コーチング=よりよいコミュニケーションを成立させるための技法

「すべての悩みは人間関係の悩みである」とアドラー心理学は言う(←最近まじめな筆者なのである)。よりよく生きる手法・技術があるのなら、それをぜひ会得したいと思うのは万人の思いである。家庭や恋愛関係、学校、会社、社会生活に至るまで、悩みは尽きることがない。その解決策のひとつがコーチングである。

コーチングとは、ひろみにエースをねらわせることではなく(←前言撤回w)、人材育成・開発の技法のひとつである。わかりやすく言い換えると、よりよいコミュニケーションを成立させるための技法である。もう少し踏み込んでいうと、「相手の話をよく聞き、感じたことを伝えて承認し、質問をすることで自発的な行動を促す」ものなのだ。また、コーチングの対象に対して、目的志向の質問をビジネスライクに行うことにその特徴がある。

なのであるが、実はコーチングは「これとこれをやればよい」という特に決まった定義が存在していない。一般的には以下のようなことが言われている。

  • 個人の自己実現をサポートするためのコミュニケーションの創出
  • コミュニケーションを通じての前進をサポート
  • コミュニケーションによって行動を引き出して目標を達成する
  • 自らの気づきによって自発的行動を促進し、パフォーマンスの向上を図る
  • 本来持っている能力を最大限に発揮するためのサポート

 

また、コーチングの種類には以下のようなものがある。

  • パーソナルコーチング(個人の自己実現等を目的としたもの)
  • スキルコーチング(特定の能力を身につけるもの)
  • マネジメント型コーチング(部下や目標を管理するためのもの)
  • コーポレートコーチング(社員の能力や業績の向上を目的とするもの)
  • 誘導型コーチング(正解があり、そこに向かって考える方向に誘導するもの)
  • 認知型コーチング(正解がなく、答え自体を創り出させるもの)

 

上記はいくつかの事例であり、これら以外にも多数の種類・手法がある。

 

コーチング業界は有望市場

コーチングを研修サービスとして提供している事業者は、大手から個人まで多数存在する。類似しているメンタルヘルスのカウンセリングや、自己啓発系セミナーなどとの明確な分類が難しい事業者も多い。隣接業種と比較してのカテゴリー分けや特色、該当する主要企業を下記にまとめてみた。

 

矢野経済研究所刊「企業向け研修サービス市場の実態と展望 2017」より抜粋

 

コーチング・モチベーション系事業者を含めて、ほとんどの事業者の業状・業績は右肩上がりである。それだけ社員教育や研修に悩める企業や従業員が多いことの現れなのであるが…。
具体的な金額的規模や各社の直近概要は、矢野経済研究所刊「企業向け研修サービス市場の実態と展望 2017」をぜひ参照されたい。

 

コーチングによるコミュニケーションの実際

コーチングはビジネスライクな「技法」である。よって具体的なメソッドが存在している。一例を挙げると、今更ながらの感があるが、それだけにオーソドックスなコミュニケーション手法の「報・連・相」である。上司・部下の方向性を問わず、業務において

「うまくいったことは何か?」
「うまくいかなかったことは何か?」
「うまくいかなかった原因は何か?」
「次の一手は何か?」

の思考・作業の手順を踏んでいくのである。

このとき大事なのは、リーダーたる上司自らがどのような心構えで仕事に取り組んできて、どんな課題を抱えているかを具体的に示すことである。そして部下たるメンバーが出してきた内容に対して、必ずフィードバックを返すということである。

もう少し技法的なものの例としては、NLP(Neuro-Linguistic Programming: 神経言語プログラミング)がある。これはもともと心理療法のメソッドであり、具体的には「不快な記憶を思い出しづらくするためのクイックレシピ」「人々の確信の度合いを測るためのレシピ」などがある。かみ砕いていうとこれらは、人が不快感を覚える「入力」に対する反応を、望ましい状態へとコントロールするための、人為的な処理を施すためのレシピである。
当初は短期的なセッションでも効果をもたらすブリーフセラピーのひとつとして広まっていったものであり、現在では心理療法のみならず、医療、教育、政治、スポーツ、ビジネスなど様々な分野で活用されている。

コーチングが独自の座学教習をほとんど持たず、ロール・プレイングの課題も固定化しがちになるなか、NLPの教習や演習を取り入れたり、名称自体をNLPコーチングとしたりするケースもみられる。また、近年ではNLPの技法を中心にした自己啓発セミナーも開催されている。

 

コーチングの課題点

このように人材育成・開発において活用されているコーチングの技法であるが、「商品」である以上、また人間心理を取り扱う以上、業界に課題も存在している。

「詐欺的商法が横行し、行政の注意喚起が行われた」
「自己啓発セミナーを個人コーチングに結び付ける手法の事業者が脱税で刑事告訴されている」

などの事例が実際に起こっている。また、コーチングの宿命として「テキスト通りに質問を投げかけるだけではコーチングに成り得ず、経験と、心理学に関する素養に基づいて分析と判断を行ったうえで実施しなければ効果がない」という「質」の問題は常について回る。

これらの事象はコーチング業界全体の共通の悩みのようで、この状況をコーチングするかのように(笑)、日本コーチ協会(https://www.coach.or.jp)という業界団体が存在している。その設立趣旨は「健全な育成とコーチングの普及を目的」としており、「ビジネス界だけではなく、医療や教育、そしてスポーツと多岐にわたる領域におけるコーチングの実践活動を行う者やコーチングに関心を持つ者が組織する」団体であるとのことだ。そのミッションとして「年次大会や会報等により、会員間の情報交換を図り、またコーチ資格認定制度を確立し、わが国のコーチ及びコーチングの普及と一層の発展に寄与しようとする」ことを掲げている。

 

コーチングはコミュニケーション的Xビジネス!

コーチングは、「部下やメンバーの主体性を引き出す」技法であることはもちろんだが、上司やリーダーの立場用にもちゃんと「部下に対する指導スキルを向上させたい方向き」「部下の主体性を育成したい方向き」等のコーチング商品が存在している。部下だけでなく上司な方々にも「どこからどう指導・育成していくべきなのか悩む」「相手の気持ちを引き出すことや、相手が納得するように伝えることができない」「自分のやり方を押しつけてしまう」というようなコミュニケーション上の悩みがあるのだ。立場にかかわらず、みんな大変なのである。

悩むばかりの「Think」から解決の「Do」へ。既存のカテゴリーにとらわれることなく、自由な発想で個人と個人、個人と社会の関係性を紡ぎだすコーチング業界。一芸に秀でたエクセレント・カンパニー、タレント(人材)を象徴するこの業界・市場は、まさにXビジネス!である。

Xビジネス開発室は、この求道的な市場にこれからも注目していく。