なんのこっちゃと思われるタイトルであるが、事実は小説よりも奇なり、である。繰り返しになるが、お菓子屋さんが電車を走らせているのである。嘘は言わない。

 

  1. 本業は菓子製造業な鉄道会社
  2. まずい棒と、乗れば髪の毛が生えるかもしれない鉄道
  3. その企業、銚子電気鉄道株式会社
  4. 銚子電鉄、ザ・ビジョナリーに出てます

 

1.本業は菓子製造業な鉄道会社

「お菓子屋さんが電車走らせてます」と聞くと、駄菓子屋さんの店先で模型鉄道が走っていてそのまわりに子供たちが集まっているような、のんびりした光景が浮かぶことと思う。駄菓子菓子、そうではないのだ。鉄道車両は模型でなくホンモノの商用列車、走らせているのも駄菓子屋さんではなく、れっきとした鉄道会社なのである。

 

証拠

画像は東京商工リサーチ企業情報より引用

 

Xビジネスでは過去に「開き直れ!赤字の地方鉄道たち!」というコラムで、この鉄道会社のことを採り上げた。本業の鉄道事業が赤字なので、プロモーション(というか実利)の一環で「ぬれ煎餅」を販売したところ、一気に知名度が上がり業績も回復したという企業である。
この鉄道会社の路線は全長6.4キロメートル、全線乗ってわずか20分程度の、小さな小さなローカル路線である。鉄道会社を謳ってはいるが、東京商工リサーチの企業情報を検索すると、同社は

「銚子電気鉄道株式会社(千葉県銚子市):ビスケット類・干菓子製造業」

と表記されている。もちろん鉄道事業者免許を持っている企業なのであるが、営業種目の割合でいうと「食品事業:80% 鉄道事業:20%」と、圧倒的にお菓子を売りまくっている企業なのである。

 

2.まずい棒と、乗れば髪の毛が生えるかもしれない鉄道

同社では、鉄道利用を促すための様々なイロモノ企画を実施している。当初はゲームソフト会社のハドソンの「桃太郎電鉄」とのコラボなど、まだ鉄道会社らしいイベントが開催されていた。これは「桃鉄」のラッピング車両を走らせ、「桃鉄」には、銚子電鉄の10駅をいちばん遅くゴールした人が勝ちという「潮風のんびり銚子電鉄レース」が収録されているというものである。また「C列車で行こう」という音楽イベントでは、走行中の電車内でバンドが演奏するという風変わりな催しも開催された。
これらの企画が一定の成功を収めたことで銚子電鉄は段々と理性のタガを外し始めた。同社では以下のようなキワモノ企画が連発され、以降も根強い人気を維持し続けてくことになる。

 

・クリスマス、バレンタイン仕様ラッピング列車

(ラッピングどころか車内がこの有様。乗客は仕込みではなく熱い一般人である)

 

・走る電車『お化け屋敷』シリーズ

(今年で四回目。。)

 

・「銚子電鉄×DDTプロレスリング 電車プロレス」

(もはや鉄道会社の誇りはナシ)

画像は「銚子電鉄」Webサイトより引用

 

・「髪毛黒生(かみのけくろはえ)」駅の設置

(駅名ネーミングライツ販売に対し、ヘアケア商品のメソケアプラス社が応募。本当は笠上黒生(かさがみくろはえ)駅)

画像は「メソケア」Webサイトより引用

 

・ぬれ煎餅のほか「まずい棒」の販売

(味はウマいのだが経営がマズいという自虐ネタ。現在絶賛品薄中)

画像は「銚子電鉄オンラインショップ」Webサイトより引用

 

キワモノではあるのだが、これらのイベントはファン・支援者の心をしっかり掴んでいる。実際、2014年1月に脱線した車両の修繕費用として「クラウドファンディング」を呼びかけた際には、500万円を集めてもいる。

 

3. その企業、銚子電気鉄道株式会社

当然ながら「よし、鉄道会社だ!お菓子売るぞ!」とはならないはずである。やはりそこには事情があった。
2006年11月、銚子電鉄の赤字はいよいよどうしようもなくなっていた。車両の検査費用すら捻出できなくなっていたのである。その金額1000万円。大手鉄道会社にすれば一瞬の経費程度かもしれないが、同社には事業存続そのものの危機となる状況であったのだ。
もともとは第三セクターの鉄道として千葉県と銚子市から補助金を受けて事業を継続していたが、ここまで追い詰められた理由は、2006年8月に当時の前社長が業務中横領で逮捕されて銀行の信頼を失い融資を受けられなくなったことに端を発している。同時に、説得力ある事業計画を示せなかったことで、自治体からの補助金も打ち切り寸前となっていたのである。
そして同社のWebページに「車両検査費用1000の万円ために『ぬれせんべい』を買って下さい!」のコピーが現れることとなった。鉄道会社で煎餅を売る。この斬新というか開き直った施策は、ネットを中心に急速に拡散された。その結果、10枚入りで800円の「ぬれせんべい」が2週間で1万件の注文を受けることとなった。
このままぬれ煎餅を売り続けていけば、車両検査費用も赤字も解決 - と思いきや、今度は別の問題が生じた。ぬれ煎餅の受注が生産能力の限界を超えてしまったのである。かといって煎餅の生産ラインに投資して拡張することもできない。そんなことをしたら本当に煎餅屋になってしまう。そんな再度の危機に登場したのが、ネットの口コミを中心に誕生した「銚子電鉄サポーターズ」である。この市民団体の結成により、2007年同社は新たに970万円の資金調達を成し遂げたのである。

そして2018年現在、銚子電鉄は2017年度に鉄道事業で1億円の赤字を出しつつ、「ぬれ煎餅」だけで5000万円の利益を生み出している。そこに今年2018年8月発売の「まずい棒」の大ヒットが加わり、同社の業績は黒字化していくことであろう。たぶん。

 

4.銚子電鉄、ザ・ビジョナリーに出てます

この自虐的なまでの「お菓子な鉄道ビジネス」について、テレビ番組「ザ・ビジョナリー ~異才の花押~」で紹介している。放送日は9月4日火曜日であり、東京MXTVで19:58~20:27の時間帯である。番組中の「Xビジネスコーナー」で、Xビジネス的な視点から考察・紹介しているので、ぜひ本稿と合わせて視聴してもらいたい。

ザ・ビジョナリー~異才の花押~
http://the-visionary-project.com/ 

「Xビジネスコーナー」動画アーカイブ
https://xbusiness.jp/xbusiness/visionary

 

関連資料:

2018年版 インバウンド関連マーケットの動向と企業戦略
https://www.yano.co.jp/market_reports/C59125000

2017 クールジャパンマーケット/オタク市場の徹底研究
https://www.yano.co.jp/market_reports/C59113400