鉄道模型というと素人が思い浮かぶのは、ちょっと大きな模型屋さんの一角に陣取っている、鉄道車両の走るジオラマ(なぜかたいてい隅に山があって、そのトンネルを車両が通る。見せたくないのか?)や、おもちゃ売り場の棚に吊られた原色のケバケバしいアレであろう。だが鉄道模型は 本人たち曰く 高尚な趣味であり、取り憑かれると離婚騒動を起こすくらいの魅力(知り合いの鉄道模型オタ曰く「不治の病」)が詰まっている、定番の「大人の趣味」なのである。
本稿では、模型屋さんのジオラマを走っているほうの「鉄道模型」の市場について考察してみたい。

  1. 鉄道模型もいろいろあるけれど、やっぱり主力はこれ
  2. 「四季島」に続け、これが鉄道模型の市場規模と構造
  3. 鉄道模型のブランド -金額には出てこないブランドのポジショニングマップ-(次稿)
  4. の資料、「Xビジネスショートレポート」(次稿)

1. 鉄道模型もいろいろあるけれど、やっぱり主力はこれ

鉄道模型をよく知らなくても「Nゲージ」という言葉をどこかで聞いた人もいると思う。ウィキペディアでは、

Nゲージ(エヌゲージ)とは、レールの間隔(軌間)が9mmで縮尺1/148 - 1/160の鉄道模型規格の総称である。小形模型のうち、諸外国ではHOゲージ が主流だが、日本ではNゲージがもっとも普及している鉄道模型である。9mmゲージとも呼ばれ、アメリカなどではNスケールとも呼ばれる。

となっており、日本の独自基準ともいえるスケールである。「外国製より小さくても同様のクオリティで作れる」というより、 狭い日本の住宅事情 に合わせたものであろう。そういったこともあり、Nゲージ(スケールでいうと約1/150 なので、ジオラマに1/144スケールのガンプラをおいても違和感はそんなにい )が市場の約75%を占めている。そのほかに、HOゲージ(16mmゲージ、スケールでいうと1/80)が約15%、その他が数%となっている。

鉄道模型の生産・販売傾向として、そもそもが オタ マニア向けの製品であることから、各メーカーとも発売前の予約販売で出来るだけ売り切る傾向があった。だが市場規模の拡大とともにライトユーザーへのすそ野が広がってきていることから、在庫製品の充実度が重要視されている。知識のあるマニアがシビアに狙い撃ちで購入するケースのほか、「まずはこれ」と購入したライトユーザーが「じゃあこれも」とステップアップしていく際に、限定販売ばかりでは需要に対応しきれないという構図である。在庫製品が安定供給されることによって、発売日からしばらく経っても店頭で新製品を購入できるようになったことで、ライトユーザーも店頭でじっくりと製品を選べるようになったのである。
また同時に、既存ユーザーは一番欲しい製品を絞り込んで予約購入したあと、二番目以降の 物欲を満たすために 製品を店頭で実際に見てから購入を決める傾向が高くなっている。これらのことから、各メーカーは既成の定番商品も随時リニューアルを行い、製品化を発表した後もサンプルを自社ホームページで公開するなど、需要喚起のための情報提供に努めている。

2. 「四季島」に続け、これが鉄道模型の市場規模と構造

鉄道模型の市場に参入している主要メーカーは、なぜか社名とブランドが異なる 「KATO」の関水金属、「TOMIX」「ジオコレ」のトミーテック社で市場の約80%を占めている。次いで「マイクロエース」のマイクロエース社が続く。まずはこの鉄道模型市場を俯瞰してみたい。

※先代の社長名が創業者の加藤祐治氏であり、その知名度が高かったことからブランド名となったとのこと

2017 年度の鉄道模型の市場規模は、矢野経済研究所の調査で前期比7.6%増の113 億円になると算出された。ここでいう市場規模とは、国内出荷額ベース、車両のほかジオラマ・レール・動力ユニット等周辺商品を含んでいる。

市場規模を車両模型のみで見ると、同じく前期比で10.1%増の87 億円になると推計され、車両模型の構成比は鉄道模型全体の約77%と前期から2 ポイント上昇している。

2017 年度のトピックとしては、トミックスの新制御システム「 TNOS(ティーノス) 」や関水金属の特別企画製品「 E001 形〈TRAIN SUITE 四季島〉 」などのヒットがある。これらがここ数年には見られなかった市場の大きな拡大につながったのである。

2018 年度においては、関水金属の「四季島」ほど市場を大きく押し上げる新製品はなかったものの、各社ユーザーニーズに応えた定番品を投入していくとともに幅広い遊び方の提案につながる「下回り品」の提案も積極的に行っていたことから、大幅な反動減は見られなかったものと思われる。そのような背景から2018 年度の市場規模は、前期比1.8%減の111 億円にて推移するものと予測している。
(この稿続く)

(依藤 慎司)