お布施 - 意味を調べるまでもなく語感からして、日本人ならお坊さんのアレを思い浮かべる言葉である。改めて定義を確認するなら、「読経や戒名を頂いた謝礼として、僧侶に対して金品を渡すこと」となる。もしくは、「ご本尊へお供えする」という意味も持つ。
コラムで採り上げるからには、今度は宗教×ビジネスのことか?と思われるかもしれないが、ちゃんとヲタ×ビジネスの話である。

 

  1. この業界の「お布施」はクリエイター支援、なのだが…
  2. Ofuseが世に出た2つの理由
  3. その企業、株式会社Ofuse
  4. Ofuse、「ザ・ビジョナリー」に出てます

 

1.この業界の「お布施」はクリエイター支援、なのだが…

ごく一部の存在を除いて、演劇を筆頭に大抵の表現者やクリエイターというのは、労力に対して金銭的に報われる度合いが低い。クリエイターが欲しいのは、お金と、何よりも創作の原動力となる、創作物に対する応援の声である。それと同時に「好きな作家さんを有形無形に応援したい、応援の声を届けたい」という熱い要望が、ファン側にも存在するのだ。このときに発生する、ファンからクリエイターへの金品の授受が、「業界用語」で「お布施」と呼ばれているのである。

この「お布施」は、実は既にサービスシステムが存在している。「pixiv(ピクシブ)」「fanbox」「Ci-en」等がそれである。これらは、クリエイターに対して金銭的な支援を送ることができる「クリエイター支援プラットフォーム」である。クラウドファンディングと類似しているが、継続的な支援を行うことができる点が異なっており、海外では「パトロンサービス」等の名称で開催されている。胴元(?)であるサービス提供者は、両者の仲立ちとしてプラットフォームを提供し手数料を徴収することで成り立っている。
クリエイターは自分の作品をサービスシステムに登録する。その作品を見たファンが、お気に入りのクリエイターに対してシステムを通じて金銭を提供するのである。そして同時に、ファンはクリエイターからの返信や新作発表によって交流をもつことができる、という流れになる。

クリエイター、ファン、サービス提供者ともメリットのある「みんな幸せ」ビジネスのはずなのであるが、実はこのビジネスモデルは「グレーゾーン」的な、とある問題を含む可能性があったのだ。

 

 

その問題を解決した新しいシステムが「Ofuse」なのである。

 

2.Ofuseが世に出た2つの理由

最初にむずかしい話から片付けてしまう。第一に、法的な問題をクリアする、という点があった。
サービスに登録される作品は、そのすべてがクリエイターの完全オリジナルとは限らない。コミケ会場の同人誌と同じように、二次創作物も多数存在している。それらの作品をクリエイター支援サービスに登録して、金銭的な支援を受ける。どういうことかもうおわかりだろう。他者が著作権を持つ作品の二次創作物で金銭的利益を受けるということは、著作権違反に問われるおそれが十分にあるのだ。
コミケの二次創作同人誌を例に出したが、これも本来は著作権違反に問われるおそれがある。それが社会現象レベルまでに存在している理由は、「著作権者側の黙認」でしかない。二次創作物の同人誌になることは、そのオリジナル作品の人気のバロメーターであり、広告宣伝にもなっているからである(同人誌作家のなかからプロ作家を見出すという面もある)。いずれにしろ、「著作権側の黙認」によるグレーゾーンであることで成立している関係なのである。
口悪くいえば、あからさまに金銭支援をあおるこの「クリエイター支援サービス」は、二次創作物を取り扱う際、法に抵触するという判断がいつ下されるかわからないのである。

二番目には、法的なものではないが、クリエイターの創作意欲にかかわる問題がある。支援者への返礼の必要性だ。支援してくれたファンへの返礼や、期待に応える新作の発表など、金銭的支援の返礼としての義務は当然つきまとう。金銭的支援を受けるからには当然だろうと思われるだろうが、クリエイターにとってはこれが結構重荷になっているようなのだ。

この二つの「問題」をクリアしたサービスが、「Ofuse」なのである。既存のクリエイター支援サービスのとの違いは、ひとことで言うと「感想の文字数に対して金銭を支払う」という点に尽きる。その仕組みを図式にすると以下のようになる。

 

 

特徴としては、

 

  • 支援として金額を支払うのは、クリエイターの(二次)創作物に対してではなく、クリエイターを応援するために入力する「文字数」に対してである
  • 支払った金額に応じて応援メッセージを(多く)送ることができる(文字ゼロでもよい)
  • クリエイターは支援に対して返信や創作の義務はない

 

ということになる。いわば「応援する権利を買う」このシステムにより、応援内容は二次創作物に対する支援であっても、法的な問題はなくなるのである。

 

画像は「Ofuse」プレスリリースより引用

 

サービス開始前の2017年に、このビジネスモデルについて東京都の書類審査を受けた際には、特に問題は指摘されなかったとのことである。(発想の転換というか、モノは言いようというか。。)
そして支援者への返信・返礼・納品などの義務がないことから、クリエイターもプレッシャーを受けることがないのだ。この点も、既存のクラウドファンディングとは異なっているのである。

 

3.その企業、株式会社Ofuse

まんまやん。。いや、この名は体を表しすぎている企業が「株式会社Ofuse」である。Ofuseのキャッチコピーは「ただ感動した、楽しかった、何か感じるものがあった、そんな気持ちを手紙に込めて送りたい。ついでにお金もねじ込みたい。そんなあなたに!(公式ツイートより)」である。そして事業内容・サービス概要について「Ofuseを通じてファンは『創作物に対してお金を払う』のではなく、その創作物を制作した個人へ感謝の気持ちを送るためにお金を払います」と同社のFAQで謳っている。繰り返しになるが、あくまで「創作物に対してではなく、ファンレターを送るために文字数を購入してもらう」というスタンスである。

 

画像は「Ofuse」Webサイトより引用

 

クリエイターに支援・応援のお金を、法的な問題をクリアして、追加で支払うという仕組みはそれまで存在していなかった。そして、ネット社会ではコンテンツが無料で消費されていくという時代の流れも否めない。そんななかで同社のこのプラットフォームの提供が、クリエイターとファンが主導でコンテンツ産業を築きあげていくことの一助になるであろう。
2018年3月末にβ版がリリースされたあと、同年9月現在、月間アクティブユーザは7,000人を超えているという。様々なジャンルのクリエイターがファンとの新しいコミュニケーションツールとして活用しているのだ。

ところで宗教法人と勘違いされなかったのだろうか。。

 

4.Ofuse、「ザ・ビジョナリー」に出てます

このクリエイター支援会社「株式会社Ofuse」は、ショーンK氏がナビゲートするテレビ番組「ザ・ビジョナリー ~異才の花押~」で紹介されている。放送日は9月11日火曜日、東京MXTVで19:58~20:27の時間帯の放送である。番組中の「Xビジネスコーナー」で矢野経済研究所の研究員がXビジネス的な視点から考察・紹介している様子を、ぜひ下記「Xビジネスコーナー」動画アーカイブリンクから視聴してもらいたい。

 

ザ・ビジョナリー~異才の花押~
http://the-visionary-project.com/ 

「Xビジネスコーナー」動画アーカイブ
https://xbusiness.jp/xbusiness/visionary

 

関連資料:

2017 クールジャパンマーケット/オタク市場の徹底研究
https://www.yano.co.jp/market_reports/C59113400

2017年版 国内クラウドファンディングの市場動向
https://www.yano.co.jp/market_reports/C59106300