査レポートよりご入手いただけます。