誰もが一度は描いたことがあるだろう、似顔絵。もちろん、上手いヘタはあるのだが、そんなの自由に描けばいい。技能が高じてプロのイラストレーターや、よく観光地にいる似顔絵描きになるとしても、別に何の免許も要らない。上手ければそれでいいんだ、力さえあればいいんだ、ひねくれて(以下省略)

あくまでもアナログな技能と感覚的な評価。そんな似顔絵業界に、真面目に異端な、でもやっぱり真面目な存在が君臨している。それが「日本似顔絵検定」と、それを実施している「特定非営利活動法人日本似顔絵検定協会」という、ものものしい名称の団体なのである。Xビジネスでは今回、この謎の検定と実施団体に迫ってみることにした。

1.似顔絵業界って、そもそもあるの?
2.謎の資格「日本似顔絵検定」
3.その団体「特定非営利活動法人日本似顔絵検定協会」
4.似顔絵資格のビジネスモデルはこうだった!
 

1.似顔業界って、そもそもあるの?

ある。いきなりだがちゃんとある。趣味の似顔絵教室からはじまり、フリーのイラストレーターがホームページを開いて、そこで注文を受けたり、誕生日プレゼントとして、写真ではなく似顔絵のイラストを制作いる企業があったりと、きちんと「似顔絵(イラスト)業界」として成り立っているのである。読者の方も、結婚式などで一度は見たことがあるだろう。

業界があれば業界団体が存在している。前述した特定非営利活動法人日本似顔絵検定協会のほか、「NPO法人日本似顔絵アーティスト協会」と「一般社団法人日本似顔絵師協会」がそうであり、文化の発展と著作者の権利擁護、著作物の公正な利用と文化・芸術の振興を掲げている。ネットをはじめとして、著作物がフリーで閲覧できるこのご時世、これらの団体の意義は大であろう。

2.謎の資格「日本似顔絵検定」

冒頭でも述べたが、似顔絵は上手いヘタはあっても、描くのは自由であり、そのレベルや値付けなどは需要と供給のバランス、もっといえばアナログな主観によって決まるものである。それを「日本似顔絵検定」ではどのように査定して検定の級を決めているのだろうか、大いに気になるところである。

日本似顔絵検定のサイトにはこうある。

「その人への愛情が、顔に刻まれたシワ一つを描く線からも伝わってきます。あなたの気持ちをそのまま伝えること、それが似顔絵検定です。」


・・・もう少し説明をください。。

試験内容(https://www.nigaoe-kentei.com/nigaoe-naiyou.html)は、いちばん初級の6級でいうと

目標レベル:趣味・入門的な似顔絵の描画能力を問う
テーマ:特徴を捉えて人物を描き分ける、男女を描き分ける
問題数:2問
時間:60分

となっている。最上級の1級ではテーマ数が8つになっており、レベルの高さを伺わせている。第18回の6級の試験内容を参照すると、

・・・・・・・・・・・・・・・・

第18回似顔絵検定 6級 課題1
横山純二さんの特徴を捉えて、次の指示に従って似顔絵を描いて下さい。

指示1 横山さんをバストアップで描いて下さい。

指示2 目・鼻・口・眉・耳・髪・顔の輪郭はすべて描いて下さい。

指示3 横山さんを自然な表情で描いて下さい。

指示4 背景の適当な部分に柳原さんの名前「ジュンジ」をカタカナで入れて下さい。

指示5 名前以外の背景は入れなくて構いません。

※下記にはイラストを掲載していますが、実際の問題では写真が掲載されます。

・・・・・・・・・・・・・・・・

横山さんて誰だ。という感じで、ゼロから想像して人物を描くのではなく、各指示に従って政権時間内に似顔絵を描いていくといった内容になっている。合格レベルがどのくらいであるか、模範解答のページ(https://www.nigaoe-kentei.com/kakomon/nigaoe-kakomon18.html)を参照してみてほしい。


たぶんこれ↓では受かりません。

3.その団体「特定非営利活動法人日本似顔絵検定協会」


この「日本似顔絵検定」を実施しているのは、どういった団体なのであろうか。名称は何度も登場しているので、さっそくその中身を拝見。

設立は2008年。設立目的は

「この法人は、大衆文化としての似顔絵に関心を持つ児童から高齢者に至るまでの幅広い層に対して、似顔絵制作能力に関する技能検定を実施するとともに、似顔絵文化に関する調査研究及び出版物の刊行を行うことによって、似顔絵文化の普及を推進し、もって我が国における文化の振興に寄与することを目的とする。
(内閣府NPOホームページ「日本似顔絵検定協会」行政入力情報より引用)

となっている。

しかしこれだけでは、ただの資格試験実施団体にすぎない。実は同協会には、似顔絵の技能向上を目指すひとたちにとって、素晴らしいビジネスモデルが存在するのである。
 

4.似顔絵検定の「ビジネスモデル」はこうだった!


特定非営利活動法人なので、その名称の通り、営利を目的としていない。では何が「ビジネスモデル」なのか。それは検定受験者の視点から見えてくる、ある一つの、最大と言っても過言ではないメリットの存在である。

日本似顔検定試験の準1級と1級合格者は、高いスキルを保持する似顔絵師として、同協会の「公認似顔絵師」への登録ができるのだ。これにより、合格者は自分の作品の発表の場が提供されることになる。つまり、同協会のお墨付きで実質的な営業活動を行うことができるということなのだ。イラスト・似顔絵の業界人がこの検定の合格者に注目していることは想像に難くなく、技能向上とともに営業活動を行えるという、受験者にとってメリットのある「ビジネスモデル」なのである。

もちろん、同協会にとっての「ビジネスモデル」も存在している。検定受験料(級によって異なり、2,000円~10,000円)はもちろんであるが、講習会の開催や、ビデオ教材、参考資料図書などを同協会から販売しているのである。しっかりしている。




最後に残念なお知らせをひとつ。2020年6月21日に実施される予定であった似顔絵検定は、昨今のコロナウィルス蔓延動向のせいで中止されることが決定している。

コロナウィルスは似顔絵業界にも影響を及ぼしているのである。。

(依藤 慎司)


関連リンク:

特定非営利活動法人日本似顔絵検定協会
https://www.nigaoe-kentei.com/