菓子製造業[茨城県 ]
知識を有する外部人材を招聘、生産工程の数値化・計数管理を推進。適切な機械導入により生産性向上を実現
従業者の状況
生産関連の状況
[メンテを含む]
担当者
整備選任
担当:
!生産性向上におけるPoint
- 自社の工場の“あるべき姿”を明確化できる人材の確保。生産性の変動をデータとして把握し、統計的に分析し、改善点を発見し、実際に行うべきアクションを考えて指示できる人材の採用・育成・招聘
- 原材料や資材の原価、生産数量、コストなど、生産に関わる様々な要素の数値化と目標設定、設定した目標の従業員との共有、目標に対する具体的なアクションを設定
- 自社の生産品目、生産工程に合わせた生産機器、ライン等をカスタマイズ
事業承継を契機に外部人材を招聘。不採算商品を見直し、どら焼き生産への集中化から着手
直営での小売りを含めた和菓子屋業態を中心に事業展開し、多種多様な商品を製造販売していたが、採算に合わない商品もあった。2019年に事業承継を行った際、新たに外部から副社長を招聘し、生産現場の改革に着手した。まずは不採算商品を整理する中で、採算性の高いどら焼きを主力として集約した。経営課題は、①原材料費・人件費・物流費の上昇への対策、②人材の育成・確保、③販路の拡大・開拓であるが、製造業として①を最優先事項として改革を遂行している。
計数管理、目標値の設定により既存ラインで生産性向上を実現
生産性向上の取組を開始するにあたり、まずは会社のPL(損益計算書)と工場の生産実績(原料や資材などの使用量・価格)のデータを一致させることに取り組んだ。商品原価と生産量などを元に原価計算を行い、理論上のデータと実際の製造データとのギャップを埋める努力を継続した結果、2ヶ月でギャップが2%に縮小した。また、どら焼きの生産については、約3万個/日の生産を行っていたが、検証の結果、約4万個/日の生産能力があると判断した。さらに、原価管理とともに工場での適切な人員数についても精査し、人員数48名を25名にまで削減した。
人員削減直後に約4万個/日の受注を請け、当初は製造終了までに23時までかかったものの、理論上では20時に生産終了できることを製造現場と認識を共有し、半年後には、想定時間内にて目標数量を生産することが可能になった。なお、この時点では新たな製造機器は導入しておらず、既存の製造ラインにおいて生産性向上を図ることに成功した。
自社の生産実態に合わせたカスタマイズによる機械化により前工程の生産性向上、作業負担軽減を実現
2024年、どら焼きの皮の原料である小麦粉や砂糖などの原料を攪拌するミキサーを機械メーカーと協働で開発・導入し、人力で撹拌機に原料を投入していた負担を軽減した。原料を液状化するスラリー成型機から焼成機への運搬作業については、人力からカート及びレールの設置によるライン化により負担を軽減するなどの取組を行っている。このライン化の取組に関しては、当初、自社での機器導入実績がある機械メーカーに相談し、提案を受けたものの、実際の生産工程に適したものではなかったことから、この事業者とは別のカスタマイズや中古品の加工に強みを有する機械メーカーに委託し、自社の製造工程に適したラインを実現した。具体的には、全てを自動化するのではなく、一定の人手を残し、ラインに異常が生じた場合の微調整を人手で実施することで迅速な製造回復を実現した。
ミキサーのカスタマイズとスラリー運搬のライン化により、どら焼きの生産個数が約120個/時から、取り組み開始後約3か月後には、製造能力の最大個数である約170個/時にまで向上した。さらに、スタッフの作業負荷の軽減、また、改善効果により生まれた収益を従業員に還元することで、従業員の定着率向上にも寄与している。さらに、自社の現状と今後の目標・方針を全従業員に適切に伝えることができるようになったことは、従業員の安心感・信頼感の醸成にもつながっていると考えている。

後工程のロボット化により更なる生産性工業、作業者負担の軽減を目指す
スラリー工程の改善が当初の計画通りに成功したことから、今後は他の工程での改善による生産性向上を目指す。具体的には、前工程での改善に成功したことから、次は段ボール詰めなどの包装(後工程)をロボット化することを計画している。前後工程を改善することで、一層の生産性向上を図りたいとしている。


