漫画市場の定義
漫画単行本(コミックス)と漫画雑誌(コミック雑誌)の売上高を漫画市場の市場規模とする。電子コミックについても本項にて言及する。
漫画市場の客層
2016年9月に矢野経済研究所が実施した消費者アンケートより、「漫画オタク」を自認する消費者は日本国内に約680万人と推計。年代は19歳以下:16.7%、20代:35.4%、30代:23.9%、40代:14.9%、50代:7.2%、60代:1.9%と、20代が市場を牽引。男女比は男性:女性=54.3%:45.7%と、ほぼ半々。また、今年度より新たに調査項目として加えたオタク歴については「20年以上」が46.5%を占め、「10年以上」では77.0%に上る。平均は18.5年で、測定20ジャンル中最大値を示した。
漫画市場の客単価
「漫画オタク」を自認する層が「漫画」にかける金額(雑誌、単行本、関連グッズ全般)は平均で年間16,370円。「1万~5万円未満」が最も多く、次いで「1~5千円未満」。「0円」は少なく、測定20ジャンルの中で唯一10%を下回る。
漫画市場の構造
本市場は、漫画雑誌を安価で販売し、漫画雑誌に掲載した作品の中から、相当数の売上が見込める作品を選んで単行本化し、単行本で利益を回収するという収益構造になっていることが多い。
漫画雑誌は収益源ではなく単行本化する漫画のプロモーションツールとしての役割が大きいことから、無料もしくは極めて安価な電子コミック雑誌や、電子コミックを閲覧できる無料サイトを提供し、人気作を紙ベースで単行本化するというビジネスモデルを採る事業者も存在する。
当該市場は、紙媒体のみに注目すると、シュリンクが続く市場であるが、電子媒体においてはスマートデバイスの普及とともに大きく拡大している。電子媒体でもコミック誌とコミックスに分類されるものの、市場規模はコミックスが大多数を占めコミック誌は非常に規模が小さい。2015年度の電子コミック市場規模は1,150億円だが、その内訳は1,125億円がコミックスであり、残り25億円がコミック誌となっている。矢野経済研究所では2018年度には紙媒体の漫画(コミック)と電子媒体の漫画(コミック)の市場規模は同規模となるものと予測している。
漫画市場の市場規模
公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所が毎年公表している「コミックス・コミック誌推定販売金額」によると、2015年は「コミック誌」が前年比11.2%減の1,166億円、「コミッククス」が同6.8%減の2,102億円、合計で同8.4%減の3,268億円であった。
「コミック誌」は、1995年のピーク以降20年連続の減少を記録した上、減少幅も10%超と大幅な落ち込みを示した。
「コミックス」は、2013年に大ヒットを記録した「進撃の巨人」(㈱講談社)、2014年には映像化された作品が出現したことによって、拡大したが、2015年には「キングダム」(集英社)等ヒット作品は存在したが、市場全体を牽引するまでには至らずマイナス成長となった。
矢野経済研究所が2016年7月に発刊した「2016年版出版社経営総鑑」によると、2015年度の電子コミックの市場規模は、前年度比27.8%増の1,150億円と推定された(2014年度の市場規模に関しては見直しを行っている)。電子書籍の本格的な普及が始まった現段階においても、電子書籍市場はコミックの比率が高い。フィーチャーフォンの時代からアダルト系やBL系等を中心に電子書籍が広がった経緯もある。現在では大手出版社のメジャータイトルもラインナップされ、一般の読者層にも広がっている。
紙ベースよりも安価なことや、特にスマートデバイス向けコンテンツについては場所を選ばず手軽に読めること等が市場拡大の要因となってものと推察される。スマートデバイスの普及率が急速に拡大し、電子コミックを提供する各事業者もこうした端末への対応を進めていることから、今後もスマートデバイス向けコンテンツを中心に拡大が続くと予測される。
2016年度に関しても引き続き市場は拡大傾向にあると推測されることから、同30.4%増の1,500億円になるものと予測する。
本稿の詳細データについては、下記調査レポートよりご入手いただけます。