元リクルートで最優秀営業賞を授与された経験を持つ敏腕営業ウーマンだった武川しのぶさんが代表を務める全く新しい旅行会社が「世界仮想旅行社」である。UNWTO（国連世界観光機関）によると、2020年上半期の世界の旅行者数は、前年同期比でマイナス65.3％、2020年1月から6月の半年で、世界の旅行者数は4億4000万人減少し、国際観光収入は4600億ドル（約48兆5700億円）の損失となった。これは2005年の世界金融危機の5倍以上の損失だという。ギリシャで生まれ育った武川さんは、この有事にあっても、サントリーニ島やプラカの美しい町並み散策を楽しんで頂く方法はないかと考えた。ギリシャ生まれ、国際基督教大学出身の武川さんは持ち前のグローバルな人脈を駆使し、世界各地に点在する友人、知人をネットワーク、彼、彼女に現地の素晴らしさをオンラインで紹介、時にライブでツアーガイドを務めてもらい、コロナ禍にあっても世界旅行が可能なインターラクティブプラットフォームを構築した。今日はギリシャ、来週はモロッコ・・・ツアーが開催される度に多くの仮想旅行客がプラットフォームに押し寄せる。2019年のレベルに戻るには2年半（2023年半ば）から4年（2024年末）かかると予想される観光業界だが、武川さんの試みは有事における旅行の「オンライン代替案」に留まらず、潜在的旅行客からの絶大な信頼獲得、さらなる海外旅行の需要喚起、なによりデータベース（潜在顧客データベースと、きめ細やかな海外旅行・観光ニーズ）を握ることになる。観光業界が戻る頃にはとてもつもないアドバンテージを得られそうだ。リアルでしか体験できないと思われていた旅行にオンラインをかけ合わせ（X)、新たな「旅行の形」を模索する武川さんの試みはまさに「X」と言える。有事であるからこそ生まれたイノベーションとビジネスチャンス、その構想力と実行力を称賛したい。