ビジネス「壁打ち」って?

最近、ビジネス界隈では「壁打ち」なる、行為が流行っているようでして、「壁打ち」に関する研究やら著作が多数、世に出ているようです。学生の頃、暗い性格だった筆者は、一応、テニス部に所属しておりましたが、テニスコートで楽しくパートナーと練習したり、試合したりするのが苦手で、でかい公園にある「壁打ち練習場」なる場所で、黙々とテニスの「壁打ち」をしておりました。

で、「壁打ち」で、テニスがうまくなったか、というと、逆に下手になったような感覚でして、だいたい、壁から跳ね返ったボールと、人が打ち返してきたボールは、まったく異質で、いざ人と対戦すると、あっさり、打ち返せず、速攻、ぼろ負けする訳です。

ということで、ビジネスで、壁打ちって、どんな感じで、どんなものなのでしょうか??テニスの時のように、壁打ちしてたら、ビジネスも下手になってしまわないのでしょうか??

「ビジネス 壁打ち」でネット検索しますと、ビジネスにおける壁打ちは色々な定義があるようでして、まあ、概ね「自身の考えやアイデアを他者に話すことで、フィードバックを得て考えを整理するプロセス」という意味だそうです。「考えを整理する」ところまでが壁打ちの範囲らしく、相談にのってもらったり、課題を解決したりするのは、壁打ちの次の段階とのことです。成程、テニスでいうと、やはり、公園の片隅での練習のようなもので、実際、試合でスマッシュやボレーで格好よくポイントをゲットしたり(ビジネスでは新規事業を立ち上げて華々しく会社で活躍する、みたいな)、ということではないのですね。

 

考えずに感じたり、行動したり・・・できまへん

「考えを整理する」ことは、まあ、本当に大事なことですよね。もやもやとした気持ちで、仕事しても、ロクな結果にならないのは、皆さん、経験済ですよね。でも、「ちょっと考えさせて」って、時間貰っても、ちっとも考えを整理できない、それどころか、半端に余計なことを考えたりしてしまい、もっとロクなことにならないこともありますよね。ということで、私を含め、多くの人が、ついつい、考えを整理することどころか、考えることすら放棄してしまい、「考えるな、感じろ」「考えるより先に行動だ」みたいな、すげえ格好良さげな概念に踊らされて、更に更にロクでもないことをやらかしてしまう訳です。感じたり、行動したり、一部の天才にしかできないことを、なんでみんなやっちゃうんすかね??やれそうに思えちゃうからやっちゃうんすよね・・。

「壁打ち」は「言語学」です

感覚とか行動の前に、言葉って大事なんですよね。言葉として考えを発話することで、初めて自分の考えや認識、世界観を確認できるんす。言語学でいうところの「サピア=ウォーフ仮説」ってやつでして、言葉が人間の認識を規定する、のです。(詳しくはご自分で検索ねがいます~)。日本語の話者は、tunaという魚を部位によっては「赤身」「トロ」「大トロ」等と違う言葉で、異なるものとして認識しますが、あんま魚を食わない英語話者は「tuna」は頭からしっぽまで「tuna」です。マグロをぼんやり認識しているのと、味の濃さ、部位、市場価格を認識して、言葉として「赤身」「トロ」「大トロ」を語るのでは、同じものを見ていても、全く違う世界を認識している訳です。

ビジネス壁打ちでは、まず、自分が認識している「言葉」をどんどん、壁(話相手、または自分自身)に向かって発話してゆくことがメインになるそうです。

発せられた言葉に対して、相手が、または自分自身が反応することで、言葉の認識が深まり、「tuna」が「赤身」「トロ」「大トロ」という一段深い認識になり、それらの価値について、「考えが整理」された状態になるのです。

ということで「壁打ち」はある種の「言語学」ではないでしょうか?

 

PS:

スナックヤノケイという催しでその辺のことを語りますので、お越しくださいませ。

                                      矢野経済研究所

                                       松島勝人