- 人はだれでも「ひとり」になる可能性がある -

アタマからいきなり重い命題を持ってきたが、確かにそのとおりなのである。積極的な「ひとり」はまだ希望が持てるが、消極的な「ひとり」は、誰でも先の見えない不安に駆られてしまう。そんな「お一人様」に対してのサービスと社会的背景について、Xビジネスでも以前に、連載コラム「焼肉からパッケージツアーまで!お一人様ビジネス(1)~(4)」と「「お一人様ビジネス」の先にあるもの(1)~(2)」の、6回連続で「お一人様業界」を考察してきた。

その際に結論として、「お一人様ビジネスは『お一人様を生産』するのではなく、『意に反してお一人様である個人の、お一人様脱出サービス』にシフトチェンジしてもらいたい」とまとめた。これが昨年、2017年11月のことである。

そして2018年の今年、「お一人様」業界にひとつのメディアが登場した。それがタイトルの「ひとりとひとり」である。

 

 1.「ひとりとひとり」が提起するものとは?
 2.創刊パーティに潜入してみた
 3.メディア「ひとりとひとり」は、こんなことを考えていた!
 4.直撃インタビューでわかった「ひとりとひとり」の正体

 

 1.「ひとりとひとり」が提起するものとは?

先ほどから連呼している「ひとりとひとり」とは、実は「ライフスタイル提案マガジン」である。劇団ではない。「お一人様」を謳ったサービスは、Xビジネスのコラムでも斬ってきたように世にゴマンと存在しているのだが、それを専門紙媒体として世に問うている例はあまりない。過去には「おひとりさま専用Walker」というような雑誌も存在していたが、これはライフスタイルというより、言わば「クリぼっちを笑い飛ばす」ような、そして東京エリア中心の「エンタメ情報誌」の域を出ないものであった。

 

「ひとりとひとり」は、「人はだれでも『ひとり』になる可能性がある。そんなひとりで生きる人たちの【つながり】と【前向きに生きるための暮らしと終活】を応援する」ための媒体だ。季刊(年に四回発行)のフリーペーパーで、しかも発行元は一般社団法人。その謎の形態に興味を惹かれてしまう。この度、その発刊記念パーティが開催されるということで、Xビジネスとしてはこの特異な存在を見過ごせず、当日の軽食目当てと弊社で発刊するレポートと当コラムの取材目的でパーティへの参加を申し込んだのであった。

 

2. 創刊パーティに潜入してみた

2018年5月12日、世間は土曜でお休みの日。都内は杉並区の荻窪駅から歩いて数分の会場にたどり着くと、そこは30畳くらいの、広いワンルームフロア。ふだんは演劇に使っているらしい。客席に集うのは30人ほどの老若男女。あとで聞いてわかったのだが、そのほとんどがクリエイターと演劇関係者とのことだった。

開始時刻になり、なぜか朗読からスタート。創刊紙面との関連性に「?」であったが、聴き進むうち、じつは「終活」に絡めた内容(じつはみんな死んでいたという、ちょっと怪談)であって、「あぁ、紙面に寄せてきているな」と冷静に分析。

 

引用元:ひとりとひとり.com「ひとりとひとり」創刊記念パーティーにご参加ありがとうございました。

 

そして場は進行し、いよいよ「ひとりとひとり」の創刊について、編集長であり、発刊元となる「一般社団法人ひとりとひとり」の代表理事でもある、ひろかわなみ氏の登場。ついでスーパーバイザーでもある(実はひろかわ氏の夫でもある)安藤昭一氏も登壇。司会者との対談形式で、「ひとりとひとり」の創刊についてのトークセッションが開始となった。

 

3.メディア「ひとりとひとり」は、こんなことを考えていた!

笑いたくさんのトークセッション型式であったのだが、そのテキスト再現が大変なので会話形式で以下。


・結局、ひとは一人では生きていけない。他人に迷惑をかけずに死んでいくことは絶対に不可能(すんごく何度も「絶対にムリ」と力説していた)
・だから、お一人様とお一人様がしっかりつながってやっていこう。その生き方、死に方。壮大な。決して「終活」に終始した内容ではない
・シングル活動も重要なので「一人飯」もテーマにある。一人でなにかをやることは自由なこと。地方では持ちにくい。(女性が)一人でなにかをやっていると(食事だけでも)地方では心配される。変な人扱いも
・バックグラウンドは、自身の経験と思い。パートナーとの死別を考えた際、茶飲み友達、お一人様の自分とつながる仲間が欲しいと思った
・一人は悪いことではない、ポジティブに捉えたい、それをフリーマガジン上で表現していきたい
・身内に「かっこいい」と思える最期を迎えた人がいた。その影響
・世の中に問題意識をもってもらい、セミナー活動やイベント、事業の実施、勉強会と資格を創設する
・お一人様でもしっかり生きていける人を日本に増やしていきたい
 

引用元:ひとりとひとり.com「ひとりとひとり」創刊記念パーティーにご参加ありがとうございました。

 

トークセッションが終わり、続いて一人芝居の寸劇。内容は「立ちんぼうばあさん」。これも「お一人様」となった生きざまに思いを馳せるものであった。

 

4. 直撃インタビューでわかった「ひとりとひとり」の正体

そして立食形式の懇親会。遠慮がちにパーティフードに群がる出席者に交じり、筆者もお皿にお寿司とオードブルをてんこ盛りにして、編集長に突撃すべく質問内容を整理。忙しそうに会場を泳ぎ回っているひろかわ氏をつけ回し、隙を見て直撃インタビューを申し込む。

- この度は創刊おめでとうございます -
「ありがとうございます!」

 

- 今回の「ひとりとひとり」のお一人様は、何歳くらいの年齢層を想定していらっしゃいますか? -
「読者層としては、30代から60代くらいまでを想定しています。そして、その方たちの親の世代までも網羅したいと思っています。けれど、60~80代にまでなると、フリーマガジンを読む機会がそう無いと思うんです。その子供の世代から少しずつ啓蒙していきたいと思いますね。」

 

- 創刊号の特集記事は、いわゆる「終活」に関わるものが多いですよね。葬儀とか。「終活」以外のお一人様ビジネスの紹介や展開は考えていらっしゃるんでしょうか? -
「もちろん考えています。ただ、今の段階ではやはり「終活」みたいな内容でいくことがセンセーショナルなので、皆に伝わりやすいということがあります。今は「終活」面(の記事)に協力して下さる方が多いので、そういう内容になっています」

 

- お一人様焼肉やお一人様カラオケなど、若い世代向も対象とした「お一人様ビジネス」への(紙面上での)展開についてはどうでしょうか -
「はい。そういうところにもこれからどんどん取材をかけていきたいと思っています。某ステーキ店などの業態も、取材候補のなかに挙がっています」

 

- 個人や会社ではなく、一般社団法人にされたのはどういった理由からなんでしょうか  -
「将来、協会ビジネスも展開していきたいと考えているからです。「お一人様」の資格を創設して啓蒙活動をしていきたいと思っています」

 

- 写真撮らせてもらってもいいですか? -
「恥ずかしいからヤです」

 

奥ゆかしい編集長さんでした。

 

引用元:ひとりとひとり.com「ひとりとひとり」創刊記念パーティーにご参加ありがとうございました。

 

「終活」のみではなく、30代も含めた「お一人様」の楽しみ方も提案していくというその言葉、そして資格の創設までも想定しているその姿勢に、Xビジネスと同じ視点を垣間見ることができた新創刊パーティなのであった。ひろかわ編集長、今度ともよろしくお願い申し上げます。

あ、新創刊の特製ケーキ食べ忘れてた。。


(依藤 慎司)


ひとりで生きる人たちの【つながり】と【前向きに生きるための暮らしと終活】を応援するライフスタイル提案マガジン「ひとりとひとり」
http://hitori-to-hitori.com/

 

矢野経済研究所 関連マーケティングレポート:
「2018年版 シニア関連市場マーケティング年鑑」
https://www.yano.co.jp/market_reports/C59122000

「2017年版 フューネラルビジネスの実態と将来展望」
https://www.yano.co.jp/market_reports/C59113100