鉄道模型市場の定義

鉄道車両を一定の縮尺・軌間(鉄道線路を構成する2本のレールの内側の幅)で再現した模型を指す。

本項では、車両のほかジオラマ・レール・動力ユニットを含めた市場規模と、車両のみの市場規模の両方を算出している。

尚、オークションや中古品店等による二次流通や、自作によるもの、「プラレール」(タカラトミー)等「玩具」の要素が強く子供をメインターゲットとした商品は除外している。

鉄道模型市場の客層

2016年9月に矢野経済研究所が実施した消費者アンケートより、「鉄道模型オタク」を自認する消費者は日本国内に約67万人存在すると推計された。前年調査結果より約19万人減となり、前々年とほぼ同数という結果となった。

年代別の集計結果では、15~19歳:11.7%、20代:24.8%、30代:10.4%、40代:20.8%、50代:11.7%、60代:20.8%と、20代が4.9ポイント拡大し、従来最も多かった40代を超える構成比となった。大手事業者を中心に新規ファンの取り込みに注力した結果、若年層の参入も少しずつ増えている模様である。

男女比は男性:女性=84.4%:15.6%となっており、若干女性の構成比が伸びたが、依然として男性の比率が極めて高いと推定される。

また、今年度より新たに調査項目として加えたオタク歴は、「1年未満」と「30年以上」が多く、初心者とベテランに2極分化される結果となった。平均は11.8年であった。

鉄道模型市場の客単価

消費者アンケートより、「鉄道模型オタク」を自認する層が鉄道模型にかける金額は平均で年間25,891円という結果となった。また、金額別構成は、年間消費金額「0円」が45.5%と半数近くにのぼり、次いで「1万~5万円未満」が23.4%となった。

鉄道模型市場の構造

鉄道模型には、ゲージと呼ばれる軌間(鉄道線路を構成する2本のレールの内側の幅)の広さに応じてさまざまな規格が存在する。ディスプレイ専用など一部の特殊なものを除き、車両スケールとゲージを揃えた規格を業界内で共有し、その規格による製品であればメーカーを問わず線路や電源装置を共有できるようになっている。

日本で愛好されている主なものとしては、軌間の広い順に1番ゲージ(45mm)、Oゲージ(32mm)、HOゲージ(16.5mm)、Nゲージ(9mm)、Zゲージ(6.5mm)が挙げられる。

日本ではNゲージが最もポピュラーで、鉄道模型市場全体の約75%を占めている。次いでHOゲージ約15%を占め、その他のゲージが残り数%となっている。その他のゲージとしては、テーブルサイズで楽しめるコンパクトさからZゲージを愛好する層や、逆に鉄道車両のディテールが再現されやすく迫力が出ることから、1番ゲージやOゲージ等大型のものを好む層も、少数ではあるものの根強く存在している。

参入事業者は、海外メーカー、個人事業者や同人サークルに近い事業者まで含めると、50社以上の事業者が存在すると推定される。当該市場は「KATO」ブランドを展開する㈱関水金属と「TOMIX」ブランドを展開する㈱トミーテックが2大メーカーとなっており、この2社で約75%を占める。その他、㈱マイクロエース、㈱グリーンマックス、「MODEMO」ブランドを展開する㈱ハセガワ、「Bトレインショーティー」を製造する㈱バンダイ、「DDF」ブランドを展開する㈱ディディエフ、HOゲージを主力とする㈱カツミ、2012年より鉄道模型店から完成品メーカーに参入した「ポポンデッタ」などが挙げられる。

鉄道模型市場のトレンド、トピックス

●在庫品を充実させ、新規ユーザーの定着化を図る

ここ数年は、在庫製品の安定供給が新規ユーザーの取り込みにも繋がっている。これまでは、マニア層向けに発売前の予約販売で出来るだけ売り切る施策をとっていたが、在庫製品の安定供給により、発売翌月以降も新製品が店頭に並ぶケースが増えたため、新規ユーザーも店頭に足を運び、じっくりと製品選びを出来るようになっている。

特に、新規ユーザーが従来のコレクションを中心とした購入から走行遊びにまでステップアップし、バランスよく楽しむ人が増えてきているため、在庫製品の充実度が重要視されている。また、新製品の追加受注においても、ここ数年市場における新製品の投入ペースが落ち着いてきたこともあり、既存ユーザーは一番欲しい製品に絞り込んで予約購入した後、店頭で製品を見てから購入を決める傾向が高くなっている。そのため、新製品のリニューアルだけでなく、定番商品も随時リニューアルし、動力ユニットの改良やライト類、別パーツの採用を拡大するなど、模型技術の進歩を反映させているとともに、製品化を発表した後もサンプルをHPで公開するなど、さらなる情報提供や需要喚起を行い販売量の増加を測っている。

●大手2社が周年事業を展開

2015年から2016年にかけて、㈱関水金属と㈱トミーテックの大手2社がそれぞれ周年事業を展開している。

関水金属は、同社が1965年に日本最初のNゲージ製品を発売してから50年目にあたることを記念し、Nゲージ生誕50周年記念製品を発売した。第1弾としては、2015年12月に「京急デハ268アッセンブリー・キット(税込3,600円)」を発売、2016年には、第2弾として「C50 KATO Nゲージ50周年記念製品(税込14,800円)」を発売した。C50 KATO Nゲージ50周年記念製品は、同社が最初に発売したNゲージ模型「C50」蒸気機関車を最新技術によって新規に製作しており、その進化の過程を紹介するDVDと特別小冊子も付属した愛蔵版となっている。

トミーテックは、2016年にトミックスブランドが誕生し40周年を迎えたことを記念し、記念車両の製品化とともに、動き・音・光をシステムまで含めたトミックスブランドの源泉となっている先進性を改めて深耕している。車両では、第1弾として、かつてトミックスの前身ブランド「トミーナインスケール」で発売した「国鉄 DD13-300形ディーゼル機関車(一般型)」と「国鉄 DD13-600形ディーゼル機関車(寒地型)」(ともに税抜6,800円)を発売するほか、2016年9月に限定品としてトミックス40周年記念カラーの「マルチレールクリーニングカー(税抜5,000円)」を発売した。また、第2弾として「小田急ロマンスカー50000形VSE(基本セット税抜54,000円)」、2017年には、第3弾として真岡鐵道の「C11形蒸気機関車(325号機)(税抜14,800円)」「50系客車(赤帯)セット(税抜7,200円)」と、人気アニメ「エヴァンゲリオン」のラッピング車両「JR 500-7000系山陽新幹線(500 TYPE EVA)セット(税抜35,000円)」を発売する。

鉄道模型市場規模

2015年度における鉄道模型市場の市場規模(国内出荷額ベース、車両のほかジオラマ・レール・動力ユニット等周辺商品を含む)は、前期比103.3%の95億円になると推計される。また、車両模型のみの市場規模においては、同104.2の75億円になると推計され、鉄道模型全体の78.9%となった。

当該市場は、先述したように「KATO」ブランドを展開する㈱関水金属と「TOMIX」ブランドを展開する㈱トミーテックが2大メーカーとなっており、上位2社で7割以上を占めている。

2015年度は、寝台特急「トワイライトエクスプレス」「北斗星」の運行終了や、「北陸新幹線」「北海道新幹線」の開通などといった話題性に連動した新製品の販売が好調に推移したほか、各社が定番製品のリニューアル、車両や下回り品、ストラクチャーなどの在庫品を充実させていることにより、新規ユーザーからコアなユーザーまで幅広い層の需要を取り込み市場成長につながった。

また、業界3番手であるマイクロエースの製品が、生産性回復によって出荷状況が正常に戻ったこともプラス成長に寄与した。

 2016年度においては、2015年度よりも話題性は落ち着くと見られているが、定番製品のリニューアルや在庫品の充実を図ることにより、前年度比101.1%の96億円と安定して推移するものと予測する。

本稿の詳細データについては、下記調査レポートよりご入手いただけます。

クールジャパンマーケット/オタク市場の徹底研究