腐女子。婦女子ではない。いや女子は女子なのだが、文字が表す通り
腐っている
のである。こう書くと、いくら普段フザけているXビジネスのコラムといえど、該当する女子の皆様から苦情の電話やメールが山のように来ると思われるのだが、実際にはそうではないのだ。腐女子の呼称は「あんた腐ってるわよ」ではなく、該当する婦女子の皆様の「自称」なのである。そしてこの属性の方々に言わせると「不治の病♪」なのだそうである。
今回Xビジネスでは、この「腐女子」を対象にしたビジネスを斬ってみることにした。斬り口から何がただれ出てくるのか責任はとらない。
1.気が付いたら腐女子になっていた
2.腐女子が買うモノ、楽しむモノの扱われ方の一例
3.腐女子ビジネスを極めた、その企業「株式会社リブレ」
4.腐女子ビジネス、「ザ・ビジョナリー」に出てます
1.気が付いたら腐女子になっていた
何がどう「腐」なのか。カッコイイ男性にあこがれるのは世の婦女子の常なのであるが、そこに「男性×男性」というカラミの概念が加わると、とたんに「腐」になる。この掛け算の順番には意味があり、「A×B」ではAが攻め、Bが受けとなる。具体的にはAがBを襲う立場であり、Bは襲われるのである。もともとは「挿すか挿されるか」を示す腐女子の隠語からきている。作品中にかっこいい男性キャラが複数登場すると、とたんに彼らはこの計算式のなかに放り込まれることになる。
また、腐女子の呼称はそのレベル(漬かり具合)によってランクアップしていくらしい。
腐女子(ふじょし)→ 腐人(ふじん)→ 貴腐人(きふじん) → 汚超腐人(おちょうふじん)→ 超々腐人(ちょうちょふじん)
というように、どこかで聞いたような名称がその呼称となっている。近年では、腐っていることにかわりはなく一緒くたに「腐女子」の呼称で統一されることが多い。
婦女子の特性としては、その敷居の低さと、(開き直った)明るさ、社交性がある。前述したが、カッコイイ男性にあこがれるのは世の婦女子の常であり、そこに「攻め・受け」の妄想を膨らませることは腐女子にとって容易である。そしてその要素を自虐的に自称しており、同好の志と共感・共有することで妄想的幸福度が増幅する特性があるのだ。この「共感・共有」が男性向けエロと異なる点であり、腐女子ビジネスを語るには外せない根底の属性となっている。
腐女子への敷居は低い。ただし、「腐」趣味は女性全体のなかでは、あくまでマイノリティな嗜好であることも忘れてはならない。
2.腐女子が買うモノ、楽しむモノの扱われ方の一例
東京都をはじめ、地方自治体の「青少年・治安対策本部」では、毎月”不健全図書”を挙げ、自主規制団体らと共に審議を行っている。簡単にいうと、「この本はエロ本だから公立図書館には置いてやらない、コンビニには置かせない」等を決めているのである。この審議結果は毎月公表されている。一例として「東京都青少年・治安対策本部」でも、毎月まじめな顔をして「この本はエロ本かどうか」の審議が行われているのである。
東京都青少年健全育成審議会 会議資料議事録 平成30年度
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/singi/kenzensin/694-menu/index.html
審査結果は毎回公表されるものの、審査途中で異議申し立てが通ったり、審査結果が覆ることは、ほぼ皆無である。上記リンクを漁っていくと、「条例の適用状況:不健全図書類」の項目とPDFファイルのリンクがある。平成30年8月6日付の資料をみると、
「指定番号4266 ビーボーイコミックス デラックス セックスフレンド 株式会社リブレ 東京都告示第377号 平成30年3月16日」
と、まるで犯罪者のごとく扱われている様子がわかる。同タイトルのファンとしては面白くないのが当然・・・と思われるだろうが、ここが腐女子の腐女子たるところ、お気に入りのタイトルの不健全図書への指定をみて「やったぁ!」「やっぱりねー」などと同好の志と大喜びするのである(筆者友人腐女子証言)。こうなってくると、ン十年前の不良生徒が万引きやチャリパクで補導されるとハクが付いていたというアレと同じ世界の様相を呈している。
腐女子のエロはただれている。だが、腐女子同士で共感して楽しめるものであり、どこか明るいのである。
3.腐女子ビジネスを極めた、その企業「株式会社リブレ」
どんな会社かの判別は、その経営理念を紐解くことがヒントになる。同社の理念は「世界中の女性に夢と希望と癒しを届けたい」となっている。つまり男性のことはどうでもいいのである。さらに「作品をお客様に届けるツール・メディアがどんどん変化する現在、求められる事も多様化しています。そんな中、私たちは世界中の女性のあらゆる想いに応える事が叶うよう、日々進化し続けます。」と謳う。つまり手を変え品を変え、腐女子のただれた欲望を満たし続けていくという決意なのである。
そんな数々の想いの化身が株式会社リブレである。その事業内容はこうなっている。
画像は「リブレ」Webサイトより引用
コンテンツビジネスの方程式としては、ごくまっとうな事業展開内容である。BLをテーマに多数のメディア展開をしているのだが、なかでも前述した腐女子の特性を捉えた企画を展開しているところにその特徴がある。
BL作品をテーマに一泊二日のバスツアーが敢行されたといったら信じられるだろうか。同社から「抱かれたい男1位に脅されています。」というBL作品が刊行されているのだが、このツアーは同作品がテーマとなっているのである。「東谷准太・西條高人とゆく温泉旅館1泊2日バスツアーの旅」と題されたこのバスツアーでは、描き下ろしイラストとマンガを収録した「ツアーしおり」が特典として配布された。また、体験施設でのオリジナルグッズ作りや、フルーツ農園でのさくらんぼ狩りなども実施。極めつけは、主人公キャラの録りおろし音声によるドラマ(内容は想像してほしい。。)をバス車内で流すなど、同作品に魂を捧げた腐女子を十分に満足させるものであった。男性向け作品で同様の社交的な交流イベントは考えにくい。
(企画会議はさぞ盛り上がったことであろうと。。)
4.腐女子ビジネス、「ザ・ビジョナリー」に出てます
この「腐女子ビジネス」について、毎度お馴染みのテレビ番組「ザ・ビジョナリー ~異才の花押~」で紹介している。放送日は8月21日火曜日であり、東京MXTVで19:58~20:27の時間帯だ。番組放送後にWeb上での視聴も可能となっている。番組中の「Xビジネスコーナー」で、Xビジネス的な視点から考察・紹介しているので、ぜひ本稿と合わせて視聴してもらいたい。
(依藤 慎司)
ザ・ビジョナリー~異才の花押~
http://the-visionary-project.com/
「Xビジネスコーナー」動画アーカイブ
https://xbusiness.jp/xbusiness/visionary
関連資料:
2017 クールジャパンマーケット/オタク市場の徹底研究
https://www.yano.co.jp/market_reports/C59113400
ヤノ・レポート2017年9月25日号
【注目市場動向】●ボーイズラブ市場
定義/客層/客単価/市場構造/主要事業者の動向
((株)リブレ、(株)新書館、(株)KADOKAWA、(株)ジュネット、(株)ビジュアルアーツ、(株)ニトロプラス、(株)ビデオプランニング)
トレンド・トピックス /「テンカウント」が大ヒット/市場規模
図.「ボーイズラブ(BL)オタク」歴
図.「ボーイズラブ(BL)オタク」の年間消費金額
図.ボーイズラブ市場規模推移
https://www.yano.co.jp/yanoreport/D59100295