12/16、後楽園ホールにて全日本プロレスの興行を見に行った。
 後楽園ホールの収容人数は2,000人ほどであるが、コロナで定員は1,000人程度のところ、当日の客数は596人と6割程度であった。

 この日はなんと年内で退団してしまう3選手のラストマッチが組まれており、その試合ごとに感傷に浸ってしまった。
 特に退団を発表した野村選手は、団体において将来有望な選手であり、王者になる資格を十二分に持ち合わせた期待のレスラーだっただけにとても残念であった。もともとケガで長期欠場していたあとの「退団」発表で、今後はとりあえず「休業」宣言はしているが、果たして他団体へしれっと参戦してしまうのか、気になるところである。

 しかしこういった「退団」のニュースはプロレス団体ではよくあることなのだが、個人的に贔屓にしている団体の、それも有望な選手がいなくなるとなると正直つらいものがある。
 私は1990年代の三沢さん、小橋、田上、川田の超世代軍・四天王あたりからファンであり、三沢さんらの大量離脱、武藤らの入団・退団といった大きな試練の波を乗り越えて50周年を来年迎える。
 来年はどうなっていくのか。非常に気になるが、逆に今の若手にはチャンス到来である。一気にスターになれる可能性だってあるのだ。それがプロレスの良さでもある。

 

 現在のプロレス界は、新日本プロレスが業界ナンバーワンとして先頭を独走しているが、選手層はやはり分厚い。2000年代に活躍した永田、天山、小島は、今じゃスポット的にしか出られないくらい、他の若い選手がたくさん活躍している。
 それこそ、永田らが全日本プロレスにレギュラー参戦してくれたっていいのにと個人的には思ってしまう。どうしてできないのだろう。もうしがらみとか、変なこだわりとか、取っ払ってくれていいんじゃないのかと思ってしまう。これは全日本ファンの視点からの勝手な言い分だから、色々と諸問題がきっとあるんだろうと察するが。

 そういえば、来年1/8に「新日本プロレスVSノア」の対抗戦が行われることになった。業界内では久しぶりに大きなニュースである。最近、その対戦カードが発表された。
 しかし、正直微妙である。本音を言うと「つまらない」が素直な感想。これは個人的な感想であって、異論反論はあるだろう。今回の対抗戦が「次」につながるための「お試しのカード」であればいいが、これで終わりという形であれば、非常に物足りないカードと感じた。

 

 なぜか・・・それはシングルマッチが少なすぎるという点だ。「シングルマッチ=勝負がつく」ことを避けたカードだからだ。
 タッグマッチになると、色んな要素が伴って勝敗がつくため、たとえ負けても適当な「理由」がつけられる。それがシングルマッチならどうだ。リングアウトや乱入など不完全燃焼で終わらさない限りは確実に勝負がつくため、興行的にバランスを保つ(勝ち負けのバランス)ためにはどうしてもシングルマッチは組みづらいという判断だったのだろうか。
 正直、これではファンの気持ちを無視していると言っても過言ではない。新日本プロレスの現チャンピオン・鷹木選手は対抗戦について「ノアにメリットはあっても新日本にそこまでメリットがない」と言い放ったが、ファンにとっても大してメリットはないぞと言いたい。
 ファンが見たいのはオカダ-清宮であり、内藤-潮崎、後藤-杉浦、SANADA-中嶋である。あと個人的に田口-小川良成など。これでは“交流戦”である。ぜんぜん対抗戦じゃない。

 約10年前に、東日本大震災復興支援チャリティープロレスと題して「ALL TOGETHER(オール・トゥギャザー)」という興行がおこなわれた。その時は主に新日本プロレス、全日本プロレス、ノアの3団体の主力選手が組んだりしたお祭り的な要素をはらんだものだったが、まだそっちの方が面白いと思ってしまう。
 当時の各団体のチャンピオンがトリオを組んでライバルたちと戦うという図式や、団体の垣根を超えたユニットなどでファンは色んな意味で“夢”があったし、元気をもらったと記憶している。

 弊社マーケットレポート「クールジャパンマーケット/オタク市場の徹底研究2021」でリリースしている通り、2020年度のプロレス市場規模は前年度比16.1%減の120億円と厳しい状況だ。
 コロナでファン離れが進んだと思ってもいいくらい、会場での観客動員は伸び悩んでいる。団体ごとでその差はそれぞれ異なるものの、コロナ前と比べて厳しさは否めない。いまこそファンが求めるカード、ファンが見たいカードを提供すべきなんじゃないか。

 今回の新日本VSノアは「NEXT」があると信じたい。夢の向こう側を期待したい。

グレート・ガミ

関連資料:

2021 クールジャパンマーケット/オタク市場の徹底研究
https://www.yano.co.jp/market_reports/C63111100

関連リンク:

全日本プロレス
http://www.all-japan.co.jp/

新日本プロレス
https://www.njpw.co.jp/