恋愛ゲーム市場の定義

ゲーム内に登場するキャラクターとの仮想恋愛を主目的としたゲーム。但し、18歳未満のプレイ・購入が禁止され、性的好奇心を満足させることを主目的としたゲームは含めない。ここでは、主にモバイル向けコンテンツについて取り扱う。尚、同人ソフトは対象外としている。また、ゲームに用いるスマートデバイス、接続費用、パケット代等は市場規模に含めない。
 
恋愛ゲーム市場の客層

2016年9月に矢野経済研究所が実施した消費者アンケートより、「恋愛ゲームオタク(アダルトゲーム除く)」を自認する消費者は日本国内に約82万人と推計。年代は19歳以下:17.0%、20代:31.9%、30代:21.3%、40代:16.0%、50代:6.4%、60代:7.4%と、20代が市場を牽引。男女比は39.4%:60.6%。また、今年度より新たに調査項目として加えたオタク歴については10年未満で72.3%を占める。平均は6.5年。

恋愛ゲーム市場の客単価

金額は平均で年間11,681円。0円が41.5%を占め、次いで1~5万円未満が23.4%となっている。ライト層が半数程度を占め、客単価は縮小傾向と推察される。

恋愛ゲーム市場の構造

従来、当市場は「一部のゲームマニア」の男性ユーザーを中心とした市場となっていたが、近年、スマートフォンをプラットフォームとした女性向けコンテンツが多数リリースされていることに伴い、一般の女性ユーザーが増加傾向にある。現在でも、パソコンやゲーム機をプラットフォームとしたソフトは、依然としてコアファンや男性ユーザーが多いが、女性にターゲットを絞った「乙女ゲーム」も、男性向けゲームと比較すると市場は小さいながらも固定ファンを確実に有しているものとみられる。パソコン向けの恋愛ゲームソフトについては性的描写を含むものが大半で、性的描写を含まないもの(当市場に該当するコンテンツ)は極めて少ないとみられる。
スマートフォンをプラットフォームとしたコンテンツは、女性向けコンテンツ及び女性ユーザーが圧倒的に多い。パソコン及びゲーム機向けゲームに比べて開発費がかからないことから参入障壁が低く、参入事業者及びコンテンツは、大幅に増加したとみられたが、2011年以降淘汰が進みつつある。ここ数年は、恋愛要素を含めていないアイドル育成ゲームが人気を博しており、当市場と競合している状況である。
「乙女ゲーム」については、出演する声優が購入を決める際の重要な要素となっているとから、人気声優の起用によって差別化を図る事業者も散見される。
 
恋愛ゲーム市場のトレンド、トピックス

テレビゲームやパソコンが市場に出回り始めた1980年代から恋愛をテーマとしたゲームは存在していたが、それらの大半は成人向けコンテンツであったとみられる。「恋愛シミュレーション」をテーマとした全年齢向け(性描写のない)ゲームは、1994年にコナミ(現:コナミデジタルエンタテインメント)から発売された「ときめきメモリアル」(「PCエンジンSUPER CD-ROM²」向けソフト)が最初であると推察される。また、初の女性向け恋愛ゲームと見られる「アンジェリーク」がコーエーから発売されたのもこの年であり、1994年が「恋愛ゲーム」元年であるという見方もできる。
1990年代後半~2000年代頃、アダルトゲームから性描写を除き、「恋愛」の要素を活かす形で家庭用ゲーム機にコンテンツを移植するケースが増加した。具体例として、「Pia♥キャロットへようこそ!!」シリーズ、「To Heart」シリーズ等が挙げられる。
恋愛ゲームブームの火付け役となった「ときめきメモリアル」や「アンジェリーク」も、続編やスピンオフ作品は発売されているものの、その後これらに匹敵する大ヒット作が生まれなかったことと、アダルトゲーム市場の縮小に伴い、本市場も2000年頃をピークに縮小に転じたと推察される。
状況が変化したのは、2000年代頃から「乙女ゲーム」と呼ばれる、女性を主人公とした恋愛ゲームのリリースが増え、一市場を形成し始めたあたりからである。さらに、コナミデジタルエンタテインメントの「ラブプラス」(2009年9月発売)人気や、女性をターゲットとした携帯電話向け恋愛ゲームのユーザー数及びコンテンツ数の増加により市場は再び拡大に転じている。従来、当市場のコンテンツは限られたコアユーザーの利用が中心であったが、携帯電話・スマートフォン向けの女性向け恋愛ゲームのユーザーはライトユーザーが主なターゲットとなっていることから、ライト層の取り込みが進み市場は拡大した。モバイルコンテンツは基本利用料無料、もしくは月額300円程度、落切だと1コンテンツ500円程度であることが多いため、ユーザー単価はソフトウェアの購入者とは比較にならないほど小さいものの、一般層など幅広い層の取り込みに成功し、市場拡大に大きく貢献している。とくに、ボルテージは女性のライトユーザーを多く取り込み急成長している。2014年6月期に売上高100億円の大台に乗せて以降も着実に規模を拡大させている。
 
恋愛ゲーム市場規模

2015年度の市場規模(国内出荷額ベース)は、前年度比6.6%増の146億円と推計された。これまでボルテージの女性向けコンテンツが市場を牽引してきたが、2015年に関しては、サイバードやジークエストから、新コンテンツが投入され市場は拡大したものとみられる。ジークエストから2015年3月にリリースされた「夢王国と眠れる100人の王子様」は、恋愛要素に加えパズルゲームの要素も盛り込まれたゲームとなっている。サイバードからリリースされた「イケメン戦国◆時をかける恋」は、「イケメン」シリーズの最新作である。同シリーズ初となるキャラボイス付の作品となっている。
2016年度に関しても、前年度比2.7%増の150億円と成長が予測する。
 

本稿の詳細データについては、下記調査レポートよりご入手いただけます。

クールジャパンマーケット/オタク市場の徹底研究