プロレス市場の定義

プロレスの試合のチケット、プロレス選手の関連グッズ(パンフレット、Tシャツ、タオルなど)といった、プロレスのファン活動に消費される費用を市場規模とする。ただし、試合会場へ行くための交通費や宿泊費など、間接的な費用は除外している。
尚、本書における市場規模は、特に記述があるものを除いて出荷ベースで算出しているが、本市場については「出荷ベース」で市場規模を算出することが困難なため、「ユーザー消費金額ベース」で表記している。
 

プロレス市場の客層

2016年9月に矢野経済研究所が実施した消費者アンケートより、「プロレスオタク」を自認する消費者は、日本国内に約55万人存在すると推計する。前回調査より2万人の増加となり、ここ数年着実に増加していることから、近年のプロレス人気を反映する格好となった。
年代別をみると、19歳以下(10代):6.3%、20代:20.6%、30代:15.9%、40代:28.6%、50代:12.7%、60代:15.9%となり、依然として40代が最大のボリュームゾーンであるが、前年調査から10代が3.0ポイント、20代が2.6ポイント拡大し、若年層のファン拡大が表れている。
男女比では、男性:女性=69.8%:30.2%となり、女性の比率が前回調査より7.2ポイント拡大した。これは「新日本プロレス」を筆頭としたプロレス人気の高まりにより、女性プロレスファン(プ女子)の増加が反映しているものと推察される。
また、今年度より新たに調査項目として加えたオタク歴については、「1年未満」が41.3%を占める一方で「30年以上」も23.8%にのぼる2極分化した結果となり、平均は11.9年であった。
 
 

プロレス市場の客単価

消費者アンケートより、「プロレスオタク」を自認する層がプロレスのファン活動(プロレスの試合のチケット、プロレス選手関連グッズなど)にかける金額は、平均で年間23,397円となり、前回調査時よりも5,000円近く低下する結果となった。また、金額別構成は、「0円」が46.0%を占める。次いで「1万~5万円未満」が25.4%となった。
これは、観客動員を増やすために、価格を低く設定する団体が増えていることなどが影響している。1興行(概ね4~7試合)におけるチケット料金は、会場規模によって異なるが3,000~15,000円程度である。リングに近いほど料金は高く、リングサイト、ひな壇、指定席、自由席、立ち見という具合に区分され、それぞれ価格も500~1,000円単位で異なる。新日本プロレスの「東京ドーム大会」や、他団体も含めた「両国国技館大会」など、10,000人以上を集客するような大規模な会場では10,000~30,000円クラスにもなる。
 
 

プロレス市場の構造

2016年10月時点における主なプロレス団体は、「新日本プロレス」「全日本プロレス」「プロレスリング・ノア」「ZERO1」「大日本プロレス」「DDTプロレスリング」「ドラゴンゲート」「WRESTLE-1」「IGF」、女子プロレス団体は「アイスリボン」「スターダム」「WAVE」「JWP」「LLPW」「OZアカデミー」などが挙げられるが、プロレス業界は団体を統括する組織が存在しないため、団体数は小規模で活動している団体を含めると国内に100以上が存在する。
団体の規模や活動形態によって異なるが、各団体の主な事業収入は、プロレス興行収入、物販(関連グッズ販売など映像コンテンツ含む)、スポンサー収入、放映権収入(メディアで中継される場合)、所属選手の他団体への出演料、動画コンテンツの有料会員料、ファンクラブ会員費などからなるケースが多いが、一部の大手・有力団体を除き、収益の確保に苦慮している団体が大半である。
なお、首都圏の大会場で催される興行のチケットは、チケット会社経由で販売されることが多いが、地方で行われる中小規模の興行のチケット販売は法人顧客への直接営業が不可欠である。
プロレスファンの典型的な消費スタイルは、年に数回試合を観戦し、会場でパンフレットやタオルなどのグッズやDVDを購入、またプロレス専門雑誌の定期購入、ケーブルテレビのプロレス専門チャンネルや、インターネットで有料配信されているコンテンツを鑑賞するパターンが考えられる。
また、近年は、WEBの進化に伴い、選手のブログやフェイスブックによるコミュニケーションの多様化、地上波テレビが減少するなか、WEB配信の「YouTube」や「ニコニコ動画」のプロレス専門チャンネル、格闘系の有料チャンネル「サムライTV」などのCS放送、BS放送による試合の視聴が活発化している。
 

プロレス市場のトレンド、トピックス

●「新日本プロレス」が人気、事業規模で突出し、1強体制を確立

プロレスは2000年代、「K-1」「PRIDE」などの総合格闘技ブームなどの影響により、人気、売上ともに低迷していたが、2012年にカードゲーム会社のブシロードが新日本プロレスの親会社となったことを契機に、交通広告やインターネットを中心にした大掛かりな広告キャンペーンを展開し、人気、売上ともに回復している。さらに、プロモーション活動として、TVのバラエティ番組やドキュメンタリー番組で、プロレスや選手の露出度を高めたことなどが奏功し、新規顧客の取り込みに成功している。
また、2012年に若手レスラーである「オカダ・カズチカ」が登場したことも相乗効果につながっている。同選手の魅力として、191センチという身長の高さに加え、十分な脚力を生かして放たれる必殺技のドロップキックが人気となっており、魅力ある容姿から女性ファンの増加にも繋がっている。さらに、ブシロードは「バディファイト」というカードゲームのテレビCMキャラクターに同選手を起用し、新日本プロレスの会場に子供のファンが多数来場するようにもなっている。
近年は、選手個人での活動も目立っており、選手個々で展開するツイッターやブログが代表的で、特に「棚橋弘至」と「真壁刀義」は大会のプロモーション活動をメインとしたテレビ、ラジオ、雑誌などの取材数が群を抜いている。また、各選手の関連本や書籍の数も増加したことでメディアに取り上げられる回数も増え、団体及び各選手個人の知名度向上にも貢献している。特に、書籍発売時では、書店などで選手のサイン会や撮影会が組まれることも多く、「ファンとのふれあい」が人気をより集めることにもつながっている。
同社は、2016年7月期の売上高約32.2億円から、今後3年間は120%成長を続ける目標を立てており、将来的な目標として年間売上高100億円を目指している。そのためにも、海外進出は重要なファクターと位置づけており、2016年は7月と11月に「シンガポール」へ、10月には「台湾大会」を展開したが、今後においても海外での興行を増やし、グローバル化を進めたいと考えている。
 

プロレス市場規模

●新規ファン層の取り込みなどにより、プロレス市場は増加に転じる

矢野経済研究所推計によるプロレス市場規模推移は下記の通りである。プロレス団体は、売上やその内訳を公開しているケースが極めて少なく、またインディーズ団体が無数に存在し、立ち上げ・撤退が常に生じている状況などから、事業者の売上を積算したかたちでの市場規模算出はほぼ不可能である。そのため、本項では、業界関係者へのヒアリングや消費者調査をベースに、ユーザー消費金額ベースで市場規模を推計している。
2015年度の市場規模は前年度比2.4%増の124億円と推計する。各団体の新規ファンの開拓に向けた取り組みなどが奏功し、従来のコアなファンだけでなく、若年層や女性などのライトなファン層が増加している。特に、プロレス好きな女子「プ女子」の間では、プロレス観戦やグッズ収集だけではなく、プロレス団体が開催しているプロレス教室に通って自らプロレスを体験する人も増えており、学生プロレスの間でも女性レスラーが活躍している。近年のプロレス人気によって男女のレスラー志望者が増えており、彼らの試合を周りが観戦に訪れるなどの効果も表れている。
団体側も、インターネットを活用した情報発信や動画の配信を積極的に行い、集客力向上に努めている。一部、入場料価格の改定による単価の下落や、動画配信によりコアなファン層の来場回数の減少は見られているが、年間の興行数は増加傾向にあり、今後も総じて入場料収入やグッズ収入の増加が見込まれる。
2016年度においても、同様の傾向から前年度比1.6%増の126億円を予測する。
 
 
本稿の詳細データについては、下記調査レポートよりご入手いただけます。