ラブホテル(ファッションホテル)市場の定義

本項で述べる「ラブホテル(ファッションホテル)」とは、「風営法」(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)によって定義される「店舗型性風俗特殊営業」の一業態としての施設、とする。旅館業法で定義される一般の「ホテル」は含めない。
 
風営法における「ラブホテル(ファッションホテル)」の定義
この法律において「店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。(第二条六)
*四.専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む。以下この条において同じ。)の用に供する政令で定める施設(政令で定める構造又は設備を有する個室を設けるものに限る。)を設け、当該施設を当該宿泊に利用させる営業
尚、「ラブホテル」「ファッションホテル」とは通称であり、同法に「ラブホテル」等の名称は登場しない。ロードサイド沿いにある「モーテル」、風俗店がセックスサービスを行う施設として提携していることが多い「レンタルルーム」も、法律上は同じ扱いであるため、当該市場に含めるものとする。
 
尚、「店舗型性風俗特殊営業」を定義する条文の中の「4号」で定義されている施設であることから、「ラブホテル」は「4号営業」とも称される。(ちなみに「1号」はソープランド、「2号」はファッションヘルス、「3号」は個室ビデオ・ストリップ劇場、「5号」は「アダルトショップ」、「6号」は「出会い系喫茶」となっている。)
 
ちなみに、世に言う「旅館」「ホテル」は、以下の旅館業法で定義されている施設を言う。
 
旅館業法:
この法律で「旅館業」とは、ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業及び下宿営業をいう。
2  この法律で「ホテル営業」とは、洋式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
3  この法律で「旅館営業」とは、和式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
つまり、「ラブホテル(ファッションホテル)」は、世に言う「ホテル」の一業態なのではなく、そもそも、規制する法律が違う、全くの別物なのである。(但し、一部の「ラブホテル」は、旅館業法上の営業許可を取って運営している「旅館」や「ホテル」である場合も一定程度ある。「休憩」と言わず「デイユース」の料金を持ち、結果としてカップルのセックス目的で頻繁に使用される「旅館」「ホテル」も多々ある、ということである。)
 
「旅館」「ホテル」は設置許可を都道府県知事から、「ラブホテル」は設置許可を都道府県公安委員会(=警察)から取得することになっている。
公的な統計にある「ホテル」の件数の中には、「ラブホテル」は含まれていないことに留意が必要である。
 

ラブホテル(ファッションホテル)市場の「成人」に関与する法律/市場背景

「ラブホテル」の未成年の使用を規制する法律に関しては、「風営法」がある。
 
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(通称:風営法)
・風俗営業者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、十八歳未満の者がその営業所に立ち入つてはならない旨(中略)を営業所の入り口に表示しなければならない。(第十八条)
・風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。(第二十二条)
五.十八歳未満の者を営業所に客として立ち入らせること
風営法上、「ラブホテル」には、18歳未満の青少年は立ち入ることが出来ない。また、施設側も、その立ち入りを防ぐ義務がある、と定められている。
上記の他、学校等の周辺200m区域内の営業禁止、看板等の広告物の制限、警察官の立ち入り調査等が定められている。
 
長野県を除く全ての都道府県が定めている青少年保護育成条例においても、同様の趣旨で、風俗営業施設への立ち入り禁止をしていると解釈される条文が存在するが、基本的に、風営法が厳然と18歳未満の入場、利用を禁止しており、条例を持ち出すまでもなく、風営法で青少年の立ち入りには強い規制が掛かっていると解釈できる。
 

ラブホテル(ファッションホテル)市場の業界構造

2014年末時点において、「ラブホテル」(*風営法で定義された「店舗型性風俗特殊営業」における「4号営業」施設)の営業件数(営業届出数ベース)は5,940件となっており、前年比で87件減少している。
減少の背景として、若年層の人口が減っている地方都市のラブホテルや、車に乗らない若者が増えたことでロードサイドのラブホテルが減少していることもあるが、都心部では一部、外国人旅行客等の需要を見込んで、「旅館」「ホテル」(旅館業法の施設)に改装して移行していった施設も一定程度あった模様である。よって、ラブホテルとしては減っていても、施設自体が純減している訳では無い。
過去5年間で見れば、2011年の6,259件をピークにラブホテルの減少が続いている。
2011年にラブホテルの件数が急増しているように見えるが、これは2011年1月に風営法の改正があり、これまで「旅館」「ホテル」として営業をしていた多くの施設が、風営法のラブホテルの範疇に入れられたためである。(具体的には、従来は、食堂と床面積が一定基準を超え、一定基準のロビーがあれば、それだけで「旅館」「ホテル」等として登録できたが、法改正後は、外に「休憩料金」の表示がある施設、フロントがあっても客と従業員が顔を合わさずに済むシステム等がある施設については、全てラブホテルと再定義された。)
 

ラブホテルの営業件数推移

データ:警察庁生活安全局保安課「風俗関係事犯の取締状況等について」

 
ラブホテルの種類には、厳密な定義がある訳では無いが、大きく分けると以下のものとなるだろう。(定義は法令等を参考に矢野経済研究所が独自に作成した。)
 
 
ラブホテルは「店舗型性風俗特殊営業」の「4号営業」で一括りにされるため、分類毎の正確な件数は算出できないが、昨今では、郊外の「モーテル」の集客が頭打ちになるとともに、ゲーム、カラオケやコスプレ、SM等の装備を充実させた、いわゆる「カップル同士のセックスをエンジョイ」場所としての「レジャーホテル」が施設件数としては、やや頭打ち状況になっている模様である。但し、都心部では後述するように、外国人利用客も増え、集客数自体は維持・拡大している模様である。
その一方で、女子会等も可能としている、やや高級感のある(シティホテル的な雰囲気を醸成している)「ファッションホテル」「ブティックホテル」がそれなりの集客を獲得しており、「レジャーホテル」の内装をリニューアルして「ファッションホテル」「ブティックホテル」風にする件数も増えているものと見られる。(厳密ではないが、相対的に「レジャーホテル」が減り、「ファッションホテル」「ブティックホテル」が増えている。)
また、「レンタルルーム」も相対的には増えているものと見られる。その背景として「レンタルルーム」は比較的安価な性風俗サービス(例:手コキ、デリヘル等*注)を提供する場所として、風俗事業者が顧客に紹介しやすいことや(風俗サービスの利用客はプレイ時間のみの使用なので、単価が安い方が良い)、出会い喫茶・援助交際等で出会った異性とこれもお金を掛けず、短時間でセックスに利用するのに便利であることがあげられる。無店舗型の風俗事業者が増えたことがことで、プレイルームとしての「レンタルーム」の需要が増え、相対的に「レンタルルーム」の数を増やすことを後押ししている模様である。
 
*注)手コキ:安価な性風俗サービスの一種で、手淫を補助するだけのサービス。
*注)デリヘル:派遣型ファッションヘルス=デリバリーヘルスの略。人材を派遣して、セックス本番以外の性的サービスを提供する。

参考データ:「ホテル」の状況

データ:厚生労働省「衛生行政報告例」/観光庁「宿泊旅行統計調査」

 
上記は旅館業法上の「ホテル」の客室数の推移と、「シティホテル」(宴会場・レストランのある都心型ホテル)の客室稼働率の推移である。
これをみると、ホテルは、施設数が増えるとともに、1ホテルあたりの客室数も増え、施設数を増加しつつ、大型化している。うち、シティホテルの客室稼働率(全国/年間)では、2014年度に77.3%になっている。関東、関西の大都市部で常時80%を大きく超えているところも多いという。客室稼働率が80%を超える状況は、常に予約が取りづらく、週末や観光シーズン、長期休暇シーズン等は満室が常態化していることを示唆している。
このデータから、既に、急速に増えたインバウンド需要(訪日外国人)に、施設の供給が追い付いていないことが伺える。
ホテルの予約に溢れた訪日外国人客と、日本の観光客、カップル等が、構造的にラブホテルに流入し、「休憩」ではなく「宿泊」客が増えることで、ラブホテルの客単価を構造的に押し上げる状況にもなっている。
従来は、「ラブホテル」は、「シティホテル」と顧客獲得で競合する部分もあったが、現状では、「シティホテル」の不足分を「ラブホテル」が補完し、共に成長している、とも言える。
 

参考データ:訪日外国人の状況

データ:日本政府観光局

 

ラブホテル(ファッションホテル)市場のビジネス動向

●訪日外国人客の増加でラブホテル活況

2020年に開催が決まった東京オリンピックと、円安、中国人観光客の訪日ブーム等に支えられ、旅館業法上の「シティホテル」の客稼働率が急上昇しており、週末、連休、中国の休暇シーズン等は、都心部の「シティホテル」「ビジネスホテル」の客室が満室状態となる状況で、構造的にラブホテルに訪日外国人客が流入する形になっている。
加えて、各ラブホテル運営会社も、外国語による予約サイトを立ち上げたり、外国人向けの広告宣伝を強化し、「安全に楽しく宿泊できる」ことをアピールして外国人顧客を誘引してりることも奏功して、「シティホテル」から溢れた外国人顧客だけでなく、自ら「ラブホテル」を宿泊先として優先的に選ぶ外国人も増えている模様である。
浅草、上野、大阪都心部、京都界隈では、客の8割近くが外国人であるラブホテルも出現しているという。
ここに来て、もはや、ラブホテルは、外国人宿泊施設の重要な一画を占める施設となった、と言える。

●ラブホは「カップルのセックス施設」のイメージ⇒「女性の非日常空間」に変貌

ラブホテルがファッションホテル、ブティックホテルと称されることが多いように、運営会社のマーケティング戦略としては、「カップルが短時間のセックスを行う場所」としての打ち出しはせず、あくまで「女子」に向けて、雰囲気・コンセプト、癒し、アメニティ、内装、更には食事のクオリティー向上にリソースを投下する等、「女性に気に入られる」ことを重要視した施策を行っている。
そのため、ラブホテルは、ここに来て、カップルが非日常空間でセックスを行う施設ではなく、むしろ、「セックス」を意識せずに女子同士でも楽しめる空間、という位置づけが強くなってきている。
一昔前は通称として「連れ込み宿」とも称されたラブホテルであったが、運営各事業者のイメージ戦略、マーケティング戦略が奏功して、もはやシティホテルと同様の機能と雰囲気をもった施設が多くなったことで、女性の顧客、女子会をシティホテルと取り合う、という状況にまで来ている。
 

ラブホテル(ファッションホテル)市場規模

2014年度のラブホテル(*風営法で定義された店舗型性風俗特殊営業 4号営業施設)の市場規模(利用料ベース)は前年比4.5%増の7,114億円となった。
施設自体は、6,027件→5,940件と前年比で87件減っているものの、都心部ではインバウンド需要の取り込みや、一般ホテル(旅館業法上のホテル)の供給不足から、ラブホテルの宿泊客が増えて、客単価が上がったことが要因となり、市場規模が拡大している。
2015年度も引き続き、訪日外国人数が増えており、一般ホテルの供給不足がより深刻化する状況の中、ラブホテルの客室働率が更に上がり、前年度同様に、休憩客よりも単価の高い宿泊者が増えて単価の上昇が生じることで、市場規模は拡大するものと見られる。
2015年度の市場規模は前年比4.9%増の7,460億円と予測した。
 
 

ラブホテル(ファッションホテル)市場の課題/2020年までの展望

●シティホテルの集客の伸びに並行してラブホテルも集客拡大へ

2020年に東京オリンピックを控え、急速に拡大する外国人訪日客に対応すべく、大都市部、観光地ではシティホテルの新設、客室数の拡大が急ピッチで進められているものの、訪日客の増え方のペースは、客室の供給が追い付かないペースであり、このまま、オリンピックイヤーまで、供給不足は解消されない勢いである。
よって、シティホテルの集客数と客室稼働率が今後も伸びるとともに、ラブホテルの集客数も並行して伸びてゆくものと見られる。
また、外国人訪日客にとっては、日本のラブホテルも一つのオリジナルカルチャーに映るため、シティホテルが満室で利用できないから仕方なく、ではなく、むしろ積極的にラブホテルを利用する外国人も増えてゆくものと見られる。
風営法の強い規制があるため、ラブホテルの新設件数は、今後、容易に増えることは考えにくく、インバウンド需要の受け皿となるためラブホテルからシティホテルへ改装する施設もそれなりに出てくることが予想され、風営法の4号営業としてのラブホテルの施設総数は2020まで縮小または横ばい傾向が続くだろう。
それでも、ラブホテルの1施設あたりの集客数、稼働率自体は伸長が予想され、オリンピックイヤーまでラブホテル市場は、順次拡大してゆくものと推定される。

●「成人」年齢引き下げの評価

仮に将来、民法が改正され、「成人」年齢が、20歳から18歳に引き下げられた場合、ラブホテル市場にどれ程のインパクトがあるのか?

これに伴い、「青少年」の概念が、18歳未満から16歳未満に変化することも考えられる。
日本国内の殆どの16歳は、学業を本分とする高校生であることから、16~18歳のラブホテル利用は当然に制限が掛かり続けるだろう。
但し、高校生同士のカップルについては、(可能性が低いが)、多少、ラブホテルに入りやすい雰囲気は醸成されるのではないか。
また、高校生同士が「女子会」等、セックスを抜きに楽しむ場として、利用者層が底上げされる可能性はある。(勿論、学校では禁止するであろうが、ボーリング、カラオケのようなレジャー扱いで、女子同士がラブホテル、レンタルルームを使用することはあり得るだろう。)
 

本稿の詳細データについては、下記調査レポートよりご入手いただけます。