幻の飲料「ミリンダ ストロベリー」は今どこに?
さて、皆さんは、札幌、広島、静岡は、「マーケティング」の街である、というのは聞いたことがあるだろうか? 首都圏で発売される前のカップ麺、ジュースが販売され、その売れ行きで、首都圏に実際に投入するかどうか決められる・・・そういった類の人体・・・いや実証実験の場になっている訳です。
どうして、札幌、広島、静岡なのか・・・ですが、東京に対抗しうる強烈な地元愛のようなものが無い(バイアスが掛かりにくい)、テストマーケティングをするのに人の集積度合いが丁度良い、等があるそうです。
私は、幼少期を札幌で過ごしましたが、「札幌人あるある」として、札幌で流行った曲が、半年後に全国でヒットする(=センスが良い)、東京に行ったことが無いのに六本木にやけに詳しい人の比率が高い(=ブランド志向強い)、芸能人が紹介した店であってもマズイ食い物は「クソマズイ」と素直に言う(=味覚に鋭く・味に関してだけは嘘を言わない)等、人体・・いや実証実験の、モルモット・・いやサンプルの性質として、マーケティングに適しているんでしょうね。広島の方や静岡の方もそういうところあるのでしょうかね?
ということで、本コラムでは、幼少期・学齢期を「ドリンクオタク(=知らない飲み物をとりあえず飲むことが趣味の人)」として過ごした私が、札幌での人体・・・実証実験と思われる、飲み物のひとつを紹介します。(尚、霞んだ記憶から思い出しているので、誤情報が入っているかもしれませんので、その際はご指摘下さい。)
今回紹介したいのは、「ミリンダ ストロベリー味」です。そもそも皆さん、「ミリンダ」ご存知?コカ・コーラ(ザ コカ・コーラカンパニー)が製造している「ファンタ」(オレンジとかグレープとかの果汁飲料)が有名ですが、競合のペプシ(ペプシコ社)が製造している果汁飲料シリーズが「ミリンダ」です。
もう40年程前でしょうか、信じられないかとは存じますが、札幌の一部地域では、果汁飲料と言えば、「ファンタ」というより「ミリンダ」だったんです。(勿論、「リボンシトロン」というこれまた北海道ローカルの炭酸飲料も強力でして、「ファンタ」は、なんか人気番組のTVCMで良く見る「東京」の息吹のする飲み物でした。)
大人達が「ファンタ オレンジ」飲む?と子供に尋ねると、いやいや、あんたの勧めているそれ「ミリンダ オレンジ」ですけど・・・・、「スプライト」どうぞ、・・・いやいや、それ「ミリンダ レモンライム」ですよ・・・ということがよくありまして・・。コマーシャルのせいで、札幌では炭酸飲料=コカ・コーラ製品と勘違いする人が多かったと思いますが、実際「ミリンダ」飲んでたんすよね、かなりの割合で。
で、ある日、衝撃が走った訳です。「ミリンダ ストロベリー」なる飲み物が発売されましたので・・。それまで、「ファンタ オレンジ」⇒「ミリンダ オレンジ」、「ファンタ グレープ」⇒「ミリンダ グレープ」というように、「ミリンダ」は、全て「ファンタ」の味に追従していた訳です。ところが、突如、「ファンタ ストロベリー」なぞこの世に存在しないのに、「ミリンダ ストロベリー」が札幌に現れたのです!
早速、スーパーや商店に買いに行くわけですが、無いのですね、滅多に。しかも、何故か口コミで、小中学生には人気の飲み物になってしまいまして、当時、ネットも無い時代でしたので、「○丁目の○○のところにミリンダ ストロベリー入ってるぞ。買い占めるぞ。」「俺、3本持ってるぞ。古いファミコンソフトと交換してやる。」みたいな、今で言う「転売ヤ―」みたいのが発生した始末です。いつしか「ミリンダ ストロベリー」は「幻の飲み物」として、特に小中学生の憧れの飲料となってしまいました。学校の教室では、「ミリンダ ストロベリー経験者」と「同 未経験者」で明らかな「区別」が行われ、経験者が未経験者を見下す風潮まで生じた次第です。
で、味ですけど・・。合成甘味料なので、ストロベリーがそのまま入っている訳では無く、微妙な、甘味料の「ブレンド」なのですね・・。しかし、希少な「ミリンダ ストロベリー」を口にした人は、皆、「幻の味だ!」(うまいとも、まずい、とも言わない)と言い始めたのです。(かくいう、私も・・)
その頃、札幌(の多分、特定の地域)では、ついに、希少価値および味の面で、「ミリンダ ストロベリー」が「幻の飲み物」として神格化され、微妙な味と思いながらも、人気を博し、品薄、品薄、品薄・・・・のパニック状況に!(と、記憶してます)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
時は流れ、40年後、二十一世紀の現代。あれから、「ミリンダ ストロベリー」はどうなったのだろうか? そもそも、この現代社会において、ストロベリーを前面に押し出した炭酸飲料を見ることなぞ皆無である。(あ、たまにある)。巷の噂では、あの狂乱の宴(「ミリンダ ストロベリー」過熱現象)の後、勢いに任せて「内地(=本州)」に「ミリンダ ストロベリー」が上陸したと聞く。そして札幌市内にも、過剰なまでに「ミリンダ ストロベリー」が流通し、「幻」ではなくなったようだ。そして、その過熱は止み、いつしか、市場から「ミリンダ ストロベリー」がいなくなってしまった・・のである!あれは、マーケティングの街札幌が、味覚に鋭い札幌人が、初めて犯したテストマーケティングの過ちだったのだろうか?
否、私はそうは思わない。早すぎたのだ。内地(=本州)に出すのが。炭酸ストロベリーは、「ガラナ」や「ドクターペッパー」すら大衆にまだ認知されていない時代では、早すぎたのだ・・。マーケティングの鉄則ですね・・。「時代の先を行き過ぎるものは売れない。時代の半歩先を行け!」ってね。
ペプシコさん、「ミリンダ ストロベリー」、今なら行けるのではないでしょうか???
ちなみに、「ミリンダ」の意味は、「不思議な」って意味だそうです。「Xビジネス」な飲み物ですね!