いまや大人(一部大きなお友達)から子供まで、老若男女がハマるトレーディングカードゲーム(以下TCG)。筆者もかつて「マジック:ザ・ギャザリング」にどハマりしたクチであるから、その魅力は身をもって知るところである。
TCGは、プレイヤーが持ち寄ったカードを組み合わせて、一定のルール下でカード(デッキと称する)を用いて対戦するゲームだ。そのTCGで使用するカードがトレーディングカード、略してトレカである。
トレカは、名前の通りトレード(交換)するためのカードである。トレカを定義すると、「一定の競技ルールのもと、対戦を楽しむカードゲームに用いるカード」となる。トレカにおいてのトレードは、文字通りカード同士の交換を是としている。カードはゲーム上でデッキというまとまりの単位で構成されている。
本稿では、このトレカ市場について考察する。

 

  1. 全てのトレーディングカードゲームに影響を与えた「マジック:ザ・ギャザリング」
  2. トレーディングカードゲーム市場の回復を支えたモノ
  3. トレーディングカードゲームのどうしようもない傾向
  4. トレーディングカードゲーム業界の抱える問題とは?

 

1.全てのトレーディングーカードゲームに影響を与えた「マジック:ザ・ギャザリング」

冒頭にも記したが、TCGは「マジック:ザ・ギャザリング」にとどめを刺す(←意味:それに限る。それがいちばんすぐれている。例:「山は富士山にとどめを刺す」)。1993年にアメリカで発売されたこのタイトルは、簡単に言ってしまうと「剣と魔法のファンタジーのロール・プレイング・ゲーム(以下RPG)」のカードゲーム版である。
それまでRPGといえば、やはりアメリカ発の「ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ(以下D&D)」や「ウィザードリィ」「ウルティマ」シリーズといったタイトルが存在していた。TCGに近いのはテーブルトークRPGのD&Dである。これは名前の通り、テーブルの上に地図を広げ、その上にキャラクターやアイテムの駒を置き、ゲームマスターと呼ばれる主催者の指示のもとプレイヤーがサイコロを振って、クエストと呼ばれるイベントをこなしていくというものである。そのゲームの性格上、場所をとり、複数のプレイヤーの参加が必要で、何よりゲームの面白さが、シナリオを提示するゲームマスターの腕によってかなり左右される点に特徴があった。面白さは最高であるが、ゲームルールの学習など、同時にかなり敷居の高いゲームであったことから、RPGゲームの主役を後発のゲームシステムに譲っていくことになる。
「剣と魔法のファンタジー」の世界観をテーブルトークRPGから引き次いで、その欠点を改良したものが、「ウィザードリィ」「ウルティマ」シリーズなどの、いわゆるパソコンゲームである。両タイトルをはじめとするパソコンゲームでのRPGは世界中で一大ブームを巻き起こす大ヒットとなった。だが当然ながらそのプレイには高価なパソコン本体(当時の基本的なセットで十数万円)が必要であり、現在のように通信対戦のインフラも存在しておらず、そこに「RPGの醍醐味である対プレイヤー戦への回帰の要望」の機運が重なってきたこともあって、上記で述べてきたようなゲームファンに「次のゲームシステム」が待たれることとなった。
そのような時期に登場したのが、「マジック:ザ・ギャザリング」である。「剣と魔法のファンタジー」の世界観はそのままに、はるかに初期投資額の低いデッキカードを用いたゲームシステム、よく練り上げられた対戦ルールと望んでいた対プレイヤー戦など、新システムを待ち望んでいたプレイヤーの大歓迎を受けることとなった。アメリカ発のこのタイトルは、ルールは全世界共通で変更することなく、各国版への移植がカードの翻訳のみで済むことから、日本を含めて一気に全世界に広まり世界大会まで開催されるようになった。
その後、世の中には多種多様の媒体で星の数ほどのゲームが登場しているが、特にTCG業界において、基本にして王道、先駆者である「マジック:ザ・ギャザリング」の影響をほとんどのタイトルが受けていると言っても過言ではないだろう。この「マジック:ザ・ギャザリング」の歴史を知っておくこと、できれば一度はカードに触れてプレイしておくことが、現在のトレカ市場を肌で知るひとつ目のポイントとなる。

引用元:「マジック:ザ・ギャザリング」公式サイト

 

現在では、「剣と魔法のファンタジー」だけではなく、ゲームやアニメの作品・キャラクターをテーマにしたトレカが各社から発売されている。カードゲームに特化した専用の作品ではなく、ひとつの作品が発表されるとそのグッズとしてトレカが発売されている状況である。今ではスポーツ選手やアイドル歌手などのトレカが発売されており、これらの「キャラクターがゲームに組み込まれる」様相を呈している。

 

トレーディングカードゲーム市場の回復を支えたモノ

それでは、その多種多様なトレカが上市されているTCG市場は、現在どのようになっているのだろうか。

Xビジネスの親玉である矢野経済研究所から販売されている「玩具産業白書 2018年版」からちょっとだけ資料を紐解くと、トレーディングカードゲームのメーカーシェアは、2016年度の出荷ベースで428億円となっている。
なお、ここでの市場は、「ゲーム要素を持たないコレクションカードや、トランプやかるた等の古典的カードゲーム、ゲームセンター等の施設に設置されたゲーム機や、市販の専用ゲーム機を使ってプレイするものは除外している。同時に、(取引金額がすごいのは知っているのだが)中古カード取扱店やネットオークション等による二次流通も除外している。

 

トレーディングカードゲームメーカーシェア 

※2016年度出荷ベース

 

さらに、2015年度から2017年度までの市場規模(見込み含む)を比較すると、以下のようになる。

 

 

トレカ市場は、「遊戯王」のコナミデジタルエンタテインメント、「デュエル・マスターズ」のタカラトミー、そして「ポケモンカードゲーム」のポケモンが、従来からの三強であった。近年になってこの市場に、「カードファイト!!ヴァンガード(2011年)」や「フューチャーカード バディファイト(2014年)」、そして「ヴァイスシュヴァルツ(2008)」を擁するブシロードが参入したことで、2011年に市場規模が拡大した。これがTCG市場のブームの契機となった。

 

引用元:「ブシロード」公式サイト

 

だが翌年になるとブームの沈静化とスマホゲームの普及(詳細は後述)などにより、市場規模は大きく後退することとなった。そして2015年にふたたび市場が拡大傾向に向かうことになるのだが、その要因として、「開発側の世代交代」と、前述した「マジック:ザ・ギャザリング」が挙げられる。
かつて「遊戯王」などのTCGで遊んだ世代が、今度はゲームメーカーに入社して開発側に回ったのである。かつての人気キャラクターを再起用するなど、昔のファンを呼び戻す施策が為されたことで、再び話題性が高まったのである。そして、市場の停滞期に基本に立ち返ったのか、あの「マジック:ザ・ギャザリング」が大人層を中心に再ブームとなったことで、TCGの市場全体が回復していった。この同時期にアニメ人気から火が付いた、タカラトミーの「ウィクロス」の存在も大きい。

 

引用元:「遊戯王」公式サイト

 

2016年にはこういった経緯を背景として、「遊戯王」や「デュエル・マスターズ」が好調であった。カンフル剤として新規タイトルに注力するのではなく、既存タイトルに対して、かつてのプレイヤーやコアプレイヤー等、大人向けの商品のリリースや大会イベントを開催するなど、戦略的なユーザーの取り込みを図った。この施策により、2014年度までに落ち込み続けた市場が2015年、2016年と続けて回復していく大きな要因となったのである。一度離れたユーザーを施策によって同タイトルでも取り戻すことが可能な点が、TCG市場を知る二つ目のポイントとなる。
ただし、この施策は結果として諸刃の剣となる結果も招いている。

(この項、引っ張って続く)