先日、国立新美術館で開催されている「庵野秀明展」に潜入。といっても今回は取材ではなく、ウルトラマン好きの息子(幼稚園児)とアニメ好きの妻からのリクエストがあったため、足を運んだ次第である。

 庵野秀明氏は1995年から放送されたテレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」および同作品の劇場版シリーズで総監督を務めた日本を代表するアニメーター・映画監督である。今年の3月8日に公開された劇場版シリーズの最終作「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は、公開136日間で観客動員数669万人、興行収入102.2億円を突破し、2021年に公開された全ての映画の中で興行収入トップとなった。

 同展は、庵野氏のアマチュア時代から現代までの軌跡をたどり、未来への展望をも網羅的に見せる内容で、総展示数は1500点以上にもなる。庵野氏が生まれた1960年代当時のものから、生家から持ち出された重要品、遠くロンドンから運ばれたものまで、多様な作品・資料が展示されており、「原点、或いは呪縛」「夢中、或いは我慢」「挑戦、或いは逃避」「憧憬、そして再生」「感謝、そして報恩」の全5章立てで構成されている。

 

 

 私は恐縮ながら庵野氏の作品を見たことがないので、周りの方の半分も堪能できなかっただろうと思うが、庵野氏のルーツである60~70年代のアニメや特撮作品の紹介や子供時代の私物を集めた展示エリア、さらには数多く展示されていたアニメの制作途中段階の指示書やストーリーボードなどを拝見して、庵野氏の好きな作品や関連グッズに対する熱烈な愛情や、作る作品対すること細かなこだわりなどが伝わってきて、オタクの中のオタクとはこういう人のことを言うのだということを切に感じた。

 また、同展では「庵野秀明をつくったもの(過去)」「庵野秀明がつくったもの(現在)」「そして、これからつくるもの(未来)」をみどころとしている。「そして、これからつくるもの」の一つとして、2022年3月公開予定の「シン・仮面ライダー」と同5月公開予定の「シン・ウルトラマン」のプロジェクトを紹介していた。
 こちらも大きな注目を集めることが予想されるが、2021年はウルトラマンが55周年、仮面ライダーが50周年のアニバーサリーイヤーで、様々なイベント(コロナのためオンラインが多かった)が開催されたり、多くの記念グッズが販売された。

 ともに50年を超えるシリーズであることから、当然私も子供時代に通ってきたはずであるが、どちらも夢中になった記憶が全くない。むしろ、スーパー戦隊シリーズの「電子戦隊デンジマン」(1980年2月~1981年1月放送)や「太陽戦隊サンバルカン」(1981年2月~1982年1月放送)、宇宙刑事シリーズの「宇宙刑事ギャバン」(1982年3月~1983年2月)や「宇宙刑事シャリバン」(1983年3月~1984年2月)はよく覚えている。

 どれも息子と同じ幼稚園から小学校低学年時代であるが、同時期のウルトラマンシリーズと仮面ライダーシリーズを調べてみると、ウルトラマンシリーズはいわゆる「昭和ウルトラシリーズ」といわれ人気が高かった初作品の「ウルトラQ」(1966年1月~1966年7月)から7作目の「ウルトラマンレオ」(1974年4月~1975年3月)が終了して5年後に「ウルトラマン80(エイティ)」(1980年4月~1981年3月)が放送されている。しかし、視聴率が低かったからか、「平成ウルトラシリーズ」が始まる1996年までさらに15年以上シリーズは休止となった(途中テレビアニメや海外との合作によるオリジナルビデオシリーズなどはあり)。

 

 

 

 

 仮面ライダーシリーズも、いわゆる「昭和仮面ライダーシリーズ」といわれ人気が高かった初代「仮面ライダー」(1971年4月~1973年2月)から5作目の「仮面ライダーストロンガー」(1975年4月~1975年12月)が終了して約4年後に「仮面ライダー(スカイライダー)」(1979年10月~1980年10月)と「仮面ライダースーパー1」(1980年10月~1981年9月)が放送されている。こちらも低視聴率からか、その後6年シリーズは休止した。
 つまりどちらも私の子供時代に放送されてはいたが、世代的に人気低迷期と重なり見ていなかった(他の番組を見ていた?)か、印象が薄かったのだろう。

 ウルトラマン、仮面ライダーともに途中の休止時期を挟んで「平成シリーズ」「令和シリーズ」と継続して放送されている。「昭和シリーズ」との違いは、キャストにイケメン俳優や人気声優を起用して母子で楽しめるようになったり、CG技術の発達や昭和シリーズにはなかった多彩な武器や変身アイテムが登場していることなども挙げられる。
 武器や変身アイテムは、新シリーズの放送開始と連動して販売するグッズ売上にも大きく関連している。先日取材した「『#クリスマスおもちゃ』トレンド発表会」の「おもちゃ屋が選んだクリスマスおもちゃ2021」キャラクター玩具部門でも、最新シリーズ仮面ライダーリバイスのグッズ「変身ベルトDXリバイスドライバー」が1位となっていた。
※「『#クリスマスおもちゃ』トレンド発表会」については別コラム参照

 現在、毎週日曜日の朝にテレビ放送されている「仮面ライダーシリーズ」は、そのすぐ後に放送されている「スーパー戦隊シリーズ」とセットで見ている子供も多いかと思うが、その放送開始時期は現在、スーパー戦隊シリーズが2~3月、仮面ライダーシリーズが9~10月と開始時期が約半年ずれている。以前はどちらも年明けから2~3月ごろに放送開始されていたが、2009年9月から放送された「仮面ライダーW」から開始時期が移行された。その理由の一つとして、前述したように新シリーズの放送開始とともに販売する関連グッズの商戦時期が重ならないようにするためだと言われている。

 息子は今日もウルトラマンの主題歌を口ずさみ、見えない敵(時には私)に向かってスペシウム光線を発射している。50年以上、子供から大人まで世代を超えて熱狂を生む「特撮ヒーロー」の偉大さを改めて実感した。

 話が少しそれてしまったが、東京で開催されている同展は今週末12月19日(日)まで。ご興味がある方はぜひ!

片岡 一豊

 

 

関連資料:

2021 クールジャパンマーケット/オタク市場の徹底研究
https://www.yano.co.jp/market_reports/C63111100

プラモデル(キャラクターモデル)市場の動向2021
https://www.yano.co.jp/market_reports/R63200901

2022年版 玩具産業白書
https://www.yano.co.jp/market_reports/C63120300

関連リンク:

庵野秀明展
https://www.annohideakiten.jp//

ウルトラマンシリーズ
https://m-78.jp/videoworks/category/ultraman_series/

仮面ライダーシリーズ
https://www.kamen-rider-official.com/collections

スーパー戦隊百科
https://www.super-sentai.net/sentai/

新世紀エヴァンゲリオン(公式)
https://www.evangelion.co.jp/