運動不足な現代人が、スポーツクラブに通って健康になろうというあざといストレートな健康法がある。だがしかしよく考えてほしい。我々は憑かれ…もとい疲れているのである。それなのに会社の帰りなどに運動に行って、さらに疲れて帰ってどうするのだという思いはないだろうか。筆者も含めナマケモノな現代人は、手っ取り早く健康的に疲労を回復したいのである。
前回はXビジネスらしくケンコバ的な直球の健康増進について考察した。本稿ではその反省(?)を踏まえて、健康的な疲労回復である「疲労回復ジム」について考察していく。

 

この記事の目次

  1. 鍛えるのではなく疲労回復?先発3社のプログラムとは…?
  2. 疲労回復プログラムが生まれた市場の背景とは?

 

1. 鍛えるのではなく疲労回復?先発3社のプログラムとは…?

「疲労回復ジム」と聞くと、相反する要素同士の言葉に聞こえるが、これがいまフィットネス・スポーツクラブの市場を席巻し始めている。事業者としては「ティップネス」「R-body project」「ZERO ZYM」の3社が先行してサービスを展開している。

「ティップネス 吉祥寺店」では、その施設のワンフロアを「回復」のためのエリアとしている。ちなみにこのエリアでは着替えをする必要すらない。そこで行われていたのは、まず来店時にその時点の疲労度を測定。その結果により、その日はトレーニングをするのか疲労回復を決めるのだ。トレーニングを選択した場合でも、コンディショニングを重視して、疲労回復を目的としたプログラム内容の実施となる。これによって「疲れた日にはジムに行かない」という層の足が同店に足繁く通うことになったのである。その疲労回復のプログラム内容は、ストレッチ機器の使用による体のほぐし、深部体温の冷却、自動整体機による整体(マッサージ)などである。この施策の結果、同社の吉祥寺店では、他の既存店よりと比較して、30~40代の来店比率が頻度と合わせて上昇しているとのことだ。

「ティップネス 吉祥寺店」
http://tip.tipness.co.jp/shop_info/SHP004/


フィットネスジム・スポーツクラブのなかで「コンディショニング」に特化した「R-body project」では、そのコンディショニングを前面に出して店舗を展開している。これは、体の疲労に対して適切な運動をすることで、筋肉のコリやゆがみを整え、さらにリンパと血管、そして神経までを整えることで体の不調を解消するというものである。コンディショニングはもともとプロアスリートへの処方術であったが、2016年に開催されたリオデジャネイロオリンピックの際に日本オリンピック委員会が日本代表選手に、アスリートの体調管理の教科書ともいえる「コンディショニングガイド」を配布したことからも、その言葉とともにフィットネス業界にも影響を及ぼした模様である。

「R-body project」
http://www.r-body.com/


疲労回復面の特徴がより顕著なのは2017年6月に開業した、新興勢力の「ZERO GYM」である。筋力トレーニングで体に負担を掛けたあと、マインドフルネスと呼ばれる「瞑想」で心身のリラックスを得るというプログラムを展開している。ちなみに「ZERO GYM」は男女別のプログラムとなっており、異性の視線を気にせずトレーニングに集中することができるとのことである。

「ZERO ZYM」
http://zerogym.jp/

 

 

【先発3社の疲労回復プログラムと料金比較】

 

上の表は、今回取り上げた「疲労回復プログラム」先発3社のサービスを一覧にしたものである。ティップネスは2017年12月現在で、疲労回復プログラムを施行しているのは吉祥寺店だけであるが、2018年以降に他の店舗も同プログラムの機能を持つものに随時刷新していく予定である。
R-body projectとZERO GYMは、ジム全体として疲労回復プログラムを実施しており、会員になると同時に疲労回復プログラムを受けることができる。

 

 

2.疲労回復プログラムが生まれた市場の背景とは?

「疲労回復ジム」の大元である、フィットネスクラブやスポーツクラブ全体の市場はどうなっているのだろうか。矢野経済研究所の「2018 サービス産業白書」によると、2016年のフィットネスクラブの市場規模は前年比2.1%増の4,480億円となっており、伸び率は鈍化しているものの、前年に引き続き市場規模は拡大している。

 

【フィットネスクラブの市場規模】

引用元:矢野経済研究所刊「2018サービス産業白書」

 

2016年以降の市場動向を見てみると、女性専用小規模サーキットジムの出店ペースは以前より鈍化しているものの、依然として多い。近年のトレンドとしては、24時間セルフ型ジムの出店も大きく増えている。また、ホットヨガ、ヨガ・ピラティススタジオ、マイクロジム、ブティックスタジオなどの新規出店が多く、異業種からの新規参入も多くみられた。
会員の高齢化が進むと同時にシニア層の利用率も伸びている。そのため、風呂やサウナなどの設備が人気であり、その充実が安定集客のポイントとなっている。

人気設備の傾向としては、こういったスタンダードな既存のスタンダードなもののほか、昨今では「ブティックスタジオ」内にナイトクラブ感覚でDJを置いたり、暗い照明の下でランニングするなどのクラブ的な要素を加味した施設が増えてきていた。また、プロジェクションマッピングやデジタルサイネージなどを駆使したライティング設備を導入することで差別化を図るケースもみられるようになってきていた。

 

こういった「イロモノ」が業界を席巻するなかで、その反動なのか、基本を押さえた「原点回帰プラスα」ともいうべきサービス形態が登場してきている。
セントラルスポーツでは、心拍数を測る集団レッスンプログラム「Xフィット パルス」を提供しており、時間も30分と短く、会社帰りの若年層を中心に人気が高まっている。これは最大心拍数の90%を超えることを目標としてプログラムで、この数値を超えるとスクリーンの数値が赤色に変わるもの。この際に器具は使わずに手足のみで激しい動きを続けるというトレーニングであり、ジタバタしようとダンスをしようとその動きは自由である。心拍数の上昇とともに次第にスクリーンが赤一色に染まっていく様子は、参加者のトランス状態高揚感を誘うという。
パーソナルジムの「THE BODY RIDE」では、VR(バーチャルリアリティ)を用いたトレーニングを導入している。ヘッドマウントディスプレーをして10分程度、仮想空間で剣と魔法の・・・ではなく、仮想空間で空中飛行をするというものである。単なる体感ゲームではなく、目的は体幹を鍛えることにあり、腹筋などに力を入れてバランスをとるために、トレーニング後半には筋肉が震えるほどになる。ポイントを押さえたトレーニングがゲーム感覚でできるとあって、特に男性客から好評である。

こういった「疲れていても行ける」というイロモノ的なツボを押さえたうえで、フィットネスクラブの「体を疲れにくく健康にするという原点回帰プラスα」ともいうべきサービス形態が昇華したものが、新ビジネスモデル「疲労回復ジム」として、いま市場を席捲しているのである。