誰もが一度はお世話になったことのある、シャープペン。いま(だに)、2017年2月発売のぺんてるのシャープペン「オレンズネロ」が売れているという。というか売り切れ続出で買えないらしい。その秘密は「0.2㎜または0.3㎜芯でも折れずに書ける」ということ(そう言われると象に踏ませてみたくなるのだが)。経験則では、シャープペンの芯はちょっと筆圧をかけるとポキポキと折れてしまうと思ってしまうのだが、今回はその「折れない秘密」に迫ってみた。

 

 

究極のシャープペン「オレンズネロ」とは?

その名前、「オレンズネロ」。「折れん」ズネロ、ということか。ではズネロって何だ、ネロとは暴君のアレかと思考が散らかっていくのだが、そうでなくネロとはイタリア語で「黒」のことらしい。「orenznero」、右左どちらから読んでも同じなのは偶然か、はたまた故意か。。

 

引用元「オレンズネロ」公式サイト

 

オレンズネロのキャッチコピーは"書く。書き続ける。"ぺんてるが2017年2月に世に送り出した「オレンズネロ」は、ノック1回でオッケー、芯が折れずにすらすら書き続けられるというシャープペンシルである。オレンズネロの印象的な特徴は「手に持つ快感、その重量感、質感」である。12角形の一体軸はその造形からして美しいが、単に工業デザインに走っただけでは書き味に結び付くことはない。あくまで実用的な文具としての人間工学設計的な造形を追い求めていった結果の産物である。ガンダムとコラボしなかったのは、同社の判断が冷静であった証であろう。デザイン性と書き味の実用性を兼ね備えたこのフォルムは、ガジェット好きにはたまらない一品である。

 

引用元「オレンズネロ」公式サイト

 

実際に手にして文字を書き綴ったその感触は、既製服に対するオーダーメイドのスーツ、軽自動車に対するベンツ、3本1,980円のゴルフクラブに対するパーシモンといったところだろうか。数百円のシャープペンと異なり、手に持つこと自体、文字を書くこと自体が楽しくなってしまうのである。勉強中に調子よく解答を書き進めたりノートをとったりしているときにポキッと芯が折れると、やる気も折れてせっかくの勉強テンションが下がったりしたことはないだろうか。芯が折れないということはストレスフリーであり、受験勉強で使えば、机に向かう敷居が下がること請け合いである。

オレンズネロは現在2モデルがラインナップされており、色はブラックのみで芯の太さが0.2mmと0,3mmから選択できる。価格は両モデルとも3,000円(税抜)である。細い文字が好みであったり、イラスト等で繊細な線が必要な際には0.2mmモデルを選択するのもいいだろう。0.2mmのモデルであっても、特徴である「折れない」仕様は変わらない。

 

 

品番:PP3002-A/軸色:ブラック/芯径:0.2

 

品番:PP3003-A/軸色:ブラック/芯径:0.3

引用元「オレンズネロ」公式サイト

 

細部の仕様の違いとして、0.2mmモデルの消しゴムには専用クリーナーピンが装着させており、0.3mmモデルにはそれがない。この専用クリーナーピンは芯がペン先に詰まってしまった際に使うもので、さすがに0.2mmだと他の替え芯を入れて詰まった芯を押し出すことが難しいためと思われる。

 

芯が「折れない」究極の構造を知る!

オレンズネロには、ぺんてる独自の、芯が折れない「オレンズシステム」機構が搭載されている。これは、文字を書いていく際の芯の減り具合に合わせて、ペン先のパイプが徐々にスライドしていくというギミックである。つまり紙に触れている芯の先端以外をパイプが常に支えているのだ。オレンズの特徴のひとつである極細芯0.2mmという細さでも、この機構のおかげで筆圧をかけても芯が折れにくくなっているのだ。
そして、ペン先が紙面から離れる度に自動で芯が出てくるようになっているので、最初に一回ノックするだけで、芯がなくなる直前まで書き続けられるというものである。

ただしこの機構には特徴というか「クセ」がある。大多数のユーザーがそうであろう右利きの人が文字を右側に「払う」際に、このパイプが紙に面に当たってしまい、文字がかすれたようになってしまう傾向があるのだ。このコラムを書いている筆者も手の位置の具合によってはそうなってしまったし、ネットで検索すると、この現象に遭遇しているユーザーは決して少数ではないようだ。
これは、握ったシャープペンを少し立て気味にすることで回避できるものであるが、筆記具を寝かせ気味に持つ傾向のある人には書き具合にダイレクトに影響するだろう。
オレンズネロの機構の特性上、筆記時のシャープペンの紙面に対しての角度は重要であり、この「クセ」を許容できるかが購入のポイントとなる。
この「寝かせ時の文字のかすれ」は、オレンズネロの0.3mmモデルよりも0.2mmモデルのほうがその傾向が強いようである。別の回避方法としては、一般的なHやHBの芯よりも、2B等の「濃い・柔らかい」傾向の替え芯を利用するという手もある。

 

引用元「日本筆記具工業会」サイト

 

0.2mmより0.3mmのほうが替え芯の選択肢は多いので、替え芯の入手し易さの点から0.3mmモデルを選択するという手もある。また、当コラムの筆者の実体験では、同じ筆記の角度でも筆圧を多少強めにすることで、文字は多少かすれにくくなった。

いずれにしろ、高価な文具であるので購入後に後悔しないためにも、品薄ではあるのだが実際に店舗で手にして書き味を確かめることをお勧めしたい。

 

高級モデルが発売されるシャープペン業界の動向は?

消耗品で安価な製品が大多数であったシャープペン業界に踊り出た、フラッグシップモデルの「オレンズネロ」。シャープペン業界は現在どのようになっているのだろうか。
矢野経済研究所から大好評発売につき重版につぐ重版の「文具・事務用品マーケティング総覧-2017年版-」をみると、2016年度のシャープペンの市場規模(本体と替え芯)は、前年度3.3パーセント増の155億円と推定されている。

 

【シャープペン市場規模推移(2013年度~2017年度予測)】

引用元:矢野経済研究所「文具・事務用品マーケティング総覧-2017年版-

 

業界では、シャープペンは他商品に比べて差別化が難しいとされていた。2008年に三菱鉛筆から発売された高機能・付加価値商品の「クルトガ」がヒットしたが、以降それに続く商品が存在していなかった。そのような情勢のなか、ぺんてるの「オレンズネロ」の一世代前モデルの「オレンズ」が2014年に、同年にゼブラからも「デルガード」などの高機能・付加価値志向の商品が登場したことで、単価の高さにもかかわらず「複数買い」を誘発し、市場拡大の要素をつくってきた背景がある。
各社のシリーズバリエーションの強化や限定商品などで市場が活性化し、需要を喚起しているが、その需要が一巡した感も予測される。このことで、2017年度のシャープペン市場規模は前年度比1.3パーセント減の153億円と予測されている。

(この稿続く)