本稿は、前稿「もはやプロとアマの境界線などない? -同人誌市場-(1)」の続編である。未読の方はまずそちらをご参照いただきたい。

 

  1. 同人誌もいろいろあるけれど、みんな好きなのはこれでしょ?(前稿)
  2. これが同人誌市場の市場規模と構造(前稿)
  3. 同人イベントのブランド -金額には出てこないイベントのポジショニングマップ-(本稿)
  4. その資料、「Xビジネスショートレポート」(本稿)

 

3.同人イベントのブランド-金額には出てこないイベントのポジショニングマップ-

ポジショニングとは、ターゲットとなるユーザーの(イメージの)なかに、商品や企業、サービスやブランドなどについての存在を築き、差別化されたイメージを植えつけることである。差別化された自社製品の価値をユーザーに認識してもらうことで、競合製品に対して優位に立つことを目的にしている。
ある商品が、その市場において競合に対してどのような位置付けにあるのかを、2つの軸線上に置いて視覚化したものがポジショニングマップとなる。これらの軸線を「価格」「品質」などではなく「魅力度」「温度」として、「ユーザーがどう思っているか」という「ひとの気持ち」を視覚として表現・分析するツールがあるのだ。

 

≪同人イベントのブランド比較 by「Xビジネスエンジン」≫

同人イベントのブランドを矢野経済研究所の解析手法(Xビジネスエンジン)を用いて分析したところ、以下のようになった。

 

 

世界最大級の同人誌即売会「コミックマーケット(コミケット)」は、意外にも魅力度(=メディアに左右されず自主的に反響しているユーザーの度合い)が他のイベントよりも低かった。だがさすがに熱量と温度(=情報の拡散度合い)は最も高く、いわゆる『同調的盛り上り』に位置する状態となっている。
一次創作のみを扱うイベント「コミティア」もコミックマーケット同様の熱量を有しているが、その性格上やはり特定のユーザーに限られているため、他のイベントと比較して温度は高くなく『冷めた魅力』に位置する結果となった。
その他、「COMIC1」は、規模ではコミックマーケットに劣るものの、熱量・温度・魅力度ともに高い『積極的支持』に位置する結果となった。ただし、このバブルチャートの表面からだけでは読み取りにくい要素として、いわゆるダミーサークル(実質的な活動実体が無いのにサークル参加(出展)を行うサークル。販売スペースやサークル通行証、荷物置き場の確保などが目的とされている)の存在が、毎イベントごとにネット上で議論を呼んでいる背景があることも注記しておきたい。

 

 

 

≪主要事業者の動向≫

コミケット:

1985年創業。東京ビッグサイトで開催されている同人誌即売会「コミックマーケット」(以下「コミケ」)の運営に必要な諸々の事務作業や実施会場確保の際の契約等を行っている。「コミケ」は世界最大規模の同人誌即売会で、毎年8月(「夏コミ」)と12月(冬コミ)の年2回、東京国際展示場(東京ビッグサイト)で3日間ずつ開催されている。2018年12月に開催したコミケで95回目となる。

コミケは1975年から開催されており、運営はボランティアスタッフで構成される「コミックマーケット準備会」が主催していた。しかし、イベント開催規模が大きくなるにつれ任意団体である「コミックマーケット準備会」では運営が困難になってきたことから、運営組織として同社を設立した経緯がある。個人情報取扱に関わる法人格が必要な場合などに同社が対応し、「コミックマーケット準備会」をサポートしている。その具体的な業務は、現在約3,000人から成る「コミックマーケット準備会」からサークル配置データの提供を受け、コミックマーケットカタログを製作するほか、会場と契約して場所を提供するといったことが主となっている。

 

虎の穴:

1994年6月、同人誌、商業誌を中心に取り扱うショップ「コミックとらのあな」を秋葉原にオープンしたことを契機に事業を開始した。開業当時は同人誌即売会に参加する以外には同人作家が作品を提供するマーケットが存在しなかったことから、そうした場の提供を行っていきたいとの想いで事業展開をスタートさせ今日に至る。

秋葉原にオープンして以降順調に店舗数を増やし続けており、2018年6月時点で全国に27店舗を展開する。同店舗の特長としては、同人誌や商業誌のほか、アニメに関連する映像・音楽ソフト、及びアニメ関連書籍やグッズ等を幅広く取り扱っている。また、秋葉原の観光地化や商業施設の増加に伴い、秋葉原へ来るライトユーザー層や女性層が増えていることから、全年齢向け・女性向け同人誌の取り扱いも充実させている。

客層に関しては、20~40代を中心に幅広い年代に支持をされている。男女比は6:4程度であり、比率は大きく変わっていないが、女性客が増加傾向にあるとみている。店舗のつくりが男性向けとなっていることから男性比率が多いが、その反動か、ネット通販についてはやや女性の方が多いようである。
新品同人誌の流通形態は、同人サークルから同人誌を買い取り販売する「買切」と、サークルから同人誌を預かり、販売手数料を差し引いて売れた分をサークルに支払う「委託」の2パターンがある。「委託」の掛率は64~67%(税別)、「買切」の掛率は60%(税別)となっている。同社専売作品の販売部数が2,000部を超えるサークルには売上総合計の6%をキャッシュバック、1,000部超だと3%をキャッシュバックしている。併売時では1,000部を超えると3%のキャッシュバックを実施している。

実店舗のほかにもインターネット通販サイトの運営も行っている。主に男性向けの「とらのあな」、女性向けに特化した「Toranoana Princess Side」、ダウンロード販売の「とらのあなダウンロードストア(TDS)」を運営している。また、スマートフォン対応サイトも運営する。

 

4. その資料、「Xビジネスショートレポート」

実際に各種の同人誌イベントに足を運んでいるファンの方々は、上記のバブルチャートを見てどう思ったであろうか。分析の元ネタは、矢野経済研究所が保有する産業ビッグデータと独自に開発したリサーチAIである。きっとツボに入る分析内容があったことと思う。

Xビジネス開発室では、「Xビジネスショートレポート」として、同人誌市場の分析レポートを新体裁で掲載・販売している。ショートといっても体裁はA4サイズで30ページにわたるものであり、今回掲載した内容も、さらに深く掘り下げて解説している。

 

XビジネスショートレポートVol.2 同人誌市場
https://xbusiness.jp/xbusiness/shortreport-vol2

 

価格は10,800円、エロ同人誌が10冊以上買えてしまうが、企業のマーケティング担当者はもちろん、大学の先生やゼミの学生、メーカーや販売店、同人サークルの皆さんなどに、肌感覚でご納得いただける内容になっていると自負している。もちろん購入前の内容問い合わせも随時受け付けているので、ぜひリンク先をご参照頂きたい。

(依藤 慎司)

 

関連資料:

XビジネスショートレポートVol.2 同人誌市場
https://xbusiness.jp/xbusiness/shortreport-vol2

同人誌市場の実態と展望
https://xbusiness.jp/fanzine/marketing

 

関連リンク:

コミックマーケット公式サイト
https://www.comiket.co.jp/

まんだらけ
https://www.mandarake.co.jp/

コミックとらのあな
https://www.toranoana.jp/

K-BOOKS
http://www.k-books.co.jp/

DLsite.com
https://www.dlsite.com/

FANZA同人
https://www.dmm.co.jp/dc/doujin/