前稿で、自販機で売っているヘンなものたちを散々紹介してきたが、本当にオムツから核兵器までなんでも入れて売り出していきそうな勢いである。だがひとつだけ売っていないものがある。それは「人間」。ところがその「人間」を売っている自販機が世に存在するのだ。

1.    自販機で売ってるヘンなモノたち(前稿)
2.    自動販売機市場の構造と市場規模が、これ(前稿)
3.    ここまできた!?出会い系自販機(本稿)
4.    その資料、「自販機ビジネスの現状と将来展望」(本稿)

3.   ここまできた!?出会い系自販機

その自販機があるのは台湾、そこで売っているのは、なんと「出会い系のお相手」なのである。お金を入れてボタンを押せば、ガシャンと出てくるイケメンや絶世の美女たち!

すばらしい。

だがしかし、さすがに販売機のなかに詰め込まれた人間が24時間冷蔵待機というわけにはいかない。実はこの自販機で売っているのは、肉体ではなく、厳密にいうと「ひとのデータ」なのだ。

この自販機の正式名称は「交友自販機」。日本の飲料水自販機とは趣きが異なり、透明なドアのコインロッカーの様相である。その中に、「交友を求める」実在の人物の写真がと小箱や袋などと一緒に設置されているのだ。購入者はその写真を見ながら妄想を膨らませて自販機にお金を突っ込むのである。ひとつの「商品」のお値段は日本円でおよそ2000円~となる。カオの自信の具合で値段が決まるのではなく、じつは写真についてくる小箱や袋などが「購入者へのプレゼント」の名目となっているのである。プレゼントのなかには帽子やアクセサリなどの小物と、お待ちかねの商品である写真の相手の連絡先の番号やメールアドレスが入っており、そこから先は通常の「出会い系サイト」と同様の展開となる。

自分の好みのお相手を自由に「買う」ことができるので、交際相手を探すのはもちろん、趣味の交友相手を探したり、同性の友人を目的とするなどの「幅広い交友」に対応している自販機となっているのである。

 

このような自販機が誕生した背景は容易に想像できる。ズバリ「サクラ避(よ)け」だ。台湾では出会い系の敷居が低いぶん、サクラや詐欺も多いとのことである。この自販機型式であれば、もし連絡先が架空の番号やアドレスだったとしても、最低限「プレゼントの小物」が手元に残る。出会い系アプリ(によるサクラや詐欺)全盛のなかでも「騙され感」が低いのであろう。

ちなみに設置場所は、台湾は台北にある「台湾師範大学」の近くの某書店である。場所柄というか、ニーズに応えたというか。。

4.   その資料、「自販機ビジネスの現状と将来展望」

出会い系のお相手とまではいかなくとも、日本でも自販機で販売されているものは多種にわたる。マーケティングの基本で「販売シチュエーションを変える」というのがあるが、前述の台湾の「交友自販機」がまさにそれである。自販機というインフラを使うことで、目新しさと同時に「出会い系の騙され感を下げる」という付加価値も生み出しているのだ。

あとは思考・発送の問題である。世の中にある森羅万象の商品を、なんでもかんでもとにかく自販機に突っ込んでみて売ってみたらどうなるか。さながら大喜利の世界であるが、ソフトバンクの孫社長が19歳のときに「音声付き電子翻訳機」にたどり着く発想法で用いたように、コンピューターの乱数、具体的にいうと現在ならエクセルの関数でも組み合わせは無限に作ることができる。
 

「これを自販機で販売したらこんな付加価値がついてブレイクする!」という商品を思いついたら、迷わずXビジネス開発室へご一報を!その熱い想いを受け止める体制はここに整っているのである。

ここ↓
「Xビジネス インキュベーション・プラットフォーム」
https://www.yano.co.jp/xbusiness/idea/index.php


(依藤 慎司)

 

自由な発想と同時に、まずは世の自販機市場のセオリーを知っておきたいところである。

関連資料:
2018年版 自販機ビジネスの現状と将来展望
https://www.yano.co.jp/market_reports/C59114100