セパタクロー。名前を聞いたひともいることと思う。マイナースポーツのアレである。だがその競技内容を理解して名前を知っているひとがどのくらいであろうか。筆者の経験談でいうと「競技人口少ないからいまからセパタクローやれば日本代表になれるよ」というような冗談話にを耳にしたくらいである。
明らかにマイナースポーツ。だがそこにスポーツとしての魅力と、Xビジネス的な要素が含まれているとしたら。本項ではその実態に迫ってみたい。
1.まずはセパタクローについて知りたい
2.セパタクローを極めたらこうなった
3.セパタクローマーケット、ココがX(エックス)!
1.まずはセパタクローについて知りたい
冒頭で触れた「セパタクロー」。特徴:とにかくマイナー
・・・真剣に改めて紹介すると、セパタクローとは、ひとこで言うと「足でやるバレーボール」となる。もう少しアプローチしてみよう。
競技の場となるコートにはバレーボールと同様に中央にネットが張ってあり、そこを敵味方の境界として、選手が足のみを使い、ボールを蹴り合うスポーツである。
セパタクローのボールは合成繊維で作られているが、当初は東南アジア諸国原作の籐を材料に作られていた。つまりセパタクローの起源は東南アジアということになる。その歴史は9世紀ごろと言われており、主にマレー半島に伝わっていた、ボールを地面に落とさないように数人で蹴り合う「セパラガ」が起源と言われている(所説あり)。ほかにもマレーシアの皇室から始まったスポーツとも言われることもある。
東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センターというすごい名前の組織によると、日本のセパタクロー競技人口は約2000人ほどで、全国に30~40ほどのクラブがあるという。ちなみにFIFAのウェブサイトによると、日本のサッカー競技人口は4,805,150人となっている。
セパタクローの競技人口はサッカーの約1/25000なのである。
2.セパタクローを極めたらこうなった
通常、スポーツ用品店であれば、野球やサッカー、スキーなど複数の種目のスポーツ用品を取り扱う。そして特定の競技用品の専門店が存在するが、それもメジャースポーツの競技商品を取り扱う店舗がほとんどである。
そんななかで「セパタクロー」である。前述したように、セパタクローの競技人口=市場は、サッカーの1/25000であり、その規模だけで生業を立てようとする場合、独占に近い占有率か、よほどの競技への愛情が必要となる。
そのあたりを紐解くヒントになるのが、この社名であるセパタクロー「マーケット」となる。
3.セパタクローマーケット、ココがX(エックス)!
繰り返しになるが、セパタクローの競技人口=市場は、サッカーの1/25000である。そんななかでセパタクローマーケット社は、他の競技の商品を取り扱わない、セパタクロー用品「専門店」なのだ。
もちろん商売としての戦略や多種多様なマーケティングの結果としての業態なのであろうが、極小規模の市場のなかで専業であることには理由がある。
まずセパタクロー自体が「見ていて非常に面白いスポーツである」ことが挙げられる。確かにマイナーなスポーツであるのだが、この「足でやるバレーボール、華麗な空中格闘技」は、一度目にしたらクセになるような魅力にあふれている。
そしてこの「セパタクローマーケット」は、「セパタクローのことしか考えていない」のである。好きこそものの上手なれ、ではないが、魅力ある対象に、それだけしか見ないほどの情熱を注ぎ込んでいるものに対して、ひとはどう感じるか。一度その世界に取り込まれたら離れることのできないくらい、魅了されてしまうことだろう。
自分が楽しむことができないとひとを楽しませることができない、というエンターテインメントの大原則を、このセパタクローマーケットという企業に垣間見ることができる点を「ココがX(エックス)!」として推したいのである。
(依藤 慎司)