地下足袋。工事現場でニッカズボンのおっさん作業員がラーメン屋のように腕を組んで立っている姿を思い浮かべる。改めて字をよく見ると「地下の足ブクロ」である。その人気商品というと、丈夫か安いか早く走れるか(←必要ない)、どんな機能・性能が備わっているか気になるところではある。「ところで」でなく「ところでは」とビミョーな心理的距離があるのは、「そもそも地下足袋を履いたことがない」という人が大多数であろうからである。

だが、ヒットしている地下足袋があるという。ひょっとしたらワークマンの「〇〇女子」のような「地下足袋女子」なんていうのもあるのかもしれない。ヒットしたというその商品に、ひとまずXビジネス的に迫ってみたい。

1.そもそも地下足袋って何のために履くのだろう?
2.ビジネスモデルとしての地下足袋
3.地下足袋のヒットメーカー「力王」、ココがX(エックス)!

1.そもそも地下足袋って何のために履くのだろう?

すぐに思いつくのは、建設現場の高所作業などの作業であろう。そういった作業で足を滑らせたら、直球で怪我をする(滑り落ちた先にブロックの太いワイヤーとか想像したくない。。)。そのような事故を防ぐために、滑り止めの付いた作業靴が必要になる。それが地下足袋である。裏側の材質はゴムであり、足の親指のところが分かれている。そうすることで地面や作業場を足裏でグリップしやすいようにであり、これも滑り止めのためである。

この形状と材質が地下足袋の基本であり最終形であるとも思われるのだが、ヒットする地下足袋にはどのような工夫がなされているのだろうか。

2.ビジネスモデルとしての地下足袋

地下足袋メーカーのひとつである株式会社力王は、国内で最大のシェアを誇っている。地下足袋という、いわば伝統の製品のなかで、独自の足型成形によって人気のメーカーであるが、そのなかでもヒットしているのが「力王ファイター」である。何と戦っているのか問うてはいけない。、土踏まず部分の湾曲成形に同社のノウハウが集約されており、これによって地面との優れた接地感覚を実現しているのだ。

力王は、改めて言うまでもなく靴・履き物メーカーである。国内メーカであるが、その製造ラインはフィリピンとインドネシアにある。同社の軽量地下足袋、貼縫式足袋は同社の特許製品であり、まずここで他社製品と差別化を図っている。前述した「力王ファイター」は、軽量タイプで、土木作業から植木の伐採、塗装現場など幅広く使えることから、同社最大のヒット商品となっている。

3.地下足袋のヒットメーカー「力王」、ココがX(エックス)!

力王では、地下足袋というニッチな特殊製品(=X)の業界で、特許技術を生かし、評価に厳しい職人のお眼鏡にかなった製品を世に送り出している。そんななかでトップブランドの地位に位置する同社は、秀逸なXとしての存在であると言えるだろう。

また、建設・土木などの業界のなかで突き抜けた製品を世に出しているだけでなく、実は「お祭り業界」にも進出をしている点も見逃せない。祭りの神輿担ぎなどで使われる足袋がそうである。浅草の「三社祭」、岸和田の「だんじり祭」、京都の「山笠」、札幌の「YOSAKOIソーラン」など、各祭りに合わせて推奨している「祭り足袋シリーズ」の存在がある。特許技術と伝統とのコラボは、さらにXビジネスな存在価値を押し上げているのだ。

(依藤 慎司)


関連リンク:

動画「株式会社力王 『地下足袋のヒット製品を作るメーカー』」
株式会社力王
2021 靴・履物産業年鑑