東京交通短期大学。その名称からすると、交通に関する実学を学べそうな、女子大生がたくさんいそうな語感である。数多(あまた)ある大学・短期大学のなかで、短期で交通を学べる大学とは、どんな大学なのだろうか。本稿では鉄道業界の考察とともにその実態と展望について迫ってみたい。
1.交通インフラのなかでの鉄道の役割 (本稿)
2.鉄道市場の構造と市場規模(本稿)
3.鉄道事業者のXビジネスな事例(次稿)
4.その名前、「東京交通短期大学」(次稿)
5.「東京交通短期大学」が「Xビジネスフェス2020in 池袋」に降臨!(次稿)
1.交通インフラのなかでの鉄道の存在
世の中の交通インフラを見渡すと、航空機、船舶、バス、鉄道、果ては浅草の人力車までその種類は多岐にはわたる。そのなかで日本全国の陸上交通の骨子として、主要な位置を占めているもののひとつが鉄道である。
日本最初の鉄道は明治5年(1872年)に開業している。鉄道は国の運営によるものであり、鉄道の整備は明治政府の富国強兵政策の一環であった。(JR各社の前身である国鉄の正式名称は「日本国有鉄道」である。まったくの余談であるが、現在の東京ヤクルトスワローズは、1950年に「国鉄スワローズ」として設立されている)
国鉄の分割民営化のほか、帝都高速度交通営団(現在の営団地下鉄)の特殊会社化や、東京地下鉄(現在の東京メトロ)など、半官・半民の形態をとる鉄道事業者もある。そのほかにも日本全国に多数の私鉄が存在するが、いずれも社会的インフラ・各地域の交通手段として重要な役割を担っている。
(当然なのであるが)車両単体だけでは運行ができず、広範囲な線路の整備が必要となる。このため他の交通インフラと比較してその整備維持費は莫大なものとなる。このため特に地方では採算が採れなくなる路線・会社も多く存在しており、いわゆる第三セクター方式で運営されている鉄道事業者も多い。概念的には、
第一セクター:国または地方公共団体による運営
第二セクター:民間企業による運営
第三セクター:第一セクターと第二セクターとの共同出資法人による運営
と区分される。
鉄道事業は単なる交通インフラ・輸送手段を超えて、存在そのものに対して、撮り鉄、乗り鉄、鉄道模型に至るまで、いわゆるオタクレベルまでのファンが多いことも特徴である。また、全国の主要な鉄道各社は、ご存知のとおりプロ野球球団を所有することが多い。
2.鉄道市場の構造と市場規模
≪市場の定義・構造≫
上の数値を構成する対象となる事業者は日本全国のJR各社、私鉄、第三セクターとするが、全部はとても網羅できないので、本稿では「JRグループ」「関東私鉄」「東京地下鉄(東京メトロ)」「関西私鉄」「名古屋鉄道」「西日本鉄道」を中心に事例を論ずる。各社は鉄道事業のほか、百貨店や不動産、ホテル事業等を手掛けているが、ここでは旅客運輸のみとして除外している。
≪市場の規模・動向≫
国土交通省の「鉄道旅客数の推移」によると、全国の輸送人員の総数は、平成28年度(2016年度)では、JR各社合計で前年度比2.1パーセント増の9,371,891(千)人、民鉄合計で前年比1.5パーセント増の15,270,919(千)人となっている。また旅客運輸収入ではJR各社合計で前年度比0.8パーセント増の4,224,640,036(千)円、民鉄合計で前年比1.6パーセント増の2,442,411,766(千)円となっている。
日本の人口が減少傾向にあるなかで、これらの数値の前年比増は訪日外国人数の増加によって支えられている傾向がある。また都心や主要都市では再開発による通勤客の増加も背景にある。また、旅客運輸収入面でJRよりも民鉄で前年比の増加率が高くなっているが、民鉄各社で座席指定列車の導入によって旅客単価の引き上げが奏功している点がある。
このほか、いわゆるMaaS(マース:モビリティ・アズ・ア・サービスの略。鉄道のほか、バスやタクシー、カーライドシェア、シェアサイクルなどのあらゆる公共交通機関をITによって結びつけることで、人員輸送を効率的に行うシステム)への各社の参入によって、沿線の活性化につながったものと思われる。(この稿続く)
(依藤 慎司)
関連リンク:
学校法人 東京交通短期大学
http://toko.hosho.ac.jp/
Xビジネスフェス2020 in 池袋
https://www.yano.co.jp/xbusiness/fes/