呼べばやってくるTAXI WHISTLE(タクシーホイッスル)、忍者タクシー、ドローンタクシー、果ては心霊タクシー。。

…怪しい、怪しすぎる。

これらは遊園地のアトラクションではない。事業者免許を持つれっきとしたタクシー会社の、事業内容の一部である。当コラムで様々な事業を散々斬ってきたXビジネスであるが、おそらくここ以上に怪しい会社はないであろうと断言したい(今のところ)。

  1. タクシー業界の市場動向 -いきなりだが最大の課題はこれ-
  2. タートルタクシー、タクシーホイッスル、SP風タクシー。。
  3. 忍者でタクシー、タクシー流鏑馬、心霊スポット巡礼ツアー、ドローンタクシー。。(次稿)
  4. その会、三和交通(次稿)
  5. 三和交、「ザ・ビジョナリー」に出てます(次稿)

1.タクシー業界の市場動向 -いきなりだが最大の課題はこれ- 

タクシー業界の話題のトップを 暴走 疾走する、とある老舗のタクシー会社。タクシーは公共性の高いインフラのひとつであるが、業界は現在どうなっているのだろうか。Xビジネス的にその会社を斬る前に、タクシー業界を俯瞰してみることにする。

タクシー事業の現状(法人事業者データ)

国土交通省自動車局「タクシー事業の現状と目指す方向性について 平成28年」より引用

業績が好調であれば車両が増えるという自明の理の、指標となる車両数については、平成14年のタクシー業界の規制緩和(初乗り料金の設定や、異業種からの参入条件の緩和等)を契機に増加傾向にあった。しかし平成20年のリーマンショックの時期を境に、タクシー業界もご多分にもれず、いや他の業界以上に、景気の直撃を受けてすべての数値、業界自体が縮小していったのである。直後の平成21年に「タクシー適正化・活性化法」が施行された。これは簡単にいえば、車両台数を減らして経費を削減し、配車の稼働率の効率化を図るというものである。結果、日車営収(実働者一車両の一日あたりの運送収入)は増加している。だが、それ以外の輸送人員、車両数、そして運送収入とも、減少傾向が顕著である。

タクシー業界の最大の課題は、乗務員不足ということにつきる。 タクシーの乗務員は、一般的に低収入で長時間労働の傾向にあり、新卒者等の若年就業者が減少している。そしてタクシー業界は求人広告の常連であり、タクシー事業者のなかには、保有車両数に見合った数の乗務員を確保できず、実働率の低下(=日車営収の低下)を余儀なくされる例もみられる。

タクシー運転者と全産業労働者の年間所得等の推移(男性)

国土交通省自動車局「タクシー事業の現状と目指す方向性について 平成28年」より引用

ありていに言って、タクシー運転者の年間所得は全産業平均の約半分であるが、逆に労働時間は全産業平均よりも長いのである。長時間座りっぱなしの勤務で、収入は歩合制で景気に左右されやすい。カタログスペック的に待遇を他業種と比較した場合、タクシー業界の乗務員不足は慢性的な状況なのである。

2.タートルタクシー、タクシーホイッスル、SP風タクシー。。

タートルタクシーに、タクシーホイッスル、SP風タクシー。流鏑馬タクシーに、ドローンタクシー。果ては心霊タクシー。改めて書き並べ立てみたのだが。。

めまいがする。

改めて言うが、これらは場末の遊園地のアトラクションではなくて、れっきとしたタクシー事業者免許をもつ会社のサービスなのである。その 恐怖の 内容を改めて見てみると。。

タートルタクシー

Xビジネス度:★☆☆☆☆

目的地に早く着きたいと思う人はいても、「遅く着きたい」と思う人はあまりいないだろう。タクシーの利用者も同様であると思われるが、「タートルタクシー」の背景として、利用者調査で76パーセントの人が「ゆっくり運転してほしいと思ったことがある」とのことであったという。そして逆転の発想で「いつもよりゆっくり運転する」ことがサービスとなった。タクシーの助手席裏に設置してある「ゆっくりボタン」を押すと、運転手は「いつもよりゆっくり」運転するのである。

…地味だ。

だが、このサービスは利用者に好評であり、さらに2014年のグッドデザイン賞の特別賞「未来づくりデザイン賞」を受賞しているのである。これは“来るべき社会の礎を築くデザイン”と認められたものに授与される賞となっている。また、低速走行をすることで、約2パーセントの燃費の改善もみられたとのことである。

画像は「 三和通タートルタクシー スペシャルサイト 」より引用

タクシーホイッスル

Xビジネス度:★★☆☆☆

簡単にいうと「これを吹けばタクシーがやってくる」という、犬笛のタクシー版である。ホイッスルといっても音はオマケで、タクシー会社まで届く大音響を発するわけではない。実際の仕様は、笛を吹くことで内臓の機能が働き、タクシーの配車を自動的に行うというものである。笛のほかに本体のスイッチを押すことで同一の機能となる。ようはAmazonの「バーチャルダッシュ」のタクシー版である。

図版はクラウドファンディングサイト「 Makuake 」より引用

スマホの配車アプリは珍しくなくなったが、「タクシーホイッスル」は、その配車アプリ上の操作を自動化するものである。初期設定は必要になるが、タクシーを呼ぶあれこれの手間が必要なくなることは明らかにメリットが存在する。スマホの操作が不得手な高齢者や子供、そして何より病気や事故などの緊急時に、ホイッスルを吹くだけでよいのである。
この「タクシーホイッスル」、じつは現行の製品・サービスではなく、現在クラウドファンディング上での企画となっている。だが11月上旬時点で既に支援目標金額を達成しており、2019年1月の出荷に向けて、現在、鋭意制作中の はず である。
ちなみに「タクシーホイッスル」の利用可能エリアは、横浜を中⼼に神奈川・東京・埼玉となっている。

SP風タクシー

Xビジネス度:★★★☆☆

タクシーは、その利便性に加えて、バスや電車に比べてちょっと贅沢感と高級感のある乗り物である。タクシー利用でステータスをさらに上げたいとき、ちょっとしたVIP感を演出したいとき。そんなどうでもいい優越感を演出したい際に最適なのが、このSP風タクシーである。サングラス、線の つながっていない イヤホン、100か国語を Google翻訳 で操る知性、 鉄砲装着という 不完全武装 のSPが乗務員として、うやうやしく、ものものしく黒塗りタクシーに乗ってやってくるのだ。

画像は「 三和交通SP風タクシー 」より引用

このSP風タクシーを利用するには、通常料金にプラス1,000円が必要になる。なお、あくまで「風」なので、 「弱い」 とのことである。


(この稿、三和交通への愛ゆえに続く)

(依藤 慎司)

関連資料:

2018年度版 位置情報/地図情報活用ビジネス市場
https://www.yano.co.jp/market_reports/C60100200

2018 シェアリングエコノミー市場の実態と展望 ~民泊/カーシェア/駐車場予約/クラウドソーシング・ファンディング~
https://www.yano.co.jp/market_reports/C60105000

2018年度版 商用車テレマティクス/コネクテッドカー市場予測
https://www.yano.co.jp/market_reports/C60109000

2019 サービス産業白書
https://www.yano.co.jp/market_reports/C60114700

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