ADHD、アスペルガー、コミュ障(コミュニケーション障害)などの言葉を聞いたことのある人も多いと思う。これらは「発達障害」という病気として区分されているが、現代社会においては、診断・認定を受けるまでいかなくとも、その気質や傾向のある人が増加しており、その症状に悩み、就労に苦労をしている人が少なくない。
これらの症状の対象者への支援は、社会福祉としてほぼ行政のみが行っていた。そこに支援の段階から参入した民間企業があるのだ。本稿では、その企業と「市場」の背景について考察していく。

  1. 就労環境と発達障害の関係
  2. 発達障害のある人が増えた「理由」とは
  3. その会社、「Kaien」
  4. Kaien、「ザ・ビジョナリー」に出てます

1.就労環境と発達障害の関係

改めて言うまでもなく、現代はストレスフルな社会である。ブラック企業という言葉も認知されて久しい。長時間労働やパワハラが横行する劣悪な就労環境でなくとも、ADHD、アスペルガーを発症するケースも多々ある。これらは企業においては雇用・就労の問題であり、ひいてはビジネス上の問題となっている。なぜ「ビジネス上の問題」なのか。それは発達障害認定者と健常者の境界線上にある対象者が増加しているからである。発達障害者ではないが、就労時におけるコミュニケーション能力、ソーシャルスキル等の欠如の傾向がみられる「中間層」の存在があり、これが今まで企業内で放置されていたのである。
昨今では、これらの傾向を持つ社員の生産性を見直すため、エンペロイアビリティ、雇用される能力を企業が見直し始めている。「ややソーシャルスキルが足りない人材」をもはや放置している余裕はなくなっているのである。

この状況を「障害」「非障害」と捉えた場合、障害と非障害の区分・境界は曖昧である。ブラック企業に限らず、そもそもの従業員の性格的傾向により就業が困難になる場合もあるのだ。
業務を遂行するための高い能力はあるのに、コミュニケーションがとれなくて職を転々とする人もいる。そして本人だけではなく、企業側も受け入れの教育を実施しなければならないのであるが、どう対応していいかわからないのである。
個人も企業も対応策を求めている。ハラスメント防止の研修等も含めて、その需要は高まっており、開拓途上のブルーオーシャンな「市場」が存在しているのである。

2.発達障害のある人が増えた「理由」とは

発達障害、もしくはその傾向がある人は、確かに増えている。それは現代のストレス社会という大局的な視点からも容易に想像できる。実際、発達障害者数の患者数の統計を見てみても、明らかに増加の一途を辿っている。

診療実績の各指標値

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神医療政策研究部「精神保健福祉資料」平成26~28年データから作成

こういった「社会現象」とともに、テレビや書籍などで発達障害についての情報が発信されるようになり、それとともに症状を自覚する人が増加しているのだ。その要因のひとつとして、2015年(平成27年)から施行が始まった、 企業においてのストレスチェックの義務化 がある。これは、受診者である従業員が質問に答えていくことで、業務上の心身の負担を数値化して把握するものである。このチェックが、従業員50人以上の企業に実施が義務付けられている。これにより、高ストレスと判断された対象者が、会社の斡旋でカウンセラーとの面談を受けて「自分も発達障害かもしれない」と気付くのである。
逆に言えば、このストレスチェックの義務化以前は「症状を自覚する機会がなかった」だけで、潜在的対象者は数多く存在していたともいえる。
この面談においてカウンセラーは「あなたは発達障害です」と診断することはできない。診断はあくまでも医師によって行われる。いずれにしろ、診断の有無にかかわらず患者の治療に必要なのは「自覚と対策」であり、診断・認定までいかなくとも、対象者は増加している(していく)のである。

上のグラフで「20歳未満の精神疾患外来患者数」を併記しているが、これは、就労年齢に満たない児童生徒や学生のうちから精神疾患の土壌が既にあることを示唆している。会社のストレスチェックで症状を自覚したことで「患者になってしまう」とは安易に言えないのだ。
そして、発達障害者の就労支援はこれまで行政が福祉として行なってきた。民間の人材紹介企業では、そのままでは企業に採用されにくい人材を扱うことは、利益に結び付かないからである。

3. その会社、「Kaien」

この「市場」に参入して成果・業績を上げている企業がある。発達障害を持つ人材の就労を支援し、定着化、戦力化する、民間の人材紹介・人事コンサルティング事業者、株式会社Kaienである。就労者の「弱み」を「強み」に変えて、民間企業であるから「福祉」の視点ではなく、企業組織に貢献する人材を供給していく「資本主義」視点で事業を展開し、発達障害者の就労に実績を持っている。

画像は 「Kaien」ームページ から引用

Kaienは当初、一般の人材紹介会社として事業を展開していた。発達障害者向けのビジネスモデルも、実は一般の人材紹介会社と基本は変わらない。同社の事業内容に、発達障害者に合わせた特別な管理法やコミュニケーション法があるわけではない。就労希望者への人材教育とともに、「だれにでも有難い、わかりやすい管理法・伝達方法」を企業に理解してもらうことを是としているのだ。その根底には「良い従業員管理法は、従業員の発達障害の有無に関係なく、『良い」方法」であるという信念がある。受け入れ側の企業に対してもコンサルティングを行ない、定着を支援するということを民間の事業者として実施しているのである。

  • 福祉や教育ではなく、資本主義にのっとって、人材を戦力化し、売り上げを上げていく視点を持っている
  • 発達障害の従業員の有無にかかわらず、よいコミュニケーションをとれる会社はいい会社である。ユニバーサル(利用する人を年齢、性別、障害の有無など、さまざまな理由で特別扱いしない)な管理方法を提供している
  • どんな会社でも、どんな属性でも、どんな性格でも関係なし。自閉症、多動症なども関係ない。傾向に関係なく、誰にでも適用できる
  • スキル向上は発達障害の有無にかかわらず誰もがやらなければならないこ

Kaienはこれらのノウハウを、発達障害者の「市場」に参入する前から実施していたのである。

4. Kaien、「ザ・ビジョナリー」に出てます

この資本主義かつ公益な人材企業「Kaien」について、毎度お馴染みのテレビ番組「ザ・ビジョナリー ~異才の花押~」で紹介している。放送日は10月16日火曜日、東京MXTVで19:58~20:27の時間帯である。番組放送後にWeb上での視聴も順次可能となる。番組中の「Xビジネスコーナー」で、Xビジネス的な視点から考察・紹介しているので、ぜひ本稿と合わせて視聴してもらいたい。

関連資料:

2018年版 パーソナルヘルスケアサービス市場の現状と展望
https://www.yano.co.jp/market_reports/C60103000

2018 企業向け研修サービス市場の実態と展望
https://www.yano.co.jp/market_reports/C60105100

関連リンク:

ザ・ビジョナリー~異才の花押~
https://s.mxtv.jp/variety/visionary/