前回は成人用玩具の小道具であるTENGAについて、「素材を取り扱う匠」の視点で製品を考察してきた。シリーズ最終回となる本稿では、小道具に対して「飛び道具」を論じていきたい。ぶっちゃけで言って、オナホールに対しての、いわゆるダッチワイフ、ラブドールである。ココロして読まれるように。。今回も論の根底にあるのは、素材を取り扱う「匠」である。

妖しい魅力を放つオリエント工業のラブドールとは、実際どのような製品なのであろうか。文字通り「肌感覚」を知るべく、筆者はショールームの見学を申し込んだ。
見学は一度に四名までであり、日曜と祝日は女性の見学を断っているとのこと。期待と不安(無理やり買わされたらどうしよう)を胸にドアを開けると、いきなり30畳程度の大きな部屋が現れた。そこに「居た」のは、着飾った、そして何人かは裸の、15人ほどのラブドールたちである。続いて現れたのは初老の人間の男性。製品仕様の解説の大半は、この男性が話してくれたものである。

 

 

  1. 素材の匠 - 気持ちよさの決め手はここ!
  2. デザイン - 好みの女性のタイプは?自分の内面と対峙する
  3. 機能 - ここまで進化した!注目機能の数々
  4. オリエント工業のラブドールの創業秘話と逸話

 

1.素材の匠 - 気持ちよさの決め手はここ!

たまたまシリコンやエラストマーとして生まれたプラスチック樹脂の素材たちが、気がつくと人の形をしていたケースが、本稿の主役であるラブドールである。本人(樹脂素材たち)は、ただの高分子プラスチックのカタマリとして存在しているだけなのだが、その形状はTENGAirohaと違い、人間の全身を模したものである。そして「顔」があるものなので、その感情移入度はTENGAシリーズとはまた別格である。何より、「全身で肌に触れる」製品であり、その素材には、ユーザー納得の感触と安全性がより一層求められる。

オリエント工業のドールたちの素材は、シリコンとソフビ(ソフトビニール。ある程度の弾力を持ったプラスチック)に大別できる。ソフビは軽量で立ちポーズなどの動作をとらせやすいが、同社が特に注力しているのはやりシリコン製のドールである。シリコンはブリード(シリコンから油成分がしみ出す事)が起こりやすい素材なのであるが、同社ではその対策を行っており、ブリードが出にくいシリコンの調合をしているとのことであった。

 

 

ドールたちは単なるシリコンの塊ではない。製造時に図表のような複数種の剛性を持つ骨格素材を使い分けて内包しており、それらによってより人間の骨格に近い仕様を再現しているのだ。また、この骨格部の存在によって身体の「芯」の感触があり、生身の人間の身体に触れて抱きしめたときと同様の感覚を得ることができる。

骨格に対して「肉」となるシリコンも、表皮と内部で素材を使い分けていることで、実際の生身の身体の弾力を再現している。また、興奮を抑えきれずに淡々と書くが、バストやヒップなどの箇所では各素材の厚みや調合比率を変えていることで、よりリアルな感触を再現している。バストはさらに、乳首や乳房の部位などによって調合が異なっており、触感がよりリアルになっている。これらが肌を合わせて感じる、魅惑の「気持ちよさの決め手」になっているのだ。さらに、各パーツは実在の女性から型取りをしており、皮膚のしわなど細部にわたりリアリティを追求しているのである。

筆者もショールームのなかで何体かのドールを実際に触れさせてもらったのであるが、本体の体温以外で感触的な違和感を持つことはなく、これはもう癒しの世界であった(照)。触れているうちに、抱きしめているうちに、触覚を超えて幸福感までを感じてしまうのである。

ちなみにホール機能などの「実用性」については、詳細は後述するが取り外し式の別パーツとなっている。これにより、オリエント工業製のホールを使い分けることもできるし、(勧められたわけではないが)サイズさえ合えばお気に入りの他社の既製品を流用することもできる。この点もダイレクトに(恥照)「気持ちよさの決め手」のひとつとなっている。

 

この、「ダイレクトな触感の満足感」が「ラブドール選びで失敗しない1つ目の重要ポイント」となる。

 

 

2.デザイン - 好みの女性のタイプは?自分の内面と対峙する

ショールームのドールたちにいくつか触れさせてもらいつつ、取材とはいえ結構本気で自身の性癖好みに合わせてドールをカスタマイズしようとしている自分にふと気づく。タイミングを見計らったように、物腰のやわらかな担当者がドールの各パーツのカスタマイズ(平たく言って女の子の身体の好み)について順番に尋ねてきた。

一例として、同社の製品ラインナップからここでは「Petite Jewel(プチジュエル)」を採り上げる。
(選択理由は、抱きしめた時の感触重視でソフビではなくシリコンで、カスタマイズできる項目の自由度の高さと、筆者がお姫様抱っこをしたい意向で比較的小柄で体重の軽いモデルを選んだことにある←すっかりその気)

ドールの各パーツは、以下の図表の項目から選択して自由にカスタマイズできる。(表記価格はすべて消費税別)

 

 

カスタマイズできる項目は、身長(少女~成人)、ヘッド部分(表情)、眼球の色と可動可否、ウィッグ(髪の長さ)、バストサイズ(小・大)、指先の関節の有無、果てはアンダーヘアの植毛の有無にまで及ぶ。それらを自分の趣味まる出しで選択していくときの不思議な高揚感と幸福感といったら。。

 

 

 

さらに実用機能としての交換式のホールの形状も選ぶことができる。「ホールにもタイプがありますので、指を入れて感触を確かめてみてくださいね」との言葉にも、いやらしさでなく自然な行動をしていると思えることの不思議さ。果ては彼女たちへの化粧の手ほどきまで受けている自分自身に、もはや何の疑問も違和感すらも感じていなかった。

 

 

各タイプの違いや素材の説明を受けながら、いつのまにか取材としての質問が自分の要望になり、最終的には完全に自分の趣味まるだし(組み合わせはナイショ)の好みの「女の子」をカスタマイズした見積書が出来上がってしまった。担当者曰く「照れたり遠慮したり見栄を張ったりして、自分の本当の好みでない組み合わせをしてしまうと、あとで後悔したりドールと過ごすことがストレスになってしまうんです。だからそうならないように、ショールームの見学お一人でいらっしゃることをお勧めしているんです」と。確かにそのとおりで、ここで遠慮していたり、複数人数で来て好み(≒性癖)や本音を隠したりしてドールを購入したとしても、60万円前後の買い物が無駄になってしまう。やはりショールームへは一人で、かつ見学の際には照れることや遠慮などせず、ドールやパーツの比較と質問をすることが勝利(何の?)への道だろう。

 

高価なラブドールを買うからには、自分の内面と対峙して、己の欲求(欲望)に素直になることが「ラブドール選びで失敗しない2つ目の重要ポイント」となる。

 

応対してくれた担当者からの問いには、無理やり買わされるなどの圧迫感や違和感は無かった。感じたのは、製品への絶対の自信と思い入れ、ユーザーへの思いやりであり、やさしくカウンセリングを受けているような気分であった。その対象の根底は「シリコン樹脂のカタマリ」のはずなのに、である。

(この稿続く)