前稿では、ペットによる人間の癒し、「ペットなセラピー」について実例を挙げて論じた。本稿では「ペットなセラピー」の特殊事例と、逆に人間によるペットの癒し「ペットのセラピー」について論じていく。

 

  1. ペットなセラピー、アニマルセラピー。ペットに癒される人間(前稿)
  2. イルカセラピーの事例(前稿)
  3. 老人ホームのロボットペット
  4. 癒しの対極「ペットロス」
  5. ペットのセラピー、人間に嫌され癒されるペット

 

3.老人ホームのロボットペット

現代は老若男女、児童や幼児に至るまでストレスフルな時代である。ペットセラピーによる「癒し」は全世代において求められている。だが、ペット禁止のアパートやマンションに住んでいるとペットを飼うことはできないし、犬や猫を介護施設で飼う事もほとんどできない。そしてペットを飼うとエサ代や医療費など、いろいろな費用が掛かる。(筆者の友人曰く、「犬をペットショップで買ってきて、寿命尽きるまで面倒を見ると、食費やら医療費やら何やらでトータル500万円は掛かるよ」との言であった)「ペットの癒しが欲しいから」と何も考えずに気軽にペットを飼うことは出来ないのである。

そういう時代のニーズに応えて登場したのがペットロボットである。そして、セラピーを超えてリハビリや治療、見守り分野での活用で、ペットロボットが老人ホームで活用されているのである。
(筆者余談:「老人ホーム」という言葉に差別的な意味合いが含まれるのかとフト気になったのであるが、これは老人福祉法のなかで規定されている老人福祉施設の名称であった。よって、差別的に用いられるものではないと確認のうえ、以降を論ずる)

老人ホームや介護施設などでは、かねてからペットセラピー等の意図で、ペットを飼うとことが検討されてきたという。しかし、実際には動物アレルギーや感染症による健康面への懸念、動物と接することでの事故などの理由で、ペットを飼育することはほとんど見送られていた。そのように情勢に登場したのがペットロボットである。これらの施設では、タテゴトアザラシ型のペットロボットなどが導入されている。そして、単に「かわいい、安全である」存在を超えて、近年のモデルでは機能としての充実が図られている。一例を挙げると「おはよう」、「お薬飲んだ?」などと入居者に声をかけたり、簡単な言葉であれば理解して返事を返したり、撫でるとて反応する縫いぐるみ型ロボットが、高齢者介護施設で実験導入されている。
そして、会話やセラピーを超えて、急に会話が途切れるなどの通常と異なる状況を感知した際には、老人が倒れて意識を失っている可能性があるということで、介護スタッフに通報することもできる。老人と音声と触感を通じた入居者とのやり取りは記録され、医療視点で分析することもできる。

このような背景で、商品の一例として、タカラトミーから、人に楽しみや安らぎなどの精神的な働きかけを行うことを目的にしたセラピーロボット「パロ」などが2010年に発売されている。「パロ」は、本物の動物を飼うことが困難な場所や人々のために開発されたアザラシ型のロボットである。セラピーを目的として、1993年から研究開発が始まっていたとのこと。タカラトミーでは、デイサービスセンター、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、小児病棟、児童養護施設などで、数多くの長期間に渡る実験を続けることで、パロによって、アニマルセラピーと同じ効果を得られることを確認したとのことである。
現在では最新モデルとして、犬型の「オムニボット ハロー!ズーマー!」が発売されている。

 

引用元:「オムニボット ハロー!ズーマー!」タカラトミーサイト

 

また、ペットロボットでの有名どころでは、ソニーの「アイボ」がある。ソニーは、その新型の犬型エンタテインメントロボット「aibo(アイボ)」(ERS-1000)の累計生産出荷台数が、4月中旬に11,111台を達成したと発表した。2018年1月11日に発売されたアイボは、ソニーストアオンラインでの販売や特別抽選販売、ソニーストア直営店舗での特別抽選販売など、これまで10回以上に渡って販売されているが、全ての購入希望者には届けられていない状況が続いているとのことである。

 

アイボ専用サイト:http://aibo.sony.jp/

引用元:「ニュースリリース エンタテインメントロボット“aibo”(アイボ)を発売」ソニーサイト

 

アイボもまた、老人ホームでの導入が開始された。ソニーの子会社であるソニー・ライフケア株式会社は、その傘下のライフケアデザイン株式会社、およびプラウドライフ株式会社が運営する介護付有料老人ホーム等に、アイボを導入している。
入居者の老人からは、「かわいいね」「いい子ね。今日は何してくれるの?」「本当にお利口ね」などと好評の様子。今後は地域イベントなどを通じて、「アイボがいる老人ホーム」としてPR活動を展開する予定とのことである。

 

4.癒しの対極「ペットロス」

ペットロスは、文字通り「ペットを失うことこと」である。死別や行方不明等でペットを失うと、ひとの心と身体には、さまざまな症状が起こる。ペットと共に過ごす事によって散在していた愛情が、ペットロスによってその存在する場所を失ってしまったことにより引き起こされる心因性の症状だとされる。そして精神症状に付随して物理的な身体症状を伴う場合も少なくない。

ペットロスになると、心や体に下記のような反応が現れることが指摘されている。

 

≪心の反応≫
深い落ち込み・後悔・罪悪感・喪失感・怒り・憎しみ・感覚鈍麻・無気力・希死願望など

≪体の反応≫
頭痛・めまい・眼精疲労・関節痛・胸の痛み・胃の痛み・過呼吸・倦怠感・持病の悪化・睡眠障害・摂食障害・幻聴・幻覚など

 

ペットロス症候群という言葉があるが、これは本来、ペットロスによる心身に起こった症状が長期化し、かつ障害が認められた際に使用される言葉である。
ペットロスが死別の場合、対象となるペットは当然、飼い主の元に帰ってくることはない。
ひとがペットロスから立ち直るには、二つの大事なポイントがある。ひとつは、ペットロスによって起こる心身の症状は、正常な心と体の反応であることを自覚することである。もとひとつは、ペットを喪失した直後に、寂しさですぐに次のペットを飼わないことである。時間をおかないと、喪失したペットと比較してしまい、心が回復しなくなってしまうのである。
何よりも大切なのは、喪失したペットが自分の心なかで生きていることを実感できた時、ペットロスは克服しようとしなくても、自然と克服できていくものであるという点に尽きる。

 

引用元:「ウィローツリー天使像 【Angel of Friendship】- 友情」Amazonサイト

 

5.ペットのセラピー、人間に嫌され癒されるペット

飼い主とペットの関係は急激に変化してきている。ペットは旧来の「家畜」ではなく、家族同様の生活をして、ストレスを抱えた飼い主を癒してくれる存在にまでなっている。しかし、ペットも人間と共に生活する事で、人間同様にストレスを抱えているのである。
近年では、ペットへの虐待などの痛ましいニュースが世間を騒がせている。

環境省が定める『動物愛護管理法』では、ペットを虐待したり捨てたりすることは犯罪であると定められている。「ペットの虐待」と聞くと、ペットの殺傷というイメージが浮かんでくるが、実際はそれだけにとどまるものではない。環境省のウェブサイトでは、「虐待や遺棄の禁止」として以下の内容が記載されている。

「愛護動物を虐待したり捨てる(遺棄する)ことは犯罪です。違反すると、懲役や罰金に処せられます」
「動物虐待とは、動物を不必要に苦しめる行為のことをいい、正当な理由なく動物を殺したり傷つけたりする積極的な行為だけでなく、必要な世話を怠ったりケガや病気の治療をせずに放置したり、充分な餌や水を与えないなど、いわゆるネグレクトと呼ばれる行為も含まれます」

昔と比べて美味しい食事を与えられ、ペットにも暖かな寝床があり、ペットもお洒落や美容、レジャーまでもを手軽に享受できるようになった。しかし、飼い主たちがストレスをためるのと同じように、ペットも日々の暮らしのなかでストレスを感じているのである。

 

 

ハンガリーのエトヴェシュ・ローランド大学では、声や鳴き声、うなり声やため息など、人間と犬が発した音に対する犬の脳の活動を調査している。
そこで注目されたのは、犬と人間の脳内における感情処理の類似性である。人間の声に対し、犬の聴覚皮質が反応していた。簡単にいうと、人間の悲痛な声に対して犬も「悲しい」という感情処理を、嬉しそうな声に対して「嬉しい」という処理をしていたことを示すものであったという。
つまり、犬と人間の間に言葉は通じなくとも、感情の共有という、緊密なコミュニケーションが可能であることの立証につながる結果であったのだ。ペットのなかでも犬は特に飼い主との「(言葉でなくしぐさなどによる)会話」が可能な生き物である。犬だけでなく猫も、イルカをはじめとして他の動物もすべて、感情の共有によるコミュニケーション設立の立証の可能性があるのだ。(もっとも、このような証明は、ペットが既に家族の一員である飼い主には必要ないことかもしれないが。。)

 

 

そして近年では、ペットのストレスを解消するため、様々な民間団体や法人団体、資格も登場している。それらが「アニマルコミュニケーター」「アニマルヒーリング」の存在である。その目的は、動物のケガや病気の治癒と同時に、興奮した、怯えている動物の気持ちを穏やかにすることにある。虐待された動物をケアすることで、人間を怖がって信用しない動物を安心させ、「社会復帰」させるカリキュラムが組まれているのだ。
アニマルヒーリングそこでは、エッセンシャルオイルを用いたペットへのマッサージのほか、アロマ、クリスタル、果ては言霊を用いたペットのリラクゼーションまであり、人間へのヒーリングと変わらない内容が実施されているのである。

日本国内では、「一般社団法人社団法人 日本ヒーリングサポート協会」や「日本アニマルヒーリング協会」などの団体が存在しており、ペットのセラピーについて普及・啓蒙活動を行っている。

一般社団法人社団法人 日本ヒーリングサポート協会
https://www.jahhs.com/

日本アニマルヒーリング協会
https://www.japan-animals.org/