【ゲームオタク】対戦格闘ゲーム好きが実際に格闘技をやってみた
「ストリートファイターⅡ」「餓狼伝説」「サムライスピリッツ」「龍虎の拳」「ワールドヒーローズ」「The King Of Fighters」・・・これらはゲームメーカーのカプコンやSNKが送り出した対戦格闘ゲームの名作たちだ。対戦格闘ゲームとは、画面上でキャラクターを操作し、1対1の格闘技(格闘技ではない闘法を用いるキャラクターもよくいるが)で対戦させるゲームである。1991年にカプコンがリリースした「ストリートファイターⅡ」が起爆剤となり、SNKなどライバルメーカーがこぞってタイトルを発表、1990年代に隆盛を極めゲームセンターの花形となった。また筆者のような地方出身者であれば、駄菓子屋の軒先に並ぶゲーム筐体を仲間と囲んで盛り上がったのは懐かしい光景だろう。その年代をティーンで過ごしてきた筆者にとって、対戦格闘ゲームは青春の思い出や人格形成に切っても切れない存在だ。
ビジネスという視点では、当時SNKは設置を希望する店舗に無償で筐体をレンタルしインカムを得るという手法を取り、瞬く間に日本全国津々浦々の街角をゲーム筐体1つで子供達のたまり場へと変貌させた。同社のユーザーを拡大し知名度を飛躍的に向上させたことは、ビジネスモデルとしても特筆すべき点だ。また、ゲームセンターや街角でプレイヤー同士が腕を競い、特に上級者のプレイ時には見物人や人だかりができるというのは、今日におけるeSportsの原型になっている。
とりわけ1990年代はプロレスでは闘魂三銃士や四天王プロレスといったヒーローが全盛期を迎えており、この他にK-1や総合格闘技の勃興など、ゲームやリアルを問わず格闘技が何かと話題を集める時代であった。
そんな時代に青春時代を過ごしたキッズは、筆者も含めて自ずと「格闘技」に興味を持つようになる。そして筆者はこれまで格闘技は“見る専”だったのだが、コロナ禍で週末の予定も空くようになったことから、エクササイズの範疇ではあるがキックボクシングのジムに通うようになった。長年やってみたいと思ってはいたもののなかなか心理的なハードルが高かったのだが、コロナ禍で抑圧された気分を開放するためには格闘技しかない!と、自身の心の中の重い扉を開いたのだった。念のため記しておくが、感染症対策を十分に施してあるジムに通っている。練習中はマスク着用なので非常に苦しい。
これまで見てはいたものの自ら放つことはなかったジャブ、ストレート、フック、アッパー、キックなどをミットに目一杯打ち込むのは非常に爽快である。パートナーと対峙する簡単な攻防や、寸止めやタッチのみの対戦形式練習(マススパーリング)も経験した。
筆者はボクシング漫画なども愛読するが、車田正美の「リングにかけろ」のような超人は別として、森川ジョージの「はじめの一歩」に出てくるようなリアリティのある描写は、実際にやってみると結構正しいことが分かる。相手からフリッカージャブ(ノーガードから繰り出すジャブ)を出されると、本当にパンチの出どころがバラバラで幻惑される。
こうして実際の格闘技を経験、いやまだ体験の範囲内だが、実際に触れてみて気になったのは、「対戦格闘ゲーム」と「実際の格闘技」はリンクするのか?という点だ。対戦格闘ゲームにおける攻防のセオリーなどは、実際の格闘技に置き換えてみるとどうなのだろうか?ということを、筆者なりに分析してみた。尚、予防線のために言っておくが、筆者は対戦格闘ゲームも実際の格闘技も好きではあるが得意というわけではなく、双方を深く語れるようなスキルはない。あくまで“体験記”として読んで頂きたい。
いきなり結論となるが、対戦格闘ゲームの攻防の要素の中で実際の格闘技にリンクしそうなのは「1.間合い」「2.差し合い」「3.フレーム」が挙げられると筆者は感じた。それぞれ説明していこう。
1.間合い
「間合い」とは、言わずと知れた相手との距離の事である。単純な立ち位置のほか、双方のリーチなどを考慮した攻防に適切な距離のことだ。自分の得意な攻撃を当てやすい距離や、逆に相手の攻撃を貰わない距離を保つことも意識しなければならない。これは対戦格闘ゲームでもほぼ同じことが当てはまる。対戦格闘ゲームのキャラクターもそれぞれに体格やリーチがあり、また闘法に併せて最適な距離を保つというのは対戦の基礎である。
違いを挙げるとすれば、実際の格闘技では相手の攻撃は概ねリーチの範囲内の攻撃にはなるものの、踏み込み具合の違いやフォームの乱れなどがあるため、同じ攻撃でも毎回同じ軌道で来るとは限らないことから、シチュエーションの判断が求められる。一方、対戦格闘ゲームでは、キャラクターの攻撃モーションはグラフィックで描写されるため寸分違わぬフォームやリーチだ。ゆえに、攻撃が当たる距離の見切り合いという要素が発生し、相手キャラクターの攻撃モーションや当たる距離を把握していれば、緻密な間合いの制御が可能になる。
2.差し合い
「差し合い」とは攻撃の出し合い、当て合いと言い換えることができるかもしれない。対戦格闘ゲームは当然相手に攻撃を当てなければならないが、攻撃を繰り出すパターン(タイミングとも言える)は、「差し込み」「置き」「差し返し」の3つがある。それぞれが「差し込み」を狙うと「置き」に負け、「置き」を狙うと「差し返し」に負け、「差し返し」を狙うと「差し込み」に負けるという3すくみの関係になっている。
差し込み: | 相手に近づき、攻撃を当てに行く。 |
置き: | 相手の「差し込み」に対し、攻撃を相手の届かない所で空振りをする。 |
差し返し: | 相手の「置き」に対し、相手の攻撃の後に攻撃する。 |
実際にマススパーリングをやってみた程度の経験だが、「差し込み」はこちらから前進し積極的に攻撃を繰り出すことに該当する。やはり先ずは攻めていかないことには始まらない。マススパーリングレベルであっても、手を出さずにディフェンシブになっていれば、ガードの届いていない脇腹などをすぐに小突かれる。
次に「置き」だが、これは積極的に前に出てくる相手に対し、ジャブを空振りして牽制することや、他に左腕を伸ばしたままにして、相手の視界や動きに制限を持たせることに該当すると感じた。こちらが前に出ようとしたときに相手の左が伸びていたり、踏み込んだ先にパンチが置いてあるのは非常に厄介なものだ。
最後に「差し返し」だが、これは早い話がカウンターである。「置き」でのジャブの空振りなどを考えも無しに出していると、腕を伸ばし切ったところにすぐに反撃が飛んでくる。また、相手が攻撃してきた瞬間は、こちらの攻撃が当たりそうな隙間がいくつも空いている。実際に対峙すると、相手が攻撃を仕掛けてきた時が一番攻撃を当てやすいとすら感じる。しかし、それを狙って後の先に徹すると、相手にペースを握られることにもなる。
3.フレーム
「フレーム」とは、ゲーム中の1秒間のキャラクターの動きをコマ割した物のことである。対戦格闘ゲームでは1秒間が60コマに分割されており、このコマ割の中でキャラクターが動き、攻撃を繰り出し戦っている。このフレームという単位で技の発生、伸ばした拳や足、武器が当たるとダメージを与えられる持続時間(当たり判定の持続)、技を出し終わったフォロースルーで操作を受け付けなくなる時間(硬直)などを表している。ボタンを押してから技の発生が7フレーム、当たり判定の持続3フレーム、硬直20フレームと言った具合だ。対戦格闘ゲームでは、キャラクターの技毎のフレームを理解していると、対戦で非常に有利になる。
これは実際の格闘技では端的に「モーション」と言ってよいだろう。上級者はジャブの発生や軌道が本当に見えない。気づいたらパンチを貰い、当たったと思った時には既に構えに戻っている。まさにゼロフレームだ。また、「硬直」という概念は攻撃モーションの戻りに該当する。筆者のような初心者は攻撃を出してからの戻りが遅く、また戻している最中は他に何もできないため、フレームにおける“硬直状態”となっており、その隙に好き放題に攻撃を当てられてしまうのだ。実際の格闘技においても、技の「フレーム」を最小化するために練習を重ねている。
以上、多少強引ではあったが、対戦格闘ゲーム好きが実際の格闘技を体験した中で、もしかするとこれは共通するのでは?という要素を述べてみた。最後に、これは輪をかけて強引だが、対戦格闘ゲームには波動拳を代表とする「飛び道具」がある。気功術など遠くから相手を倒す技法をゲームとして可視化したものだが、手のひらから気弾が飛び出すようなことは実際の格闘技にはありえない。しかし、力量が上の相手と対峙すると、こちらは非常に竦んでしまい容易に手が出せなくなってしまう。見えない力で抑え込まれているようでもあり、これこそが対戦格闘ゲームにおける“気”や”オーラ”を実際の格闘技で体験したといえるのかもしれない。
関連資料:
2020 クールジャパンマーケット/オタク市場の徹底研究
https://www.yano.co.jp/market_reports/C62108100
関連リンク:
CAPCOM:ULTRA STREET FIGHTER II The Final Challengers 公式サイト
https://www.capcom.co.jp/usf2/
NEOGEO BATTLE COLISEUM【餓狼伝説】
https://game.snk-corp.co.jp/official/nbc/museum/fatalfury/index.html
SAMURAI SPIRITS 公式サイト | SNK
https://www.snk-corp.co.jp/official/samuraispirits/
龍虎の拳
https://game.snk-corp.co.jp/event/virtual-console/artoffighting/index_artoffighting_j.html
ワールドヒーローズゴージャス:NEOGEO オンラインコレクション
https://game.snk-corp.co.jp/official/online/whg/
THE KING OF FIGHTERS XV | SNK
https://www.snk-corp.co.jp/official/kof-xv/
闘魂三銃士×全日本四天王 DVD-BOX6枚組 | 新日本プロレスDVDサイト
https://njpwdvd.com/thethreemusketeersvsthebigfour-dvd-box6/
リングにかけろ1 - 作品ラインナップ - 東映アニメーション
http://lineup.toei-anim.co.jp/ja/tv/rin-kake1/
はじめの一歩 Rising|日本テレビ
https://www.ntv.co.jp/ippo/