本頁は、前回の「AIが止まらない!人工知能は恋愛ゲームの夢を見るか?(1)」の続きである。

ゲーム上のAIとの恋愛感情

AIの精度が恋愛感情を持つまで至らずとも、形を変えた「AIによる恋愛系ゲーム」が2000年代に登場する。それが2005年に任天堂から発売された、ニンテンドーDSソフトの「ニンテンドッグス」である。これはバーチャルな子犬との生活を楽しむゲームである。散歩したり体を洗ったりする他に、子犬とのスキンシップがあり、このスキンシップにおいて、撫でる、褒めるなどすると子犬が行動を記憶していく。蓄積された行動はドッグランやコンテストなどで披露されるのである。子犬の行動は基本的にAIであり、プレイヤーの声による呼びかけや、タッチ操作によるアクションでAIの成長を促すことができる。AIを人間ではなく子犬に置き換えたことにより、AIの至らなさが表に出ず、かえってそれが子犬の可愛らしさになった点が、逆にAI技術を使いこなしている感がある。

その後「AIによる恋愛系ゲーム」は鳴りを潜めていたが、2009年9月3日にコナミデジタルエンタテインメントから恋愛シミュレーションゲームを謳った「ラブプラス(ニンテンドーDS)」が発売されることとなった。登場ヒロインは同い歳の「文武両道なお嬢様」、年下の「ツンデレ」、年上の「おっとり」の3タイプが用意されている。ゲームの進め方次第で髪型・服装・性格が変化するなど、AIによるシミュレーション要素が入り、同じヒロインでも他のプレイヤーとは違う自分だけの彼女に成長していく。プレイヤー次第でさまざまなシチュエーションが楽しめることもあり、恋愛ゲームとしては異例の20万本を超えるヒットとなった。

その後、mobageやGREEといった携帯電話向け、Yahoo! MobageといったPC向けソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下SNS)にも数えきれないほどの恋愛ゲームが登場するようになった。その多くはストーリーと同時にプレイ時間の「お手軽さ」が重視されるようになり、かつ「基本利用料は無料、一部コンテンツ有料」という課金型の運用が行われている。

 

アプリのAIとの恋愛感情

ゲーム業界ではないのだが、2015年、レンタルビデオチェーンのゲオグループが今までにない新しいサービスを開始した。それが恋活アプリの「kanokare(カノカレ)」である。ひとことで言ってしまえば出会い系サイトの携帯アプリ版なのであるが、その特徴は、業界初のAIマッチング機能を搭載していることにある。その内容は、恋愛に関する質問に答えていき、自分の好みを機械に覚えさせ、それと合いそうな相手を提案してくれるというものである。なのであるが、ネット上でのこのアプリのAIマッチング機能の口コミは総じて芳しくない。

「kanokare(カノカレ)」は、「恋愛感情におけるAIと人間のマッチング」という意味で画期的なものになるはずであった。じつはここに、単なるいちアプリの性能云々を超えた、後述する命題が存在しているのである。

スマホ向けのAI搭載アプリでは、2015年に日本マイクロソフトから上市された、何気ない雑談を楽しむことに特化した女子高生AIアプリ「りんな」がある。2016年にSELF株式会社からリリースされた「SELF」は、ユーザーと会話を重ねることで、AIを搭載した美少女ロボの「深瀬あい」たちが、ユーザーの現実の行動パターンを記憶して会話を提供してくれるアプリだ。彼女たちは仕事の日と休日の認識、ユーザーがいつ誰と会って何をしたか、過去にどんな悩みを持ち、その悩みが解決したかどうかなど、すべて理解した上で会話することができる。 

ほかにも、話せば話すほど賢く成長していく「AI少女 ひとみ(Silett、2016年)」、ユーザーの名前を呼んで毎朝起こしてくれる「完全対話型生活蜜月アプリ めざましマネージャー(Sony Music Communications、2015年)」など、疑似恋愛感情を持ちたくなるようなアプリがずらりと上市されている。

 

AIとの恋愛感情の先にあるもの

AIは恋愛ゲームを飛び出して、ユーザーとの一体感を紡ぎだそうとしている。この先には何があるだろうか。

AIの究極は、つまるところ「人間になる」ということである。技術の発達はいずれ「人工知能による疑似再現」から、「プログラムという器にひとの意識を埋め込む」もしくは併用するところまでいくであろう(「キャプテンハーロック」でアルカディア号の中枢大コンピューターとなったトチローのように)。それがネットワークサーバー上でコピーされるかマルチタスクを処理できるようになれば、恋愛ゲーム上でもその「人物」を相手に人間が恋愛感情を持つことができる。それは果たして「疑似」恋愛であるのだろうか。

 

恋愛ゲームという分野においては「誰かと話したい」「寂しい」と思ったとき、ゲームやアプリを起動するだけですぐにコミュニケーションをとって、その感情を満たすことができる。生身の人間相手の時には起こるようなストレスを感じることもなく、満足さえすれば好きなタイミングで会話を終わらせることもできる。AIにはユーザーの性別、年齢、趣味嗜好などのデータが会話から蓄積されていく。これらは企業が欲しい消費者情報そのものである。このデータをもとにプッシュ型の広告を配信したり、ゲームのストーリーに組み込んだりすることは、もう既に実用化されているのだ。

これらの技術や事象は、「疑似恋愛市場」ともいえる秋葉原や歌舞伎町、果ては五反田やすすきの、飛田新地までに影響を与えていくであろう。AIとの恋愛は、これまで恋愛したくてもできなかった人たち(これは自責他責を含めて)に対して、大きなニーズを掘り起こす可能性がある。

技術の発達は、例えば戦争における戦死者の増大や、医療における脳死を死と判定するかなど、常に人間の倫理との葛藤を生むものであった。AIの発達によっていつか、ゲームやアプリを超えて、恋愛とはなにかを倫理的に論じるときが来る。その先さらに、人間とは何かという究極の命題にもぶつかるときが来るであろう。

 

今回、まじめに書いたなぁ。。