アダルトグッズ市場の定義

本項で述べる「アダルトグッズ」市場とは、「性的好奇心をそそる道具、器具」の製品としての市場とする。(グッズを用いた各種性風俗サービス、DVDの個室鑑賞等の「サービス」に関する市場は除外する。)
また、別章で記述がある、AV(エロDVD)、風俗誌(エロ本)、エロゲー、更にはコンドーム、ローション等の衛生用品、バイアグラを始めとした勃起薬、セクシー下着、エロコスチューム(セーラー服、スクール水着、各種エロコスプレ衣装)等も本項では除外した。
以下、本項の対象製品の名称とその概要を一覧にした。
 
 

アダルトグッズ市場の「成人」に関与する法律/市場背景

「アダルトグッズ」については、グッズそのものの製造、所持、販売については、未成年に対する厳密な規制は無い。
「アダルトグッズ」を販売する「アダルトショップ」に関しては風営法(第二条)において、「店舗型性風俗特殊営業」として、18歳未満の入場を規制している。
 
風俗営業等の規則および業務の適性化等に関する法律(通称:風営法)
この法律において「店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。(第二条六)
*五. 店舗を設けて、専ら、性的好奇心をそそる写真、ビデオテープその他の物品で政令で定めるものを販売し、又は貸し付ける営業
上記にある「政令で定めるもの」に、アダルトグッズを指すものとして以下の記述がある。
 
 
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令
・性具その他の性的な行為の用に供する物品、性器を模した物品、性的な行為を表す写真その他の物品又はこれらに類する物品(第四条四)
しかし、これらの記述はあくまで、「店舗型性風俗特殊営業」の一つである「アダルトショップ」に関しての規制である。
例えば、「アマゾン」等のネット通販大手、ドンキホーテ等のディスカウント店でも同様のものは扱っているが、「店舗型性風俗特殊営業」の「アダルトショップ」のカテゴリーとして営業している訳では無い。
色々な解釈があり得るが、性的好奇心を惹起する商品であるため、「アダルトグッズ」は殆どの自治体が設定している青少年保護育成条例上、販売する上では、青少年が買えないように配慮する必要があると、販売店等で判断し、18歳未満の目に触れないよう、自主的に配慮している、というのが現状である。
例えばオナホールの「TENGA」等は、18歳未満の青少年が購入できないよう、メーカー側が自主的に規制しているだけであり、当局の要請によって、未成年への販売が禁止されている訳では無い。
よって、アダルトグッズに関して、法的に18歳未満に対して販売が禁じられているか、というと微妙なところではあるが、猥褻な図書、DVDと同様、性的好奇心を増長するものである以上、法というよりも社会通念上、規制されて然るべきもの、という位置付けになっている。
 
青少年保護育成条例(主な条文/以下は東京都の条例):
・青少年 十八歳未満の者をいう。(第二条の一)
・図書類の発行、販売又は貸付けを業とする者は(中略)、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、相互に協力し、緊密な連絡の下に、当該図書類又は映画等を青少年に販売し、頒布し、若しくは貸し付け、又は観覧させないように努めなければならない。(第七条)
*青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの(第八条)
 
上記は、「有害図書」を想定しているが、量販店等で、アダルトグッズ商品を扱う場合に、販売エリアを隔離しているのは、上記の法規を意識してのものと思われる。
 

アダルトグッズ市場の構造

アダルトグッズ流通構図:矢野経済研究所作成

 
当該市場へ参入しているメーカーは、弊社の調査では、200社程度と推定された。業界最大手の㈱TENGAは別格として大きいが、中小メーカーがひしめきあっている状況である。
ネット経由で直接消費者に販売される部分は近年大きくなってきているが、現状ではまだリアル店舗・施設(量販店、アダルトショップまたはDVDボックス、風俗店、ラブホテル等)を介しての販売がネットチャネルを上回っている模様である。
アダルトグッズ全体の流通量に占める、リアル店舗(各種風俗施設含む)対ネットチャネルの構成比は6:4程度と推定される。
オナホールに関しては、DVDボックスと言われる、エロDVDをその場でレンタルして、個室でオナニーを楽しめる業態に大量に供給されている。(通常、DVDボックスの利用は漫画喫茶と同様、時間制であり、時間内であれば、DVDのレンタルがし放題であり、料金にオナホールが含まれている場合がある。また、別料金で様々なオナホールが販売されており、ユーザーは、DVDボックスで存分にオナホールを消費する。)家庭内で個人的に利用される量よりも、DVDボックスでの利用量が圧倒的に多い。
ローター、バイブレーター、ソフトSM器具(目隠し、手枷等のソフトSM器具)等は、ラブホテルに多く供給されている。ラブホテル側では、部屋を利用する客に対してオプション購買品として、部屋の利用料とは別個に提供、販売している。(室内にこれらの器具を販売する自動販売機が備え付けられていたり、ルームサービス的に好きなグッズを部屋に届けてもらうサービス等がラブホテルによって提供されている。)
ラブホテルでのアダルトグッズの利用は、通常、男性側が、セックスを盛り上げるために購入するケースが多い。女性が自分自身のオナニーのために利用するローター、バイブレーターについては、ネットチャネルでの購入が多い。
その他、ローター、バイブレーター、肛門刺激器、ハードなSM器具(縄、鞭等)に関しては、性風俗店に風俗プレイを盛り上げるための道具として大量に供給されている。
数十万円する高額なダッチワイフ(ラブドール)については、まさに自動車と同様に、メーカーがプライベートを完全に担保したショールームを設けて、ディーラーと消費者がコミュケーションしながら販売できる体制となっている。また、ダッチワイフについては、リースという形で、性風俗店や個人に一定の期間貸し出す形でも供給されている。
総じて、アダルトグッズは、オナニー、セックスプレイという、極めてプライベートな行為に供するものであるが、家庭に常備するよりも、利用したいときに、外部施設で利用する、というスタンスのユーザーが相対的には多く(あまりにプライベートなので逆に家庭に常備しにくいのだろう)、そのため、DVDボックス、ラブホテル、性風俗店などでの利用が多くなる、という構図になっている。
 

アダルトグッズ市場のビジネス動向

●外国人への販売強化

世界ブランドにもなっているオナニーグッズ「TENGA」の㈱TENGAは、既に世界30か国に販売代理店を持ち、海外売上を急増させており、もはや世界に通用する「クール・ジャパン」商品の輸出業者として世界ブランドに成長したといっても過言ではないだろう。
等身大ラブドール(ダッチワイフ)の有力事業者であるオリエント工業、4WOODS、ハルミデザイン等も、外国人の需要増を背景に、英語のホームページを設定する等、やはり外国人向けの販売を強化している。
「TENGA」やリアリティを追及したダッチワイフ製品は、日本の技術力の圧倒的高さが表れている製品とも評価され(日本以外の国でこれほど精巧なものは作れないという評価である)、一度でも手に取り、触った外国人にとっては、その感触に驚き、感動するという。 
大げさではなく、まさに日本が世界をリードしてきた自動車と対比してもおかしくない位に、代表的なアダルトグッズ製品は、日本が誇るべき技術製品である、とも言える。
日本では、セックスをしない「草食男子」が話題になっているが、その一方で、オナニーは万人が行っており、そのオナニーのツールの豊富さは世界に類を見ない。その「オナニー先進国」の日本が、ついにその技術力で外国に「輸出」、または訪日外国人に「爆買」の対象として売り込みを強化しているのである。
今後、2020年の東京オリンピックに向け、益々、世界が日本に注目する中、日陰的な存在であった日本のアダルトグッズが、世界により発信されてゆき、市場が盛り上げってゆくことが期待される。

●女性向けが鍵

㈱TENGAの女性向けローター「iroha」を始め、主要各社の女性向け商品(ローター、バイブレーター等)は、よりファッショナブルで洗練されたデザインになってきており、女性の感性にフィットする商品が市場に次々と出て来ている。
「アダルトグッズ」は従来、男性の性欲に訴求する商品が大半であり、ローター、バイブレーターなどの女性の陰部に使うものも、デザインは男性の目線で、男性にとってのいやらしさ、男性が女性に使用して楽しい・エロい、という点を訴求していたが、昨今は、女性自身が一人で(またはパートナーと)使うにあたり、女性自身が自分に合うもの、として選ぶようになってきている。
よって、益々、当該業界においては、女性の嗜好を理解し、商品を開発する、女性マーケティングが販売の鍵を握るようになってきている。
 

アダルトグッズ市場規模

2014年度のアダルトグッズの市場規模は前年比3.3%増の1,620億円となった。(*末端小売ベース。アダルトショップ、量販店、ホームセンター等の店舗販売、ネットショップ、更にはDVDボックス、ラブホテル、性風俗店等の施設チャネルでの販売も含む。)
オナニーの多様化、DVDボックスでの需要増、風俗プレイでのグッズの需要増に加えて、女性自身が意思決定して購買するケースが増えてきていることも寄与して、2013年度からは市場規模が増加している。(一説には、スマホの普及によって、ライトノベルや女性用のエロ動画を片手に、女性が道具を使って家庭でオナニーをする機会が増えたことで、アダルトグッズの女性ユーザーが急増してきていることも、ここ数年の市場規模増加の要因と見られる。)
ネットを介しての購入がここ数年大きく伸びているのも、男性の購入者だけでなく女性の購入者が寄与しているものと考えられる。
2015年度もここ数年と同様にアダルトグッズの需要は拡大している模様であり、前年比3.1%増の1,670億円まで拡大するものと予測した。
 
 

アダルトグッズ市場の課題/2020年までの展望

●グッズのハイテク化で「擬似セックス≒リアルセックス」に!

当該業界では技術の高度化が進んでおり、最も技術の粋を集める高級ダッチワイフに至っては、現時点においても相当にリアルな擬似プレイが可能となっている。また、オナホールについても、その触感(挿入感)は、真の女性器に近づいてきている(と言われている)。
今後も技術の進化は続き、ダッチワイフと進化したオナホールの組み合わせで、まさにリアルセックスと遜色ない時代が到来しそうである。
加えて、当業界で最も注目されている技術として、「オキュラス・リフト」があげられる。
これは、元々、3Dゲーム用に開発された技術で、ヘッドセットを付けてプレイすればまさに自分がその空間にいるかのような「リアリティ」を感じさせるツールである。(既に米国で実用化され、販売が開始されている。)
このオキュラスがあれば、例えば、AV女優どころか、本物の女優と仮想世界の中で一緒になれ、最高技術のダッチワイフとオナホールがこれに組み合わされれば、究極的には、好きな人といつでも(仮想ではあるが)セックス(したかのように感じるだけだが)できる、というまさに「夢?」のような世界が実現する。
いつでも、好きな時に、好きなプレイが、しかも好きな人とのSEXが可能になり、生身の人間とのセックスと変わらない(むしろベターである)という状態になり得る。
更に、昨今進化しているロボット技術(AI技術)が加われば、まさに、好きな人といつでもSEX可能かつ、自分の好みの女性(男性)に育てることができる(仮想ではあるが)ことになる。
荒唐無稽に聞こえるであろうが、2020年までに技術的には、このようなことが可能になることは、ほぼ明らかになっている。(道徳的には相当物議を醸すであろうが。)
昔から、技術は、開発者の意図と違う用途に使われるものである。ダイナマイトしかり、原子力しかり・・。人間の根源的な欲望がある限り、オキュラス等のVR技術(仮想化技術)や人口知能技術は、本来想定されていた用途ではなく、アダルトグッズのハイテク化に用いられ、人間の本能的営みであり、男女がいて初めて成り立っていたSEXを、自分ひとりで自由に「カスタマイズ」して楽しむものに転化させてゆくことが起こり得る。
少子化に拍車をかけ、人類の種の保存に重大な危機すら招きかねない事態であるが、世界最高の技術を集めた新たなバーチャルリアリティ・セックスが日本で誕生するのは、もう目の前なのである。

●「成人」年齢引き下げの評価

仮に将来、民法が改正され、「成人」年齢が、20歳から18歳に引き下げられた場合、アダルトグッズ市場にどれ程のインパクトがあるのか?

これに伴い、「青少年」の概念が、18歳未満から16歳未満に変化することも考えられる。
日本国内の殆どの16歳は、学業を本分とする高校生であることから、16~18歳へのアダルトグッズへの販売については、法的には許されても、社会規範上は当然に制限が掛かるものと思われる。
但し、バイブレーター等の単価が高く、明らかに性器をモチーフにしたような「直截的」なものはともかくとして、「TENGA」等のオナホールは、高校生であっても買える、というような情勢になるかもしれない。(オナニーは誰でもするので、オナニーグッズを規制するというのは不合理にも見える。)
元々、法的に青少年の使用を禁止しているものではなく、オナホールはメーカーが自主規制している。18歳未満使用禁止の自主規制が、16歳未満の自主規制になれば、オナニー盛りの年齢層の高校生による購買が、市場の底上げに寄与するであろう。
 
本稿の詳細データについては、下記調査レポートよりご入手いただけます。